花とオカリナ

折笠由利子


夜になると、
さみしがりやのオカリナが、
ほろほろと、
なきながら、
森の奥へと行くのです
森の奥へと行くのです


朝がくると、
はずかしがりやのオカリナは、
ほろほろと、
なきながら、
暗い巣の中隠れます
暗い巣の中隠れます




森の奥の
泉のそばの藪のわき
ふわふわと、
やさしげな、
白いお花が咲いています
白いお花が咲いています
  

夜になり
静まり返った闇の中
ふわふわと、
やさしげな、
甘い光が映えるのです
甘い光が映えるのです




「私は違う
ミツバチじゃない
だから
蜜なんていらない」




さみしげな、
恋にふるえるオカリナは、
ほろほろと、
なきながら、
じっとお花を見つめます
じっとお花を見つめます


いとしげな、
いとしげな、
お花をじっと見つめながら
枯れていくのを待つのです
消えていくのを待つのです
忘れる時を待つのです




忘れる、時を、
待つのです…

 

 

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