真夜中図書館・所蔵図書試用版


青春一直線!
〜ムネチカくん泥酔す〜

 

折笠由利子

 

 今日は飲み会。美術専攻で同じクラスの東野君に誘われて、ムネチカ君やや浮き浮きモード。なぜって、女の子も来るっていうから。

 大手旅行会社勤務の父がくれたオーデコロン。洋モノ。蝶ネクタイしたウサギさんの絵。何だかダンディな薫りで、ムネチカ君唯一の、そしてお気に入りのモノ。こういう時こそこれを使わなくちゃいけない。
 シャツは、つい最近買ったオレンジの無地。これに黒のパンツで決まりだ。ネクタイもしようかと思ったけど、あまりキメ過ぎるのもどうかと考え直し、ラフな好青年でセメることにした。
 財布の中を見たら二円しかないので、ちょっと早めに家を出る。

 ヨコハマ銀行多摩川学園前店。
 土曜日なので機械しか使えないけれども、やっててよかった。同じように浮き浮きした学生が二三人。
 父の給料日直後つまり仕送り直後なので割合リッチな預金残高。女の子の前で金関係のハジだけはかきたくないので、ちょっとばかり多めに財布へ入れる。これでよし。
 まあまだ一年生で自炊や学生生活にも慣れたばかりなのでしょうがないけれども、そろそろバイトでも始めなきゃなあ。サワヤカさを売りに販売でもいいし、家庭教師もいいし。とにかく遊ぶ金くらいは自分の稼ぎで賄いたい。なんてなことを考えつつ、「多摩川学園前」の駅の階段を昇るムネチカ君。 飲み会の会場がどこなのかは聞いてないけど集合場所が新宿なので会場もきっと新宿だろう。吉祥寺に住んでる東野君は新宿にも詳しいのだろうか。ひと駅向こうの町田しか知らないムネチカ君にはうらやましい限りだ。
 電車の中は空いていた。余裕で座席に座れたけれども、車内で本を読むと気持ちが悪くなってしまうムネチカ君は雑誌も本も持って来てないので、座るや否や足を組み眠りに落ちていくのでありました。
 

つづく



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