ふたつめの戒め
最近私には、ふたつめの戒めができました。 「療養日記」に書いたとおり、「突発性難聴」という病気にか
かり、難聴と、耳鳴り、聞こえる音が反響するという症状が残
っています。
だれかの立場に立ってものを考えるとき、私たちは、その人と同
じ状況でない場合、“想像”することしかできず、真に理解する
ことはできません。
かつて、娘がまだ赤ちゃんで、ベビーカーをひいていた頃、今ま
で何も不便を感じなかった私たちのこの社会が、同じようにベ
ビーカーをひいて歩いたり、車椅子を使っている人たちにとって、
こんなにも冷たく不便な社会だったということを初めて知りました。
ほんとうにその人を理解するには、まったく同じ状況に自分の身
を置くのが一番です。
私は、自分の娘に、そして、教え子たちに、伝えたいことが二つ
だけあります。
一つは、自分の道は自分で選んで自分で歩いていくこと。
もうひとつは、決して差別をする気持ちを持たないこと。
特に娘には、小さい頃から「もしあなたが 少しでもだれかを差
別するような気持ちを持ったのなら、私は一生あなたを許さない」
と言ってあります。
私は今回病気によって小さな“障害”を持つことになりました。
それは、世の中にたくさんいらっしゃる障害を持った人からみれ
ば、取るに足りないものです。もしかしたら“障害”なんて言える
ものでもないかもしれない。でもこの小さな“障害”を持ったことに
よって、少しでも障害に苦しむ人の立場に立つことができれば、
そして、そんな私を身近に持つことになる娘や、教え子たちに
“障害”について考える機会を持ってもらえることができたら。
私にとっても、彼らにとっても戒めになることができるかもしれない。