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ツインシティの湖

  ここで、ミネソタの湖の様子について書いてみよう。ミネソタには1万以上の湖があると書いたが、ツインシティー(ミネアポリスとセントポールの両市が隣接しているので、双子の都市と呼ぶ。メジャーリーグのツインズの名称のように)にも大小の湖がある。ミネアポリスには市域内に22の湖があり、みな素晴らしい公園が付属している。市域内というのは、日本の都市のように、人が殆ど住まない地域まで含まない。ヨーロッパの城壁都市と考え方たが同じだ。日本の都市並みに周辺地域まで含めると、グレーター・ミネアポリスとなる。周辺地区を含めるとミネアポリス地域には80ケ所から100ケ所くらいは湖があることになる。セントポールも似たようなものだから、両都市ではその数が相当数にのぼる。但し、前にも言ったように、湖の形態が日本と異なるから、底が浅い沼と思った方がいい。ミネソタ州の面積の5%が水であるといえば、相当な地域を湖と川が占めていることが判ろうというものだ。日本でも稲作をやるから。収穫するまでは水面の占める割合は結構高いに違いない。
  ツインシティーの湖の中でも、人により好き嫌いは有ろうが、私達が気に入っていた湖はノコミスである。空港からそう遠くない場所にあり、この湖に加えて、ミネハハ・クリーク、ミネハハ・フォール、ハイワサ・レークなどがあり、全体でミネハハ・パークを形成している。夏には、中古車を購入していたので、3人でよくノコミスに来たものだ。コモンウエルズ・テラスからスネリング通りを真っ直ぐ空港の近くまで南に走り、西に曲ってフォード・パークウェイに入り、フォード・ブリッジでミシシッピーを渡る。どうゆう訳か、ツインシティーの地図に唯一名前の付いている橋である。橋を渡ると、そこはミネハハ・パークである。ミネハハ・クリークが公園の中を流れ、ハイワサ・レークとレーク・ノコミスを経由してミネハハ・フォールとなり、最後はミシシッピー川に注ぐ。
  ミネハハ・クリークは街の西の方から流れてきて公園に流れ込む。ほぼ25キロ西にミネトンカ湖という『ミネトンカの湖畔にて』というインデアン・ラブ・ソングで有名な湖がある。この地域で最大の湖である。フロートがついたセスナ機が水面に浮かんでいるほどだから結構大きな湖だ。ミネハハ・クリークはこのミネトンカ湖から延々と流れてきている。細い小川で、春さきには雪解け水を万々と湛え、真夏にも水が絶えることが無い、インデアンのクリークと呼ぶに相応しい流れだ。
  アメリカにロングフェローという詩人がいた。この人は国民的詩人といわれる人だが、彼の作品の中に『ハイワサの歌』(1855年作)という叙事詩風のものがある。インデアンの少年がカヌーを漕いで冒険しながらミネハハ・クリークを下って行く話しだ。アイヌの古い話しを読むような懐かしい感じがする。ところが、どうもロングフェローはここの場所に来ないで、メイン州でこの叙事詩を書いたらしい。詩人とは想像力が豊かな人を指すのだろう。公園のミネハハ・クリークの流れの中にハイワサがミネハハを抱えて川を渡っている像が立っている。このミネハハ・クリークも最後にはミネハハ・フォール(滝)となって、インデアンが「父なる川」とよぶミシシッピーに流れ込むのである。
  ノコミスに行く時には、フォード・ブリッジを渡ったら、28番通りを南に進んで、今はなくなった31アイスクリームの店に寄ってアイスクリームを食べるのが楽しみであった。当時、日本にはアイスクリームの専門店はなかった。札幌の雪印パーラーがあったが、メニューにはアイスクリーム以外のものもあった。31アイスクリームは、アメリカではバスキン&ロビンズと呼ばれているが、細長い店にアイスクリーム用の長いガラスケースが置いてある。店の壁は白いタイルが貼られ、白木のテーブルと椅子がおかれて、店員もシェフのような白いユニフォームをきている。いつもは、髪の黒い色白のイタリア人のような小柄な女性がきびきびと動き回り、声を掛けると、目を輝かせて返事をする。チャオはその日によって、ストロベリーだったり、チョコレートだったり、ミントだったりするが、ノッコの定番はペーカンナッツのフレーバーで、必ず、これを注文する。置いてあるアイスクリーンのフレーバーが時々変わるが、ペーカンだけはいつもある。
  当時、マクドナルドなどのハンバーガー店は東京に進出していたが、アイスクリーム店は無かった。この31アイスクリームを進出させたら絶対いいだろうと思った。帰国して暫くすると、新宿の三越に、小路に面して31アイスクリームの店ができた。ぺーカンもあったが、そのうちすっかり姿を消してしまった。やはり、このフレーバーは日本人の口には合わなかったのだろうか。
  31アイスクリームの前の坂道をノコミスに向かって下って行く。下の方にレーク・ノコミスが銀色に輝いて広がっている。右側にはハイワサ・レークが見える。小さな湖だが、人影がなく静かな湖だ。ノコミスを半周して反対側に廻ると、ノコミスのメイン・ビーチだ。


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”遠い夏に想いを”- Click here(ヴィオさんの旅行ブログ) も一読ください。
ミネソタ大学留学のあと、パリ大学の夏期講座に妻が受講するためパリへ飛び、3ヶ月滞在したときの思い出を探してのブログ手記です。