ハバネラを 三線が締め 嵐止み

〜ナビィの恋〜

 

 オジィ・恵達がいい漢(沖縄のひとだが敢えてこう書く)過ぎて泣けて笑える映画。

 あらかじめフラれているともいえる妻に、60年かけてきっちりフラれ直すため、恋をしている男・恵達。その恋の相手である妻・ナビィの不倫が糾弾されそうになる場では、入れ歯を外した口を見せて茶化し、座の一同を煙に巻いて見せたり、遊び歌にのせて恋敵に妻を託したり、敵をあざむくにはまず味方からとばかりに、妻が駆け落ちする時刻に孫を昼食で引き留めたり。とにかく恵達の、恋する女・ナビィを幸せに向けて送り出すためのそのフラれようは念が入っている。

 ナビィの恋々たる心を暗示しているような島のオペラ歌手、麗子さんの歌うハバネラが三線で締められ、嵐が止んだ朝。ナビィの逃避行の日が来たことをすでに悟っている恵達の別れの言葉と、福之助の運転するトラックの荷台の上で弾く「星条旗よ永遠なれ」が普段通り過ぎるだけに泣けてくる。

 それにしてもわたしが80歳近いナビィの立場だったら、60年経ってやっと迎えに来たサンラーとの恋の逃避行よりぜったい恵達との暮らしを採るんだけどなぁ。好きな人には近くにいてほしいタチだからってのもあるけどなによりそんなパワーがそのトシであるかどうか。これはサンラーが「ロミオとジュリエット」のジュリエットの行動力に引きずられるロミオみたいに、どちらかというとジュリエット的に強いナビィ(推定70歳代前半の恵達について「まだ若いからだいじょうぶさぁ!」と、サンラーと進んでいく小舟の上から叫ぶそのパワフルさ!)に存在感負けしてるように感じるというのもある。

 恵達が歌うサンラーを称えるジントヨーでは、ナビィだけではなく恵達にとってもサンラーは憧れの漢だったのだろうなと推測はできるが。

 ところで奈々子と福之助を言祝ぐ乱舞のラストシーンは、恵達のカチャーシー(三線の早弾き)で始まるのだが、これがもうホレてしまいそうなカッコよさ。やっぱりサンラーより恵達だよな、カッコいいのは。

 ほかに印象的なシーンはというと、奈々子が福之助に抱きついてるのを「奈々子ネーネー(ねぇちゃん、という意の沖縄弁)」と囃そうとする子どもたちと、彼らを福之助の背中越しに「しぃっ!」と黙らせる奈々子とのシーン。あれ? 西田尚美ってこんなにカワイかったっけ?

 そして時の経過の早送りがめちゃめちゃ贅沢なラストシーン! えっ、えっ、これってもっとゆっくり見せた方がいいんじゃないの?というくらいの、すんごいカタルシスです、これは。映画『アンダーグラウンド』のラストシーンの気分を明暗反転した感じというか。

Mme chevre

映画のオフィシャルHPはココ。
首都圏・その他全国各地での上映スケジュールも載っていますのでご参考のほど。

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映画『ナビィの恋』データ

'99年沖縄映画

監督:中江裕司

'99年11/20に沖縄ロードショー封切り
同年12/2に観客一万人突破

12/4に東京ロードショー開始
'00年1/15大阪ロードショー開始
以後全国巡回予定

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