今日は、御近所案内なのだか、森の案内だか、でっかな樹木の取材をしました。御近所と言うには、少し遠くて、自転車で10分ほど。早川という地に、国指定の天然記念物があります。神奈川県では、7つしかない天然記念物のひとつですから、さぞかし偉大なものかと思い、探検にいきました。しばしば観光案内にも載っているので、以前から気にしていたのですが、なかなか見つかりませんでした。どうも天然記念物は、あまり詳しい地図を掲載しないようにしているみたいです。
で、かすかな情報をもとに、捜索しました。おおまかな地図に従うと、天然記念物があるとは思えない、殺風景な住宅地です。いや、住宅地の中に乱立しているラブホテル街みたいな地帯の側でした。何か看板でもと探すと、なんとか小さなのを発見。↓

で・・「ここが入口 ? 」、道というか排水溝と言うか、細い溝を登れと言うらしいです。ミカン畑をくぐっていくと、また看板が、でも・・・
「この先、いけるの ? 」草ぼうぼう、道はすつかりイラクサなどに被われています。おまけに、なにやら毛虫が大発生。名の分かるものなら、気にしないのですが、かぶれたりするとするといけないので、ぐるっと迂回しました。
ほとんどロッククライミングのようにして、ミカン畑の石段を登り、落ちそうな橋を渡り、上の段に。でも・・・

その先にも、草ぼうほうです。↑ どれが、いったい天然記念物だ? 上に掛かっているのは、ターンパイクの高架です。ふと右を見ると、どでかい「国指定天然記念物」の看板がたっています。どこから、だれが、こんな看板を見るのでしょうか。ターンパイクから見えるのでしょうか。なおもジャングル状態の中を進むと、丁寧で立派な標識が。少し赤い幹らしきものが見えます。あらゆる下草をかきわけて、分け入ると・・
ありました。これです。天然記念物です。↑
(かながわの名木100選)ぶれた写真で、申し訳ない。
ビランジュは別名で、和名は「バクチノキ」(博打の木)。ご覧のとおり、樹皮がはがれて赤裸になるので、博打で身ぐるみはがれた様子からの命名らしいのですが。
ビランジュの方の意味ですが、調べても「仏教の言葉らしい」としか記載がありません。それで、小学館の仏教語大辞典を調べました。サンスクリットの音写のようです。
vairambhaka 毘嵐風 毘藍 迅猛、旋 などと訳す。
世界の生成、または壊滅する劫初、劫 末に吹く大暴風
とあります。確かに暴風にも耐えそうな丈夫そうな樹木にも見えますが、世の終わりに吹く暴風とどういう関係が ? 幹周4.9m 樹高約20m 推定樹齢320年
それから、この木の住所ですが
神奈川県小田原市早川字飛乱地(びらんち)1374
となっています。木の名前から由来しているのですが、なにやら「文化年間、小田原藩主大久保忠真に逸話があり。」との説明をみつけましたが、いかなる逸話 ? こちらは、資料が足りなくて、不明です。
生物学的データーです。
サクラ科 サクラ属 常緑高木 葉は互生 長楕円形 鋭い鋸歯あり 果実は核果 花は9月頃 3センチほどの総状花序を出す 樹皮は灰褐色 鱗片状にはがれ紅黄色の斑紋になる 関東以西 沖縄 台湾まで分布
と、桜の仲間ですが、葉、幹、花、実 どれをとっても桜に似てません。葉はツバキ、花はむしろシイの仲間 実はナッツ状です。上が葉の様子。↑ 植物学上の分類というのは、花弁やおしべめしべの数や構造を主体に分類するので、同じ属でも、常緑・落葉 草と木 の違いまである場合があります。日常的な観点で分類せず、まあ遺伝的な類縁関係、系譜で分類しているので、同じ属でも、えらく違うことがあるのです。
樹木としては、それほど珍しいものではなく、各地にありますが、関東でこんな大きなのは少ないので、文化的な由緒とともに天然記念物に選ばれているのでしょうか。

花序がつきはじめていましたが、開花までは、まだのようです。↑ 花が咲くときに、もう一度来てみたいのですが、でも・・・・ちょっと、大変です。
凄い場所にあり、鬱蒼としたという表現なのでしょうか。しばらくするとヤブ蚊の猛攻撃がはじまりました。あわてて撮影して、樹木本体の写真がぶれてしまいました。申し訳ありません。
しかし、なんとミスマッチばかり目立つのか・・・ まず、由緒の正しさと有名さの割に、なんだか場末の住宅地の奥にあります。 それから、豪勢な看板と表示のくせに、何という手入れの悪さ。 多分、ここ数ヶ月、誰も来ていないのではない様子。そんな立派な看板建てるなら、それなりに草刈りしたら良いのですが。
でも、樹木の保護のためには、確かにあまり人が来ない方が好ましいので、だったらほっときゃいいんですが。まあ、人が来ないおかげで、確かに樹木は健康そうに育っていました。でも、ほったらかしにしては、ここらは急斜面で、上は確か石垣山への道路。崩落のおそれがあります。少しは保護の手をかけないと、周囲が崩れてしまう地形です。

まあ、よほどの樹木好きでないと、来ないでしょう。大抵の観光客は諦めて撤退する状況です。まあ、いまの所、保護のためには良い環境ではないかと個人的には思いました。帰り道も撮影しましたが、こんな具合です。やはり迂回して、怖い崖を降りました。今の所、一般客立入禁止が実情です。
しかし、どうして?。看板のでかさと、手入れの悪さのミスマッチは何故か。多分「お役所仕事」のせいだと思います。お役所の仕事って、継続性があるようで、すごく飽きっぽくて、気まぐれなんです。
たまに熱心な公務員がいて、いろいろ整備したりするけど、すぐに転勤させられる。大抵は後任が、やる気のない人というのが定番なので、ほったらかしにされる。また、予算制度が、「○○事業費」とか言って、年度毎の単発だったりするから、看板やら道の整備に数百万円ででも、永続的な草刈り費用年数万が出ないのが普通なんです。かながわ名木百選選定の予算は出でも、メンテ費用はなしなのでしょうかね。まあ、県も市も不況だから・・・
そんな、こんなで、公園とかって、そんな感じの施設が多いでしょ。作るばかりで、手入れが悪くで、「これ、何〜 ?」って廃墟が各地に増殖する構造的体質なんです。
元、地方公務員だった編集長が言うので確かです。あっ、編集長はやる気なし公務員でなく、熱心公務員でしたよ・・・後を続けてくれる人って、いなかったようで・・何かが、伝統になるって難しい事です。やっぱ、こういうのは御近所とかボランティア集団みたいなのから、始まらないと長続きしないんですね。ちと、社会問題に脱線。 誰が見るのか、草に埋もれた大看板です。 ↓
樹の話にもどります。「どうも、大きな樹木に熱心だけど、何しているの ?」 と言われそうですが。実は、編集長は「ホルデイダー」樹のモデルを探しているのです。
何、その樹・・・ええ、ちゃんとミクロコスモス読んでてください。童話「きみえちゃんと愉快な仲間」に出てくる、知恵の樹ですよ。みんなが、その周りに集まって、反対言葉を言いながら勉強する樹です。・・もう何千年も生きて、世界のあらゆる事を知っていて、みんなの質問に、枝をゆらして答えてくれる樹です。
そのモデルになる樹を探しているんですけど、なかなかないですね。このビランジュは、幹の感じは、少し良い線いってますが、もっと太くて、どっしりしてないと。ホルデイダーの事は、また。童話の続き、遅れていてすいません。
どうも案内にのっているような大樹、名木は、どうもみな元気がないのが多いです。樹木はあまり人が近づきすぎたらいけません。まあ、この樹は、その点、安心です。御紹介はしましたが、見学者の安全と、樹木の健康のために、近づかない方が宜しいと思います。
場所ですが。 箱根登山鉄道線 箱根板橋駅 徒歩15分。これ以上は秘密・・ ↑
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