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ステート・フェアの娯楽

  まず、垂直に落下するフリーファール。バンジー・ジャンプはまだ一般化していない時だから、高さが20メートルくらいでも、充分に恐怖を呼び起こす。回転メリーゴーランドのように、高速で回転する大型の乗り物。乗っている子供達や女性達のキャーキャーという悲鳴があたりに響く。高いところでクルクル回る空中ブランコのような乗りものがある。回転が最高潮になるとロープが遠心力で水平にピンと張って乗っている人たちが宙に浮く。物凄い悲鳴が周りに響き渡る。小さな子供向けには、インド象がいて、背中に子供たちを乗せてのしのしと歩く。これにはチャオも乗ってみたいと言うので、乗せてみることにした。客を乗せるのに、象は足を折り曲げてしゃがみ込み、背中の籠に数人の子供を乗せるとやおら立ち上がる。そのゆたっりとした動きに、何か巨大なものが動いているという感じがする。立ち上がると、「やー」と下からチャオに声を掛けてしまうほどだ。チャオはにこにこして、片手を挙げてVサイン送ってくる。象が歩くにつれてユサユサと揺れるので、他の子供たちとわいわいと歓声を上げている。
  敷地の中央には巨大な滑り台がある。幅が10メートル以上あり、高さがビルの3階近くある。25度くらいの傾斜だが、途中は沢山のこぶがあり、スリルを増すと同時にスピードを殺す仕掛けになっている。スロープは黄色に塗られているから、遠くからでも見える。これに挑戦することにした。
  この滑り台では料金を払うと、小さな矩形の麻袋で出来た座布団を貸してくれる。これに座って滑り降りるのだと言う。まさに橇の代用である。ママは恐いから嫌だと言うので、チャオと2人で傍の階段を歩いて登る。頂上からは眺めが実に見晴らしい。私は高所恐怖症だから、お尻がぞくぞくしてくる。チャオは緊張しているが、興奮もしている。チャオはまだ小さいので、一人で滑る訳に行かない。滑っている最中に転倒して、放り出されたら危険だ。そこで、小さな麻布に、チャオを前に座らせ、後ろから抱きかかえるようにして、布の両側につている取っ手をしかり握り、一気に滑り降りる。この時、正面を向いたままの態勢を維持するようにしなければならない。滑っている最中に、身体の向きが変わって、横向きやら、後ろ向きになるとひっくり返る危険性がある。結構、コントロールが必要なのだ。滑り降りると、一瞬、放心状態になりボーとなる。チャオも同じくぼんやりしている。それから、上を見上げて、「ここを降りて来たんだ」と、まるでナイヤガラの滝を降りて来たかのような感動がこみ上げてくる。
  ステート・フェアなのに、農作物や家畜の品評会場には行かず、もっぱら、遊園地気分を満喫した。サーカスが来ていたら、もっと楽しかっただろう。
  セントポールの冬のイベントといえば、「ウインター・カーニバル」がある。ウインター・カーニヴァルは札幌の雪祭りのように冬の戸外の催しものである。セントポール市が中心になって、コモ公園やライスパークなどで開催される。札幌の雪祭りと違って、どちらかと言うと、氷の彫像展という感じである。昔、札幌の雪祭りの雪象作りで活躍する自衛隊のベテランが、請われてセントポールまで雪象作りの指導に行ったらしい。多分、冬のセントポールでは雪が解けなくてさらさらしているから、雪象作りには苦労したのではないだろうか。そして、スケート競技もウインター・カーニバルのハイライトの一つだ。犬橇レースもあって賑やかである。1月の下旬から2月の上旬にかけて行われる。


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”遠い夏に想いを”- Click here(ヴィオさんの旅行ブログ) も一読ください。
ミネソタ大学留学のあと、パリ大学の夏期講座に妻が受講するためパリへ飛び、3ヶ月滞在したときの思い出を探してのブログ手記です。