エピネフリン添加キシロカインと高血圧患者 

 

 エピネフリン添加キシロカインの添付文書には高血圧患者に「禁忌」となっているが、実際はどう考えるかという質問に「禁忌」は不適切であると考える、という回答があった。

 エピネフリン含有キシロカインの添付文書には禁忌の項目の第6項に「高血圧、動脈硬化、心不全、甲状腺機能亢進症、糖尿病、血管痙攣等のある患者には禁忌(これらの症状が悪化するおそれがある)との記載がある。歯科用カートリッジ・エピネフリン添加(あるいはl-ノルエピネフリン添加)リドカイン製剤の添付文書にも禁忌症の第3項として同様の記載がある。なぜ歯科用製剤にも同じ記載があるのか、その根拠はどこにあるのか。

 この添付文書を薬事法に照らして検討すると、明らかに薬事法に違反していると判断できるので記載内容を訂正するべきであると私は考えている。以下にその根拠を述べる。

 歯科用キシロカインといっても、剤形の違いだけであって成分は同じである。文書の記載内容を変更するにはその根拠となるデータを添えて申請しなければならず、そのため既に認可をうけ市販製品であったキシロカインに添付していた文書を、製薬会社の経費節減のためのもっとも安易な方法として歯科用に転載して発売したにすぎない。したがって歯科用キシロカインカートリッジの添付文書には既に発売されている製剤の添付文書の禁忌のうち第1から第3項までを削除して、第4から第6項をくりあげて記載したのである。つまり第13項は歯科領域では適応がないと判断し削除したものと考えられる。

 ではなぜこのような添付文書が存在しているのだろうか。それは局所麻酔薬の基準最高用量との関連で考えれば理解できる。

 高血圧患者(高血圧症患者ではない)に禁忌とする根拠は、0.0125mg / mlエピネフリン含有2%キシロカインの基準最高用量25ml、あるいは0.01mg / mlエピネフリン含有0.5%キシロカインの基準最高用量 100ml(総エピネフリン投与量は最高1mgになる)を1回に投与したときを条件としていると考えるべきであろう。

 他方局方エピネフリン(ボスミンR)の添付書類では高血圧の患者には「慎重投与」とし「血管収縮作用により、急激な血圧上昇の起こるおそれがある」ことをその理由として挙げている。動脈硬化症(歯科用剤の文書では動脈硬化)の患者では「閉塞性血管障害の促進」、糖尿病の患者では「高血糖を招くおそれがある」ことを理由に原則禁忌としている。適応として気管支喘息、ショック時の補助治療、局所麻酔時の作用延長、手術時出血の予防と治療とあり、投与量が皮下、筋注0.21mg(増減)との指示がある。また、用法には「手術時出血:0.1%溶液として単独に、又は・・・」「局所麻酔剤添加:0.1%溶液として局所麻酔剤10ml12滴の割合に添加(増減)」とあり、局所麻酔剤へのエピネフリン添加を禁忌としていないし高血圧患者への使用も禁忌としていない。12滴添加とは、エピネフリン40万倍から20万〜10万倍希釈を意味する。

 しかし「慎重投与」の具体的投与法については記述がないし、「血管収縮による急激な血圧上昇」と歯科用剤の添付文書「これらの症状の悪化するおそれがある」とは、どう意味が異なるのか曖昧である。

 歯科用アンプル、カートリッジ0.0125mg / ml エピネフリン含有2%キシロカインについては「口腔外科領域の麻酔には35ml(増減)を使用する」としているが、この「35ml」は基準最高用量を意味したものではない。他方エピネフリン0.0125mg/ml添加2%キシロカインについては「表面麻酔・歯科領域麻酔を除き基準最高用量 25mlとする」としている。したがって、歯科領域に限った基準最高用量 の規定が記載されていないので、単純に歯科領域での1回使用の最大量を想定すると5mlあるいはそれ以上(25ml)を投与する可能性が考えられる。その場合エピネフリンの作用がいかなる結果を招くか。

 通常の歯科治療ではカートリッジ12本であるから、粘膜下投与のエピネフリン0.020.03mgは循環器系へ重大な影響を及ぼさない。しかし歯科における投与条件に関する文献その他の根拠も提示せず歯科における基準最高用量も規定されていないのであるから、想像を絶する大量を投与する慮外者が必ず現れてくることを予想しなければならない。エピネフリンによる何らかの事故が生じたとき、その責任問題裁定の根拠となる添付文書の記載はそれらの事態を想定したものでなければならず現在の添付文書の記載が、あながち根拠のないものと断定することはできない。

 では二つの矛盾する内容の添付文書の臨床使用上の拘束力をどう解釈するべきか。添付文書は法的拘束力のない重要な情報文書であるが「法」ではない。したがって添付文書の適応外の使用あるいは禁忌症への適応が直ちに刑法あるいは薬事法違反に問われることはないし、何らかの事故が生じたとしても特段の過失が証明されない限り刑事上での立件は困難であろう。

 「高血圧症合併患者(高血圧患者ではない)にエピネフリン添加キシロカインを使用して医療事故が発生した場合には、歯科医師に圧倒的不利な状況になる」という意見がある。しかし発生した医療事故とエピネフリン使用の違法性(故意あるいは重大なる過失)の存在が確定的に証明されない限りエピネフリン使用の是非は疑わしくても、刑事事件としては不明とされるであろう。

 ただ添付文書は民事上の損害賠償請求訴訟での判断資料として重要な価値をもつ。つまり医療事故がエピネフリンと重大な因果関係にあると認定されたとき、その使用上に重大な過失が存在したと裁判官が推定するための証拠となる文書である。エピネフリン使用自体はあくまでも違法ではないが、使用上の注意義務に重大な過失が被告にあったと推定して不法行為あるいは契約不履行の賠償を請求するのである。しかし民事訴訟では当事者はそれぞれ自分にとって有利な解釈をするであろうから混乱を招くであろう。

 薬事法には第五二、五三条に添付文書の記載事項についての規定があり、第五四条記載禁止事項では「・・・当該医薬品に関し虚偽もしくは誤解を招くおそれのある事項、・・・が記載されていてはならない」と規定している。そしてこれらの条項にはいずれも罰則規定がない。

 ところが既製製剤のエピネフリン含有リドカインあるいは既製製剤を希釈して使用する場合と、リドカイン溶液にエピネフリン(ボスミンR)を添加する自家製の局麻剤を使用する場合では、全く同質同量のエピネフリン適応でありながらその是非について、二つの添付文書の記載に違いがあるのは大いなる矛盾である。歯科用カートリッジ製剤の添付文書の記載内容は「誤解を招くおそれが大きい」ことから、薬事法第五四条に違反していると断ぜざるをえない。したがって臨床使用で局所麻酔薬の基準最高用量を大きく下回る投与量であればボスミンRの添付文書の記載が優先するものと考える。カートリッジ12本の使用は歯科医師の裁量の範囲内であり、民事判例にある「文書に記載された使用上の注意事項に従わなかったことにつき特段の合理的理由がない」というが如き判断は却下されるべきと考える。

 歯科用局所麻酔剤の添付文書については、使用量の条件を明記せずに「禁忌」とするのは不完全な文章であり、不適切な記載である。これは虚偽とはいえないが、誤解を招く恐れのある記載内容と断定できる。したがって添付文書の記載内容は改訂されるべきである。そして歯科用キシロカインカートリッジの添付文書には基準最高用量に相当する歯科における投与量を規定したうえ、エピネフリン使用の是非を記載するよう、要望するべきである。ただし歯科用カートリッジ製剤の添付文書のみの改訂は不合理であり、全ての局所麻酔剤の添付文書の改訂が必須である。同時に添付文書では動脈硬化、糖尿病に対しても禁忌となっているが、これらについても同時に改訂するべきである。

 付け加えるが、学生が試験問題の解答に「エピネフリン添加キシロカインの高血圧患者への使用は禁忌ではない」とすれば、現時点では落第するであろう。

おわり      AD  2000

 

追記

 最近YAHOO JAPANの掲示板で興味深い討論を見つけた。互いの論点の根拠が一面的であるため討議者双方の論点がかみ合わず最後まで合意点に達しなかった。しかし学会での討論とは違い、不明な問題点についてとことん議論する事は有意義であり面白い。

 この討論参加者たちの意見から、今後この問題について補足修正するべき問題点も示唆されていて大変参考になった。現時点で明確に理解するべき点は以下の事項であろうと考える。 

  1 高血圧と高血圧症の定義

  2 WHO の高血圧診断基準の目的

  3 高血圧患者へのエピネフリン使用の違法性 

  4 添付文書の法的拘束力

  5 患者管理のためのモニタ指針

 

 1 YAHOO JAPAN 最初の意見

 WHOの高血圧認定の新基準とエピネフリン添加局麻剤について

 「WHOの高血圧症に対しての基準が大幅に見直されました。従来は収縮期血圧160mmHg拡張期血圧95mmHgであったのが、新基準では収縮期血圧140mmHg拡張期血圧90mmHgとなります。これでは自分も高血圧症となってしまう先生方も大勢おられることと思います。実際、私もその一人です。従来の基準ですと我が国で高血圧症と認定されるのは2000万人程度でしたが、新基準では3000万人を超えるものと推定されています。ところで、高血圧症である患者さんに麻酔をされる場合には、先生方はエピネフリン無添加のものをご使用になるとかされていたと思いますが、新基準により高血圧症の適応数が増加しますので、これらの新.高血圧患者の歯科治療において従来のようなエピネフリン添加リドカインなどを使用し、医療事故が発生すれば過失があったことになります。先生方、ご用心を!」

 コメント:この意見から察するに、高血圧症と高血圧、さらにWHOの高血圧診断基準の目的について見解に誤りがあるとおもわれる。つまりこの基準によって歯科治療の患者管理上の注意義務が規定されると断定している点である。

 

 2 高血圧の基準

 一定の基準で正常血圧と高血圧を区別することは不可能である。一応WHOの基準に従って区別することが多い。しかし治療上臨床的には家族歴、合併症、血管合併症の危険因子を考慮し、140/90mmHgであっても高血圧として治療を行うのが内科医としての従来からの常識である。

 3 WHOの血圧基準

 血圧は測定時の条件によってかなりの差がでる。血圧は連続的な変化を示す量的概念で、これを一つの線によって高血圧と正常血圧に分けることは問題の扱い方が間違っている。1978年のWHO専門委員会の高血圧の血圧基準は正常140/90以下、境界域高血圧141/91159/94、高血圧160/95以上mmHgである。この血圧値は少なくとも2回、時をかえ測定した3回以上の随時血圧(casual blood pressure)による。

 この高血圧の基準は見直しによって新基準では140以上/90mmHg以上となり、130139/8589を正常高値血圧とし臨床医はその対応の変更を迫られているのが現状である。しかし、この見直しの理由は生活習慣病(臓器障害および合併症)の管理予防の観点からの提案である。つまり将来心血管系合併症を発生する危険度などから臨床上必要な基準なのである。WHOでは血圧のレベルを高血圧症の病期とは区別して、ステージstageではなくグレードgradeという用語を用いて分類しているように、血圧値は高血圧症の進行状態や重症度を示すものではない。したがって今まで境界域にあった人が、いきなり高血圧症患者になると考えるべきものではなく、WHOの基準は将来予想される合併症の予防を目的とした血圧のコントロール、すなわち内科医のための高血圧治療指針なのである。 添付文書でとりあげている高血圧の基準は、WHOの基準の変更にともなって直ちに左右されると考えるのは根拠に乏しく歯科治療における患者管理上にも大きな変化はないと考えるべきであろう。

 

 4 WHO/ISHのガイドライン(1999年度版)

 今回のガイドラインの示している内容は「高血圧診療に携わるすべての医師が知っておくべき現代の常識を明示している診療テキスト」である。その問題点は

1 高齢者の高血圧は治療するべきか否か

2 血圧は下げれば下げるほど予後は良いのか

3 Ca拮抗薬は心臓に対して有害であるのか

4 降圧薬の第一選択は今までの方針で良いのか  

である。WHOは現在までに得られた資料を元に明瞭な回答を与えている。

 このガイドラインを歯科治療におけるエピネフリン使用の是非にいきなり当てはめるのでは、大いなる飛躍というよりも誤謬と云わざるをえない。ましてや歯科治療における高血圧の定義にはならないと考えるべきである。

 

 5 添付文書にいう高血圧とは

 「WHOの診断基準による高血圧をもって高血圧とする」という規定は存在しないし、添付文書では「高血圧症」は対象としていない。食事療法、運動療法、薬物療法などにより血圧が良くコントロールされている(血圧135/80mmHg)高血圧症の患者でも、エピネフリン添加リドカインの投与は禁忌と考えるのであろうか。

 では何を高血圧とするのか。従来、高血圧に伴う明らかな自覚的他覚的合併症を治療の対象としてきた高血圧患者を慣習的に指していると考えるべきであろう。したがって諸々の精神的肉体的侵襲刺激によって容易に血圧の変動をきたしやすい病態である。いわゆる境界域高血圧が大きな血圧変動をきたす危険があるとはいえない。むしろ自律神経系の不安定な患者では血圧の変動を来たしやすい。

 したがって今まで安全と考えられてきた境界域血圧の患者がWHOの診断基準の変更により、血圧変動が起こり易くなるなどということは、全く根拠のない主張である。

 また添付文書では禁忌の項目に「高血圧、動脈硬化、心不全・・・」とあるように、心不全以外は高血圧症であってもエピネフリン使用禁忌としているのでもない。すなわち狭心症や心筋梗塞(必ずしも高血圧の直接の結果とはいいがたいが)を合併している患者であっても正常血圧であれば、高血圧症の病期に関係なくエピネフリン使用禁忌としていない。

 

 6 高血圧患者と歯科治療・エピネフリン、フェリプレシン

 測定した血圧が140/90mmHg200/100mmHgである患者は、両者ともWHO のいう高血圧患者である。しかも長年の高血圧症病歴をもつ患者では重要臓器の血管系病変が進行していることを考慮しなければならず、この両者にカートリッジ1本の注射を行った結果、血圧の変動は同じだろうか。高度の高血圧患者でも血圧の変化に違いはないのだろうか。

 添付文書には「高血圧患者へのフェリプレシン使用は安全である」との記載はないが、フェリプレシの使用は必ずしも安全とは云えず、さらに麻酔注射使用の有無に関わらず血圧は変動するので、エピネフリン使用時と同様患者管理は重要である。歯科治療における循環動態の変動をきたす最も大きな要因は何か。エピネフリンではないことに気付くべきである。

 

 7 添付文書の法的位置付け

 薬事法では第五二、五三、五四条に添付文書の記載事項および記載禁止事項についての規定がある。これらの条項には罰則規定がない。したがって違反しても「違法行為」とはならず、そのため製薬会社は添付文書の改訂を積極的に実施しないものとうかがえる。臨床使用にあたっても記載事項に従わずとも「違法」とはならない。ただし民事訴訟での証拠・重要な参考文書として扱われる。

 

 8 患者管理のためのモニタ指針

 日本麻酔学会は「安全な麻酔のためのモニター指針」(1993421日付)を勧告した。これは全身麻酔、硬膜外麻酔および脊椎麻酔を行う時に適応されるものであるが、その基本理念は歯科臨床における患者管理にも適応されるべきものであり、その要点は以下である。

「歯科治療中における不測の事態の発生を防ぐためには、日々の臨床において厳しい研鑽を積み上げることは勿論のこと、現代医療の水準に見合ったモニター導入による早期発見もまた重要である」

 

 

 YAHOO JAPANでの論点

  一件目                                                real_estate_tokyo (42/男性/東京都)  

* WHOの高血圧認定の新基準とエピネフリン添加局麻剤について 

   WHOの高血圧症に対しての基準が大幅に見直されました。従来は収縮期血圧160mmHg拡張期血圧95mmHgであったのが、新基準では収縮期血圧140mmHg拡張期血圧90mmHgとなります。これでは自分も高血圧症となってしまう先生方も大勢おられることと思います。実際、私もその一人です。従来の基準ですと我が国で高血圧症と認定されるのは2000万人程度でしたが、新基準では3000万人を超えるものと推定されています。

  ところで、高血圧症である患者さんに麻酔をされる場合には、先生方はエピネフリン 無添加のものをご使用になるとかされていたと思いますが、新基準により高血圧症の適応数が増加しますので、これらの新.高血圧患者の歯科治療において従来のような エピネフリン添加リドカインなどを使用し、医療事故が発生すれば過失があったことになります。先生方、ご用心を!

 

 コメント1WHO の新基準は高血圧症認定のためのものではないし、そのために高血圧症患者が増大するのでもない。

 コメント2:「医療事故」とは具体的に何をさしているのか、エピネフリンの直接作用によるものでなければ問題外である。歯科治療に伴う事故の大きな誘因は心理的緊張であり、次いで治療にともなう痛みであろう。局所麻酔注射を行わなくても合併症は発生している。さらに云えば高血圧症患者、心疾患患者へのエピネフリン使用は添付文書でも禁忌とはなっていない。

 コメント3:高血圧とともに動脈硬化、糖尿病もエピネフリン使用禁忌であるが、あまり関心がないように思われる。

 

                3件目                            real_estate_tokyo (42/男性/東京都)

   * 歯科用局所麻酔剤として添加される8万分の1エピネフリンの副次的作用については金子先生や一戸先生等の論文でカ−トリッジ1本程度なら血圧、心拍数、RPPの変化はないとしていますし、ここ数年、阪大が歯科麻酔学会で連続して報告されているデ−タなどをみても問題がないと言っても良いかと思います。しかし阪大の発表ではカ−トリッジ1本分の浸潤麻酔は循環器疾患患者に対して臨床上循環動態を変化させることなく使用出来ると言っている一方で、内服薬との相互作用を生じさせる可能性を示唆しています。(歯科麻酔学会での口演)また、使用量の問題もあります。私の所では1%リドカインに30万分の1程度で使用することもあります。これで十分有用です。

   しかし歯科医の側で安全と考えていてもWHOが基準を示した以上、万一事故が起これば法律家はそこを衝くと思います。また、そうでなくては法律家ではありません。(私は法学部出身の歯科医です)それ故、一般開業医等ではほとんど行われていないEKG,パルスオキシメ−タ−等の監視モニタ−等の導入、救急蘇生用医薬品、酸素等の常備も考えるべきではないかと思います。

 

 コメント1:カートリッジ1本程度というのは、健康成人を対象とした全身麻酔下で得られたデータであり、重度の高血圧つまり収縮期血圧200以上拡張期100mmHg以上の患者でも血圧の変化はないという研究報告はない。しかも意識下の歯科治療では心理的影響が大きく生理食塩液の注射でも、あるいは注射をしなくても血圧の変動は起こる事を見落としてはならない。

 コメント2WHO の示した基準の意味、目的を正しく理解していないうえ、二つの添付文書(ボスミンRとキシロカインR)の矛盾に気付かずに意見を述べている。つまり自家製エピネフリン溶液と既製の製剤ではその適応に違いがあるとする添付文書の矛盾に気付いていない。したがって歯科用カートリッジの添付文書の法的効力の根拠は極めて薄弱といえる。法律家はその矛盾点を克服することができるか。

 コメント3:エピネフリンの使用の有無に関わらず患者のモニタは、歯科医院においても当然の処置であり、これについては議論の余地はない。

 コメント4:  モニタ機器は多ければ多いほど良いのではなく、また全ての患者に適応があるのではない。種々のモニタ機器、薬品を常備してもその適応をマスターしなければ活用できない。

 コメント5:モニタの導入と法学部出身は無関係。

 

                5件目                                                                            yuuki_ya_konkon

  *「たとえ高血圧の患者さんであろうと,WHOの基準以内であればほぼ問題なし」

   全くその通りだと思いますが,当然慎重に・・・

   >「血圧の変動は15分以内にほとんど起こりきるので,15分のモニタリングで問題がなければ治療を開始すればいい」

   これも異論がないところです。

   質問:15分後,血圧も問題なし,ただし麻酔の奏功が悪い,そういったときには麻酔薬の追加をどの程度までできるか? やはり総量をWHOの基準以内に抑えるべきだと思うが?

   この質問に対して「15分を過ぎれば結果的に基準の総量を超えても大丈夫との意見。WHOの基準は一回で,,,なのか? 

   約一日の総量なのか? 例えば午前中に基準ぎりぎりまで使用した後,午後の最後の時間(一日二度来院)にはどの程度まで使用できるか?

    realさんのご意見をお聞かせ下さい。

 

 コメント1WHOのガイドラインは内科医のための治療指針であり、「その基準以内」とは何を意味しているのか全く理解できない。

 コメント2:「15分のモニタリングで問題がなければ・・・」15分過ぎてもエピネフリンに関係なく血圧の変動は大きく起こることを見逃してはならない。

 

                7件目                                            real_estate_tokyo (42/男性/東京都)

如何に先生に知識や技術があろうが、法的には違法なのです。従って、このような薬品をあえて使用して医療事故が発生すれば、その使用は歯科医師としての裁量権の範囲内であることを証明し、かつ適切であることを証明しなければなりません。医事紛争では不法行為により歯科医師を訴える場合と債務不履行で訴える場合がありますが、前者では挙証責任が原告にあり、後者では被告にあります。通常、患者は有利な後者で訴訟をおこしますので、歯科医師は過失責任のないことを自ら証明しなければなりません。自ら調整した30万分の1エピネフリン添加1%リドカインを使用して事故がおき、その使用が争点になれば市販薬でないだけに尚更やっかいなことになるかもしれません。これが有用かどうかは関係ありません

 

 コメント1:医療事故が全てエピネフリンによるものとしての議論では、論理が混乱するばかりである。

 コメント2:添付文書は「法」ではない。したがって記載内容に従わなくても違法行為にはならないし、30万分の1に添加したエピネフリンの使用自体は争点にはならない。。

 コメント3:違法行為であれば、如何なる事を証明できても不可抗力でない限り、そのために罰せられるのはやむを得ないことである。論者は法的に違法とは刑法、民法あるいは薬事法上の意味で云っているのか。

 コメント:法学士にしては「法」を知らなさすぎる。

    8件目                                    real_estate_tokyo  (42/男性/東京都)

* 高血圧症とエピネフリン添加局所麻酔 剤1         

 高血圧症の患者さんにも私は30万分の1エピネフリン添加の1%リドカインを使用しています。そのことは既述してあります。こうすることでエピネフリン投与量を押さえながら、追加麻酔が可能になります。

   エピネフリン無添加の麻酔剤では十分な麻酔時間が得られず、先生がご指摘のように疼痛により内因性カテコ−ルアミンの分泌増大を招き、予期しがたい循環変動等がありえると考えられます。したがってむしろこのようなストレスの方が大きな問題であるというご指摘は私も承知しています。しかし、すべての薬剤について言えることですが、薬剤は添付文書に従って使用することが義務ずけられているのをお忘れでしょうか?8万分の1エピネフリン添加2%リドカイン製剤の添付文書の禁忌症の項目には高血圧症、糖尿病などが挙げられています。慎重投与ではなく禁忌ですから、これらの患者さんに投与することは薬事法上は違法行為となります。

 コメント1:やっかいな事になると考えるのは、添付文書の内容についても薬剤の使用法についても知識不足である。エピネフリン投与即事故という短絡的議論では屁理屈の域からも遠い。

 コメント2:高血圧症の患者が薬物療法、食餌療法、運動療法などにより血圧が極めてよくコントロールされているとき、この高血圧症患者(高血圧患者ではない)への歯科用カートリッジによるエピネフリン投与は禁忌と考えるのであろうか。 

 コメント3:自ら調整した30万分の1溶液、あるいはカートリッジの8万分の1エピネフリン溶液を希釈して30万分の1とするのは、違法行為とは考えないのか。

 コメント4: 添付文書は「法」ではないので適応外使用が即違法行為、薬事法での違法行為を形成することにはならない。また添付文書では高血圧症は禁忌とはなっていない。               

 コメント5:クルマの「わき見運転」は刑法上違法ではない。同様に禁忌症へのエピネフリン使用は、そのこと自体は薬事法上でも違法ではない。わき見運転によって人を轢けば「業務上過失傷害あるいは致死罪」が成立する。エピネフリン使用もそれによって事故が発生すれば「業務上過失傷害・致死」が成立し刑法によって罰せられる。民法上の解釈は別である。                                                                         

                                                10件目                          _real_estate_tokyo_  (42/jp)

   * そう考えると、一般開業医の場合はフェリプレッシン添加プロピトカイン(シタネスト)を使用されるのが最も適切であると思います。ただ局所に炎症があったりして強い麻酔効果が必要な場合は8万分の1エピネフリン添加2%リドカインを使用する方が、疼痛により内因性カテコ−ルアミン分泌を招き循環変動をおこすよりは正しい選択であると考えられ、歯科医師の裁量権があるとは思いますが、それが認められる保証はどこにもありません。法律とはこういうものだということを理解することが必要です。

モニタの必要性についても既述してあります。というよりも一般歯科開業医にもっとモニタによるバイタルサイン監視の必要性を認識して貰いたいというのが私の願いであります。

 コメント1:フェリプレシン添加シタネスト使用が適切であって、エピネフリンを使用すると医療事故が起こる、必ず起こるかの如き前提での議論はあまりにも臨床医としての常識欠如と云わざるをえない。医療事故は患者管理の不備が大きな要素となっている事に気付かねば。

 コメント2:エピネフリン投与によって何が起こると考えているのだろうか。

                 12件目                                                        sikamasuikai (36/男性/jp)

 * GPを不安に陥れるのはよくない  

   私は歯学部に入り直す前に法学部を出ました。あなたは歯科麻酔学だけでなく民事訴訟法の知識も不完全だ。あなたの証明責任に対する理解は間違っています。医療過誤訴訟では債務不履行でも不法行為でも証明責任の分配はほとんど同じです。それはどのような医事法の教科書にも書いてあります。

 法的に違法って、どうして?「あえて使用」と言われても、Eなしを使うなと教えているのは日大だけじゃないの?

 コメント:証明責任は原告被告各々の主張についてのものであり、債務不履行の場合、不履行が不可抗力によることについては、当然被告に証明責任がある。

 

  49 件中 13 件目 sikamasuikaiさん  real_estate_tokyo   (42/男性/東京都)

 *不法行為、債務不履行の規定は民事訴訟法ではなく民法の規定です。お間違えないように。歯科麻酔学の知識は私は専門ではありませんから不十分なのは承知していますが、あなたのお書きになられた30万分の1エピネフリンのこともモニタ−の方がより重要であることも、あなたに指摘される以前に書いてありますのでもういちどご覧下さい。

   禁忌症患者に禁忌薬品を使用することが薬事法に違反することは説明の通り明らかでこれ以上は説明不可能です。

   >>「あえて使用」と言われても、Eなしを使うなと教えているのは日大だけじゃないの? <<については文意がつかめません。

 

                18件目                                        sikamasuikai  (36/jp)                                         

  *そう考えると、一般開業医の場合はフェリプレッシン添加プロピトカイン(シタネスト)を使用されるのが最も適切であると思います。

   薬事法に違反する、は分かったわ。正確には「違反」じゃなくて「過失が推定さる」だけど、あなたの主張は正しいわ。で、あなたはそれを守って使ってないの?自分は30万倍使っておいて、GPには「使うと裁判で負けます」と宣伝するの?矛盾してない?モニタなしで高血圧にシタネスト使うのが一番危ないのよ、効かないから血圧上がるもん。

   アラシみたいになったので、これで消えるわね。荒らす気はなかったの。ごめんなさいね。

 コメント:使用薬剤の問題よりも患者管理、具体的にはモニタリングが重要であることに気付いている人と、気付いていない人がいる。

 

                20 件目

sikamasuikaiさんへ  シタネスト      real_estate_tokyo (42/男性/東京都)

                                                                                                              >>あなたの主張は正しいわ。で、あなたはそれを守って使ってないの?自分は30万倍使っておいて、GPには「使うと裁判で負けます」と宣伝するの?矛盾してない?モニタなしで高血圧にシタネスト使うのが一番危ないのよ、効かないから血圧上がるもん<<

   私の文章を良く読んで頂ければ、炎症などがあればエピネフリン添加リドカインを使用した方が良い場合があると書いてあります。またモニタ導入を奨励しています。私は30万倍エピネフリン添加1%リドカインを使用していますし、それが総合的にはベストだと信じていますが、残念ながらそれで事故を起こした場合はシタネストを使用した場合より法的責任は複雑なものになるでしょう。シタネストなら高血圧にも使えるのに、わざわざエピネフリン添加を使うのですから、その根拠から争わねばなりません。「高血圧でも使えると言うからシタネストを使ったのに」と主張出来るのとは雲泥の差となるでしょう。

 

 コメント:事故が起こったとき「高血圧でも使えるというからシタネストを使った」との言い訳は通らない。シタネストの添付文書に「高血圧でも使える」との記載はない。

 

  49 件中 25 件目 一次医療機関の歯科部長の意見

                                                                1real_estate_tokyo  (42/男性/東京都)

   私の知っているような論文は基本的に麻酔の追加投与を考えてのものではないものがほとんどのようです。東歯の金子教授、一戸助教授等の報告でも、坂尻の報告でもカ−トリッジ1本分エピネフリン量として20μgの使用を前提に研究が行われています。そしてこの程度の使用量なら問題がないというのが確定的な結論として出ていると思います。

          これは yuuki_ya_konkon さんのMsg 5に対する返信です

 

 コメント1: 追加投与によって何が起こるか起こらないか理解していない。

 コメント2: 高血圧患者へのエピネフリン20μgの使用が安全であるかどうか。これを立証するには、正常血圧群を対照とし、高血圧stage1140/90stage2180/100stage3200以上/110以上mmHg510152030μgと投与して比較検討しなければ不明である。

 

                49 件中 26 件目       real_estate_tokyo(42/男性/東京都)

*しかし、臨床ではこれでは困るのも良く分かります。何でこれ以上の使用について検討してくれなかったんだとお考えになられる先生方も多いと思います。それについて私なりにお答えさせて頂くなら、それ以上の使用にはモニタ−連続監視しなさいと言う考えなのだと思います。もっとはっきり言うとモニタ−連続監視なしではやってはいけないということです。監視をしていれば良いというものでもありません。出来れば静脈路を確保して、モニタ−に血圧上昇等の異常があれば降圧処置としてニカルジピン等の静脈内投与や、ニトログリセリン口腔内貼付錠剤(バソレ−タ−RB2.5)等を貼付する必要があるかもしれません。カルシウム拮抗剤アダラ−トの中身は液体ですがこれを舌下に滴下してあげるのも有効です。とにかく、このような設備や薬剤の常備が必要だということになります。

 コメント:エピネフリン総使用量とモニタの必要性とは無関係である。要点はエピネフリン使用の有無に関係なく、患者管理が適切にできるかどうかの問題である。

                49 件中 27 件目       real_estate_tokyo (42/男性/東京都)

 *エピネフリンがどうのこうのという話は、このような異常事態の予防策であって、エピネフリン量として20μgを超える処置を予定されるなら上記のような準備をしなければならないのだということです。勿論、20μgを超える場合にはいっそうの予防策が必要です。まず担当の内科医に十分相談し、処置開始前にバイタルサインのチェックを行うのは当然で、これらはきちんとカルテに記載します。その上で表面麻酔を行ったり、薬液を緩やかに注射したり、33ゲ−ジなどの細い針を使う等、患者の疼痛ストレス軽減に配慮することは極めて有効だと思います。

   結局、予防策、モニタ−による異変の早期発見、突発事態への対処という3段構えで対応するしか方法はないと思います。

 コメント:「エピネフリン20μg以上の使用予定ならば上記のような準備をする」とは認識不足である。エピネフリンに関係なく患者管理は重要である。

 

 30 件目 yuuki_ya_konkon先生へ real_estate_tokyo (42/男性/東京都)

 * WHOの基準改訂は「高血圧症の診断基準」の改訂で、歯科用麻酔剤についての基準ではございません。

   私の言い方が足りなかったようで申し訳ありません。詳細は日本医事新報3925号に掲載されております。このように高血圧症に関する考え方が変わりましたので、歯科医療にも当然、影響が出ることは避けられないと思います。この改訂で高血圧症患者が1千万人も増加するわけです。内科医にとっては飯の種が増えたようなものかもしれませんが、歯医者にとっては頭痛の種です。

 

 コメント1:高血圧症の患者は増加しない。

 コメント2 「高血圧に関する考え方が変わったからといって歯科医療にも影響がでることが避けられない」と考える根拠はなにか。WHOの診断基準改訂の目的からいえば内科医にとって飯の種が増えても、歯科臨床でのエピネフリン使用の是非と結び付くものはない。

 

             31 件目                                ( yuuki_ya_konkon)

その基準に対してのエピネフリン量の「基準」

雑誌,本などの資料の山をみてボーゼンとしてますが,,,

   WHOの血圧の基準,それぞれに対して投与できるエピネフリンの基準というのがあるんですよ。

   それについてです。

 

              32 件目      : yuuki_ya_konkon先生             (real_estate_tokyo)

   >>WHOの血圧の基準,それぞれに対して投与できるエピネフリンの基準というのがあるんですよ<<

   それについては知りませんでした。今度、金子教授とお会いしますので聞いてみます。

 コメント:面白い見解であるが私も今まで知らなかった。公に認められた見解を私達も是非知りたい。(高血圧症のstageに応じた考えを云っているのかな?)

 

  41件目                                       低能GPの追加です。(okochann2)

   専門科の先生に生意気言ってスミマセン。  私がテクニカールが少ないと言ったのは(もちろん私は何も解らないけど)エピネフリン、キシロカイン、内因性カテコールアミン、の巡回で、あとは法律関係だったからです。   

馬鹿な質問します。HTでanaphylaxis起きた場合、静脈確保 気道確保のあと、エピネフリンの投与はどうするんですか?

 

                49 件中 43 件目                     sikamasuikai   (36/jp)

 もう出ないつもりであったが、あまりに低レベルなので出てしまったでござる。ご容赦願いたい。

   エピネフリンの1来院量、1回量をしつこくお聞きでござるが、エピネフリンの分解が非常に速いという薬理の知識があれば、このような愚問は繰り返されないでござろう。20分もしたら外因性の血中エピネフリン量は極端に低下するでござるよ。ただ注射によるストレスで血圧が上昇することが多いので、モニタは必須でござる。量に固執するのは素人の発想で歯科医(GP含む)の発想ではござらん。同様にアナフィラキシでのエピネフリン使用の理由は「極端に低下した血圧の昇圧」であるから、高血圧患者でどうかというのは、訳のわからない発想でござるよ。歯学生の教育に必要なのは、HOW教育ではなくWHY教育でござるよ。そなたが拙者の後輩・教え子でないことを祈っておる。今にも潰れそうな私学でござるが、如何かな。

これは okochann2 さんのMsg 40に対する返信です

 

 コメント:まったく同感でござる。