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ステート・フェア

  8月の下旬、第4週目に、ステート・フェアが開催される。場所はテラスのすぐ隣のステート・フェア・グラウンドで、開催の2〜3日前になると、急に会場があわただしくなる。準備のために、器材が運び込まれ、売店に材料や商品が持ち込まれ、象などの動物までが入ってくる。
  我々のアパート2棟はステート・フェア・グラウンドに近い。『何が出来るか』とアンディーは考えた。なにせ期間中に100万人以上の来場者があるのだから。コモンウエルズ・テラスの運営委員会のメンバーだったアンディーは、委員会と相談の上、我々の駐車場をステート・フェアのビィジターに有料で貸すことにしたのだ。20台くらい入る駐車場に、我々の車が16台ばかり駐車してあった。それをテラスの他の駐車場に分散して移動しなければならない。テラスの各駐車場には訪問客用の車のスペースがある。ステート・フェアの開催期間中、朝から我々の車の移動で忙しくなる。朝9時頃から夕方の6時頃まで移動して、7時頃にはまた車を取りに行く。開催期間は5日間くらいだが、16家族の車を朝夕移動しなければならないから結構大変である。
  コモ通りの我々の駐車場入り口には、手書きで『駐車場あり』と書いたボール紙の看板をかかげた。駐車時間を計るのは大変だから、時間制でなく、回数制で1回駐車するごとに幾らと決めた。これらの駐車料金はテラスの収入として納められ、収納庫の補修に役立ててもらう、というアンディーの提案を16家族全員が賛成したのだ。ステート・フェア・グラウンドへはバスなどの交通の便がよくなく、車でなければ来れない所なので、この小さな私設駐車場は連日満員の盛況だった。
  ステート・フェアとはアメリカの各州で年1回催される農業畜産振興会の大会みたいなものである。家畜の品評会とか、農産物の品評会などが催されたのが始まりである。そこに人が集まるから、サーカスやら売店やらと段々出店が増えてくる。そして、一大フェアにまでなった。大掛かりな大会だが、不思議と映画になったことはなく、全体の様子は判らなかった。ミネソタのステート・フェアは100万人以上(2001年度は176万人)入場者がある。ミネソタでは、州に昇格した翌年の1859年に第一回フェアが開催されている。最初は毎年場所を変えて行われていたが、その後、州農業協会に現在の場所を市から提供されて、毎年この場所で開催されるようになった。その後、各種のアトラクションが追加され盛況になったが、やはり、畜産・農業が中心である。
  初日は混むので、2日目にノッコとチャオを伴って行って見た。農学部の敷地は試験農場を含め1マイル四方(1.6キロ四方)くらいある。ステート・フェアはその3分の1くらい使っている。この広大な土地に、年1回の利用のために建築物は壊さずそのまま保存している。ステート・フェア以外では、りんご市とかインデアンの大会などに使われているに過ぎない。さすがに、アメリカの土地は広いんだなあと感心してしまう。敷地内は舗装道路が碁盤の目のように作られている。その通路の左右に常設の売店があり、さらにその間に屋台が並ぶ。夏だから、氷をフラッペしたものにシロップをたらしたものが飛ぶように売れる。日本でならさしずめ『かき氷り』とでもいうところだろうか。


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”遠い夏に想いを”- Click here(ヴィオさんの旅行ブログ) も一読ください。
ミネソタ大学留学のあと、パリ大学の夏期講座に妻が受講するためパリへ飛び、3ヶ月滞在したときの思い出を探してのブログ手記です。