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ミネソタの自然と気候

  ミネソタは中西部の一州であり、カナダと国境を接している。中西部は北国なので、北国特有の自然があり、ミネソタにはミネソタの自然がある。インディアナ州などのように、行けども行けども平らなではないが、山らしい山がなく、なだらかな丘陵地帯で、地形は大体が平らなのである。湖の数は15,291。フィンランドの18万湖には遠く及ばないが、まさに森と湖の州である。ミネソタの自動車のナンバー・プレートには『10,000 Lakes』とニックネームが印刷されている。他にゴーファー・ステートとも呼ばれている。ゴーファーとは地ねずみの一種でミネソタ大学のマスコットにもなっている。

  中西部はフランスの植民地だった関係から、州の標語がフランス語で ”L'Etoile du Nord"(Star of the North, 1861設定 ) と呼ばれることもある。州の花はレディーズ・スリッパーというピンクの花で、可憐で女性のスリッパーのような形をしている。野性のランの一種であるが、写真でしか見たことはなく、現物を見たことがない。州の鳥はルーンという水鳥である。真黒い小型の白鳥(黒鳥というべきか)のうような鳥で、黒い羽根に白い点々の模様がある美しい中型の水鳥である。今では北の方の湖に生息するだけの貴重な鳥になってしまって、私は実物を見ていない。街の飾り物やお土産品を扱う店に行くと、この鳥が静まり返った湖面に波紋を描いている絵や木製のディコイ等が売られている。

  だが、湖が実に多い。前にも述べたように、1万5千3百ヶ所近くある。しかも、日本のとは違って、大きな沼地のような形をしている。どうして、このような湖が出来たのだろうか。それは氷河と関係がある。1万5千年前のウィスコンシン氷期だ。この氷河期は地球にさまざまな変化をもたらした。聖書にあるノアの洪水なども地表を被っていた氷河が解け出し、大洪水になったためといわれている。その規模は想像を絶するほどで、洪水の高さは数百メートルにもなったという。ミネソタも氷河に覆われた。アメリカの原住民がこの氷河期にベーリング海峡を越えてシベリアからやって来たのは有名な話しだ。その一部が東に向かって日本にもやって来たらしい。アルプスやエベレストにある谷間の氷河ではない。地面をを埋め尽くす大氷河である。氷河の力はすざましい。氷河は大地を削り取り、氷河の重みで地面が沈む。氷河が去った後の窪地に水が溜まり、無数の湖となった。入ってくる川もなければ、出て行く川もない湖が沢山ある。地下で湖と湖がつながって、地下水となって流れているらしい。

  ミネソタの3M社にターターン・パークという従業員福祉施設があって、ゴルフ場、テニスコート、野球練習場などがある。ここの広大な敷地の中に小さな湖がある。湖といっても、大きな沼か池のようなものだ。この湖の水位が上がって、ゴルフ場の2ホールが水浸しになった。80年代の出来事だが、この水位が一向に下がらない。まさに、入る川もなければ、出て行く川もないのだ。ここから1キロほど北にレーク・エルモとういう湖があって、ここの水位も異常に上がっていたと言う。いろいろ検討したらしいのだが、どうもこのレーク・エルモの湖から地下でつながっているらしいとの推測がなされた。

  気候は大陸性の特徴と北国の特徴を兼ね備えている。スコットランドのように、1日のうちに四季が現れるほど変化はしないが、結構、日によって変化が激しい。春は雪が解ける4月頃から始まり、緑が段々濃くなる。木々には新芽が顔を出し、芝生はすでに緑の絨毯のように一面に広がっている。

  4月初めのある日曜日のことだった。夏のような暑さになって、気温がどんどん上昇する。テラスのあちらこちらのアパートから一斉にビキニ姿の女性達が飛び出してきて、広場の芝生の上で日光浴を始めたのである。北海道もそうだが、雪国では雪が解けるとその後から緑の絨毯のような芝生が現れる。雪解け時には雪と地面の間に隙間ができ、その間に冬型の芝が生えてくる。そんな芝生に寝そべっている女達は、学生の女房達だから、みんな若くてぴちぴちしている。冬の間陽焼けしていない白い肌に、色とりどりのビキニだ。目にも眩しい光景だが、出かける時は目のやりどころがない。もう、『春だな』と心が弾む。ところが、次の日、朝起きて驚いた。20センチほどの雪が積もっているではないか。冬に逆戻りである。昨日はビキニ姿だった女達も、今日はコートを着て、襟を立てて出かける。


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”遠い夏に想いを”- Click here(ヴィオさんの旅行ブログ) も一読ください。
ミネソタ大学留学のあと、パリ大学の夏期講座に妻が受講するためパリへ飛び、3ヶ月滞在したときの思い出を探してのブログ手記です。