左翼小児病と正論小児病

 

 産経新聞の「産経抄」(9月11日)に載った面白い話がある。

 農水省記者クラブの記者会見場から「日の丸」を閉め出すの出さぬのというばかばかしい騒動があった。「朝日新聞の記者は日常の仕事場に国旗を持ち込むのはけしからん」というのである。産経抄は「日の丸の掲揚は当事者である記者クラブ内部の問題であって、うちうちの出来事であるから書くつもりはなかったが、社説にまで取り上げられ“社会問題”にされたから書いた」という。朝日新聞の記者の理屈では、毎年夏の高校野球甲子園大会の会場には期間中メインポールに日の丸がへんぽんと翻っていることを無視して、日の丸掲揚に反対するのでは筋が通らない。まず自社に抗議し甲子園の日の丸を引きずり下ろしてから反対しなければならず、その主張はまさに「小児病」であるというのである。

 

 「左翼小児病」は、ロシアの革命家レーニンの本にでてくる表現で、物事を観念的、公式的に考えてばかりいる連中をいうのである。過激なはね上がりを指す場合もあった。

 いつの時代にも、何でもかんでもすべてを教条的に受け取り、カチンコチンにしか物事を考えられない人達がいる。左翼小児病という言葉は死語化してしまったが、なんとまあ化石よりもさらに硬く硬直化した考え方をするものだ。

 私の周りをみて、似たような事に気が付いた。どんな問題にも現実を無視したいちゃもんをつけ一言文句をいわなければ収まらない、いや一言どころか際限なく文句を言い続ける人がいる。

 そういう「はね上がり症候群」は平和ニッポンならではの病気だと産経抄士はいうが、私はそれらの人達を「正論小児病」と名付けたい。

November    1999

 

 レーニン Lenin:1870〜1924、本姓ウリヤノフ、Uliyanov

 ヴォルガ河畔のシンビルスク(現在ウリヤノフスク市)に生まれた。

1918〜1920にヨーロッパで革命が高揚し、新しく生まれた諸国共産党の内部に極左的ゆきすぎを生じたとき、レーニンはこれを戒めて「共産主義における左翼小児病」(1920)を書いた。