ユニコーン   

         

   ユニコーン
   お前はどの道を来たのか
   なかまの住む明るい草原からか
   くすんだ森の闇に、突然あわらわれる おまえは
   私には、孤独そのものの姿だ

   やさしさをかくしているのか
   真理をつきさすおまえの角
   その烈しい、おまえの感情
   どんな小さな心をも見取って
   激しく荒れ狂う
   嵐のように
   そして、けだかく

   それとも、おまえは真実だけに生きているのか
   おまえを、庭につなごうとする人々を
   おまえは悲しげな眼でみるだろう
   自由で真実のおまえは
   そのたくらみを知っているから

   私はお前に語りかけたい
   私にもお前の心がわかった時
   気づくに違いない
   私達を恐れる人々を
   森の真実を
   そして、とびまわるだろう
   自由の喜びと
   真実ゆえの孤独にたえかねて

【解説】

「切断面の響き」同人の若き日の作品です。本人は恥ずかしがって直したがっていますが、これはこれで未完なるが故の若さが感じられるの作品です。そのまま発表します。

 高きものを目指す若き独創者達の心根を良く表現しています。若き瞳だけでなく、大成しても組織に属さず我が道を行く孤高の芸術家、哲学者、求道者達の瞳と接すると、鋭い角をもったユニコーンの姿を感じる事があります。そして、誰の心にも、きっとどこかに、ユニコーンは潜んでいるに違いないのです。