森谷 の 森のクラフト 第1回 子供達のクラフトイベント

子供達対象の森のイベント等で木工やクラフトの教室をする事が多いのですが、なかなかうまく行かない時もあります。未完成で終わってしまう子がいたり、集中できないで、投げ出す子がいたり、難しい面も。
 なんとか終わったけど、果たして成果はいかほどと主催者が感じる場合もあります。なんとか、「木に触れてもらいたい。」「自然の楽しさを味わってもらいたい。」「つくる喜びを体験して欲しい。」・・色々
想いを込めて計画はするのですが、人数、指導者、道具、会場、時間・・様々な制約の中で、進めなくてはなりません。学校の授業として、市民のイベントとして、各種団体の活動として・・・それぞれ異なる条件があります。

低学年の女の子の作品

 さて、森林インストラクターとしては、どんな条件で開催されるイベントでも、それなりの工夫をして、主催の目的にかなう成果を得たいもの。今まで、学校や社会教育などで、やってきた試行の成果やら失敗やらを紹介しながら、クラフト指導のノウハウをお伝えしたいと思います。
 肝心なのはいかに材料や道具を用意して配列するかです。材料の準備や会場の適切な設営などが成否の半分を占めます。

  自然を生かす。木と対話する

自然素材の木工の時は、いつもこんな風に言います。
○「さて、この木、良くみてごらん。何に見えるかな。」
△「枝の所が、象の鼻」「節が目玉にみえる」
○「なるほど。じゃあ形が分かるように作ってみよう。」
こんな具合で進める事にしてます。そんな言いつけを良く聞いてくれた作品でしょうか。形といい、木目と言い、確かに象そっくり。目玉は人形用の用意しておいたものをもっていきました。牙を接着するのが難しかったです。なかなかの出来でしょう。

年齢も経験も違う子供達の参加するイベントでは、その「進度差」が大きいのが問題。一斉に同じ材料で同じものを作っても、小さな子はついていけない、大きな子には物足りない。
 そこで、いつも
「半レディーメード」作戦をとります。生の原木から、ナタ一丁で切り出すのが自然のクラフトの醍醐味なんでしょうが、限られた時間のイベントでは無理。未完成の子が続出してしまいます。
こんな風に、枝や丸太を様々な形に半加工した部品を準備しておき、箱に分別して並べておきます。各自好きなものを選んで、材料に。くっつけるだけでも、出来ますし、もちろんこれを「加工」しても良し。
 枝、輪切りの丸太、木の実、枯葉、つる、流木、豆類、穀類、トウモロコシの毛・・・これだけで、自然の博物館。名前をつけておけば標本として良い教材にも。

自木片は、かなり細かく切ったものを用意しておきます。斜め切りととか、半割とか、色々。子供達は、それを目玉にしたり、耳にしたり。
 「そこまで面倒みたら創造性が養われないのでは?」と思われるかも知れませんが、心配無用。発想豊かなな子は、「この枝、こういう形に切りたい。」とか、ちゃんと「
ワガママ」に創造性を発揮します。

そんな組み合わせの妙で、小学校高学年の男の子の作品。まつぼっくりが、ラクダのコブに。足はキリで穴をあけてから接着しました。コブはラクダだけど、耳はトナカイなのはどうして? まあ、そんな事は言うのは禁物。とにかく、何かが出来る事が大切です。初めてクラフトに挑戦する子には、完成してもらう事が第一です。どんな物でも完成は嬉しいもの。その達成感が、次ぎもやりたいという気持ちを残します。未完成で帰っては、木工なんてつまらないと言う思いだけしか残りません 

その発想の奇抜さには、いつも驚かされます。何を作るかに関しては「指導」なんて、大人には出来ない。技術だけを補助して上げれば良いのだと思います。
でも中には、決められたものをテキスト通りに作るのが好きな子供もいます。← これは、見本としてプリントしておいた作品どうりに作った女の子の作品。耳の形とか鼻の位置とか、写真どおりにこだわっていました。模写も「技術」の基本。それはそれで良いのです。「みんな好きなように、創造的に・・」と
一律に創造を課すのも間違いでしょう。

 「何だこれ」みたいな作品も続出します。大人には分からない子供だけの世界が存在するのです。ただ、今の子のイメージ世界は、驚くほどアニメや漫画からの影響が濃厚です。ううっ、これは水木しげるの影響か。何か絵本でもみたか。
 中には、なかなか大人には了解不能な「独自世界」を構築する子もいます。クラフトには、一種の「箱庭療法」あるいは「絵画療法」のような一面もあります。芸術と狂気は表裏一体とか言いますが、子供達の創造性というのも同じこと。
カウンセリングマインドをもって、作品を仲立ちにして子供達と対話するのもクラフトのひとつの意義でしょう。

  何をつくったら良いか決められない子もいます。そんな子のためには、動物図鑑とか、イラスト集などを用意しておきます。といって、リアルな写実は小学生はやりませんがね。具象は中学高校から。子供は本質的に「モダンアート」するのです。

  成功の秘訣は、「見本」。材料だけ用意して、「さあ自由に作れ。」と言っても、木片を投げたりして遊ぶばかり。目標はイメージを提示してあげないと、「ものづくり」は始まらないのです。
 左の三作品は、こちらで「見本」として作っておいたもの。こういうのを会場にたくさん並べておくと、場の雰囲気が作ろうという気持ちを引き出します。作品の写真でも良いので掲示しましょう。

  こんな「ボックスアート」してしまうのも面白い。これは見本として箱に作品を並べました。子供達の完成品を、こんな形で「展示」するのも良いし、ひつの物語を「共同製作」するのも面白い。ひとつの世界づくりですから、子供の世界観が投影されたりもします。

  森のイベントとして、クラフト教室を行う時に心がけたい事です。

1 まず準備。その日に使用する分の何十倍も材料を豊富に用意。使われなくても、森の材料の豊かさと面白さに触れてもらうのが第一です。

2 見本を用意して、目標を示します。芸術の場でもありますすから、作品に囲まれる場を作っておくのが大切。

3 教えるという気持ちでなく、カウンセリングマインドを持って、作品を通じて子供の世界と対話するつもりで。指導するのは「技術」だけです。

森のクラフト 初回はここまで。次回は、もう少し運営上の細かいノウハウについて考えます。