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初めての公園と湖

  9月の末に引っ越してきて、10月になった。晴天が続いているが、車が無いのでどこにも行けない。大学での講義はミネアポリス・キャンパスなので、セントポール・キャンパスからウェスト・バンクへは学バスを使う。ミネアポリス・キャンパスからミネアポリスの街が見える。市営バスの路線は判らないし、歩いて行くには相当距離があり覚悟して行かないと駄目だ。冬のある日、一度だけキャンパスからミネアポリスのダウンタウンの銀行まで歩いていったことがあるが、当時は若かったから行けたようなもので、今ではとても歩く気はしない。私は学バスで移動できるからいいのだが、ノッコは何処にも行けない。近所にも友達がいないし、チャオが学校に行っている間の短い時間では遠くには行けない。
  10月の上旬のある休日だった。
「この近くに公園を見つけたわよ。チャオと行ってみたの」
ノッコが明るい声で言う。
「どうやって見つけたの?」
「ぶらぶら歩いていると偶然公園があったの」
  そこで地図で確認してみた。市街地の地図はガソリンスタンドで、無料で入手できるが、これは大学で入学手続きの際にくれたものだ。その地図を広げてみた。歩いて15分くらいの所に、確かに小さな公園があり、『カレッジ・パーク』と書いてある。
「よし行って見よう」
  3人で歩いて行くことにした。コモ通りを下って行き、交差点まで来たらグローサリーの所を右に折れる。今度は左に曲がってレイモンド通りを上り、緑の木々の多い住宅街を抜けると、左手に細長い公園がある。北側は高台で南側に向かって斜面になっており、細長くなだらかなスキーのゲレンデのようだ。周囲には木が立ち並び、一面に緑の芝生が敷き詰められている。公園の頂上には小さな遊園地がある。ブランコやジャングルジムがあり、チャオと一緒にくるには最適である。緑が多く、雰囲気のよい住宅街で静かな場所なので、こんな所にこんな公園があるとは気がつかない。
  その次にノッコが地図を眺めていて、行く決心をしたのがコモ・パークであった。10月中旬の小春日和で、まさにインデアン・サマーとはこうゆう日のことを指すのかという温かい一日だった。紅葉は真っ盛りで、大学の樹木も黄色く色着いていた。日曜日だったから、ゆっくりと昼から出かけた。地図を見ると、コモ湖まで3.5キロほど歩かなくてはらない。私が子供の頃、遠足で札幌の時計台から円山公園まで歩いたが、丁度、小1里あり、50分くらいかかった記憶がある。ここも東に向かって小1里の距離だ。6才になったばかりのチャオに歩けるかどうか不安だった。
  家を出て、隣のステートフェア・グラウンドに入り、観覧席がある建物の前を通った。そこには『8月下旬から9月の上旬までステートフェア開催』ともう過ぎた告示の文字が掲げてある。この広大な地区も正確にはミネソタ大学の土地で、農学部のグラウンドの一部なのである。巨大な滑り台だの、屋台小屋だのがそのまま残っている。土地の有効利用を考えたら、もったいない話しだが、年に一度開催される州全体のフェアのために建造物を残してある。
  天気はますます良くなり、暑くなって来た。チャオは元気に歩いている。チャオは好奇心が強く熱心に観察する子供だ。ミネソタに来て、見るものも聞くものもみな初めてとなると、もう疲れを知らないというか、目を輝かせて溌剌としている。
  ここの場所には、10月の末になると、リンゴ市が開かれ、ミネソタ産のリンゴを買うことが出来る。日本のように画一的な種類だけでなく、こんなに種類があったのかと、北海道生まれの私でも昔を思い出すほど、沢山の種類のリンゴが形などに拘らず売っている。これが本当に美味しいのだ。


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”遠い夏に想いを”- Click here(ヴィオさんの旅行ブログ) も一読ください。
ミネソタ大学留学のあと、パリ大学の夏期講座に妻が受講するためパリへ飛び、3ヶ月滞在したときの思い出を探してのブログ手記です。