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ファイフィールドN1

  ジョンソンさんの上の階に、一時、インド人夫婦が住んでいたが、ある時、アパート中に異様な匂いがだだよってきて、住民がドタドタといっせいに出て来た。何事かと我々も飛び出したが、その匂いはよく嗅いでみるとカレーの匂いで日本人なら大して大騒ぎするほどではないのだが、アメリカ人にとってはカレーの匂いとか干物を焼いた匂いなどは我慢ができない。だから我々も日本から干物を送らないように手紙を書いた。この後、このインド人は出ていったが、何時出ていったかは知らない。
  我々が越してきて間もなく、隣の部屋にエーロン(聖書ではアーロン)とラモナといユダヤ系のアメリカ人が入居して来た。エーロンというといかにもユダヤ系の名前だ。がっちりした身体つきで、髭をたくわえ、メガネを掛けて、優しい顔付きをしていた。まだアンダーグラデュエイトの都市工学の学生だったが、タクシーの運転手のアルバイトをしていた。奥さんのラモナは美人であった。少し小太りであったが、笑うとなんとも可愛らしい愛嬌のある顔になった。もう少し細かったら、ヴィヴィアン・リーの姉のオリビア・デハビランド(チョット古いですね)に似ていたかもしれない。彼等に男の子がいてエイブといった。この子はラモナに似て可愛らしい子供だが、遺伝なのか足が悪く四六時中ギブスをしていた。時々、我が家に遊びに来たときには、チャオがこまめに面倒をみて何かと可愛がった。
  我々の斜め向いの棟には、テりーとうアンダーグラデュエイトのビジネス専攻の学生がいて、その奥さんのルースが気の強い女性ながら、明るくきびきびしている。ケヴンという4才になる金髪で痩せた男の子がいて、陽気な性格なのだが、少々無茶をやるのである。ルースはきちんとしていて、ケヴンの躾にもうるさい。ルースがケヴンに何かあげると、「ママ、有り難う、と言いなさい」と繰り返しやっている。
  テリーは高校出だが一度米軍に入り、除隊して大学の学費を国から支給して貰っている。米軍にいた頃、ギリシャに短期間だが駐留していたことがあり、米軍が地元で歓迎されていない事実を経験する。彼にはショックだったらしい。彼は、特に大男ではないが、がっちりと体格がよくて、金髪で、性格は無口で、頑張り屋である。試験の時期になると大学の図書館にこもって夜遅くまで勉強している。アメリカの学生はよく勉強するが、テリーのはすごい。昼間は民間会社の倉庫でアルバイトをしている。女房のルースはベビーシッターをして家計を助けている。結婚した大学生はみな猛烈に勉強するが、女房がまた働いてがんばるから、必然的に亭主の学生はもっとがんばらなくてはならない。ルースはまわりの学生の女房達が働きに出ている間、子供を預かっているのだ。4・5人の子供を、狭いワン・ベッドルームのアパートで預かるのだから大変だ。ケヴンはいつも鼻歌まじりで1人外で遊んでいる。チャオより2才くらい年下だが、チャオが学校から帰ってくるとケヴンとは遊び友達になる。
  ルース達の隣にハンクとキャサリンという夫婦が住んでいたが、彼等の子供のステファニーが何ともいえないほど可愛い。金髪で青い目を輝かせ、ケヴンやチャオと遊んでいる姿はこの辺に女の子がいないだけによく目立った。だが、次の年になって彼等は出ていった。ルースによると、奥さんと亭主のハンクがけんかして、夫婦仲が悪くなり、出ていったという。ステフィーが可哀相だが、離婚したのだろう。


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”遠い夏に想いを”- Click here(ヴィオさんの旅行ブログ) も一読ください。
ミネソタ大学留学のあと、パリ大学の夏期講座に妻が受講するためパリへ飛び、3ヶ月滞在したときの思い出を探してのブログ手記です。