8,500人を相手のディナー・ショー目線

〜及川光博ワンマンショーツアー9900「ニヒルなあんちくSHOW」〜

 

 

「これで\5,250は安いよねぇ、また夏にあるなら連れてってね」

 武道館を出たところで連れが呟いた。たしかに。コンサート=音楽会、演奏会、というよりもノリはほとんどディナー・ショー。派手な演出にMCでも曲の合間でも異常なまでの客席への気遣い。さすがバリバリ体育会系なメンタリティを持つお方。8,500人の観客相手にディナー・ショーばりのキラー光線のサービスが炸裂する。

「腰、ばこばこ突き上げててもさぁ、ぜんぜんやらしくなかった。かわいいって感じはするんだけど」

 そう、あの小さい顔と前から見るとその顔の横幅ようよう二つ分くらいしかない、横から見るとさらに細くて、いったいどこにペニスしまいこんでんのかという細腰でがくがくやられてもエロさはない。でもあんなふうな柳腰くらいが、黒髪直毛率の高かった会場の女子ベイベーたちには感覚的に違和感なく受け容れられるセックスってもんなのかもしれない。ミッチー・ファンってアントニオ・バンデラスやニコラス・ケイジとかの男っぽさを売りにしてたり肉感的だったりする俳優は生理的に受け付けないんじゃないかという気もするし。あるいはわたしのようにナルシストで自分に似た姿=女子のような足腰のほうが性的な好みとして望ましいとか?

「横とかうしろのおねーさんは生々しかったけど、真ん中のミッチーひとりだけ人間じゃないって感じ」

 実際、最低7cm、推定10cm以上あると思われるあのヒールであそこまで踊り廻りつつ歌うさまは人間離れしている。岡村靖幸もあれくらい踊り狂っていたけど、彼には油断するとすぐ太ってしまうという体ゆえに、ミッチーにはない生々しい肉体性があった。でもミッチーのあのスレンダーな体では、汗をかいてもラメラメブラウスをストリップよろしく肌に滑らせても、絵にはなるけど生っぽさは伝わってこない。たとえれば玉虫とかの美しくて硬質な昆虫というところか。人間っぽさといえばせいぜいあのヒールで踊り廻る足首の筋肉が、「きゅ」とよく締まっているところを想像できるくらい。

 さて、そんな武道館でのコンサートでの、ちょっとばかり変態じみたミッチーの楽しみ方。わたしはほとんどずっと、座ったままでオペラグラスでステージを見ていた。周り中がミッチーの振り付けで立って踊る中、会場がすり鉢状で前のひとの間かららくらくステージが見えるのをいいことに。風邪気味で大声出したりする気がおきないとか、身長がデカくて腕も長かったりするので、本気で楽しもうとしてノリにのってしまうと周りに迷惑ということもあったけれど、それはなんだか覗きをしているような後ろめたさで、なかなか淫微な楽しみ。観客全員の理性を奪ってステージに釘付けにして踊らせたいミッチーの意に添わないやりかただろうけど。

「サービスされすぎておなかいっぱいって感じ。でもまた行こうね」

 そう、そのときには、そのときこそは体調を整えて胸一杯にミッチー・アトモスフィアを吸い込む予定! これで夏にコンサートがなかったら、心のどこかが飢え死にしてしまいます。

Mme chevre

   下のURLはオフィシャル・ページとコンサート前後のミッチー・インタビュー

GO! ----

http://www.toshiba-emi.co.jp/oikawa/index_j.htm
http://www.livedoor.com/interview/index.html

 

ミッチー a/k/a 及川光博についてのデータ

'69年10/24生まれの当年('00)とって30歳の歌手

'96年5月にシングル・デビュー
'97年から'98年にかけてマツモトキヨシのCM出演
'98年にはTVドラマ『WITH LOVE』、'99年には『氷の世界』出演

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