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ミクロコスモス総合版2004年7月23日「森林案内 3 」
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発行 ミクロコスモス出版
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森林案内 3 サルスベリ
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暑いですね。こんな炎天下に似合う花があります。百日紅です。これは森の樹木というより街路樹として良く見かけます。
学 名 Lagerstroemia indica みそはぎ科 中国原産。
Lagerstroemia サルスベリ属 indica インドの
Lagerstroemia は、 植物学者リンネの友人の「Lagerstroem 」の名前。
漢名の 「 百日紅」のとおり7月中旬から10月中旬までの100日を咲き続けます。ひとつの花がずっと咲いているわけではなく、一度咲いた枝先から芽が出てきて、次々と花をつけるのです。
散れば咲き 散れば咲きして 百日紅
加賀千代女
の句のとおりなのです。街路樹として、数多く採用されているので、炎天の都会の風景となっています。ゆらゆらした植物体が、炎天の陽炎にそって咲いているようです。
炎天の 地上花あり 百日紅
高浜虚子
百日紅が咲く頃、多くの人が帰省や旅行で、田園や森の地方に旅にでます。編集長も、夏は旅をする事が多かったのですが、暑い都会を出発するとき、いつもこの百日紅が道ながらに送り出してくれる気がしていました。あまり田舎に多くない植木のようで、帰ってくると出迎えてくれる花が百日紅なのです。
サルスベリという和名は文字通り樹肌が猿も滑るほどなめらかである事が来ています。
花はモシャモシャしていて、一見どれが花弁なのか分かりませんが、6つの波打つ花弁が糸状の柄になって広がっている事が分かります。葉は対生または、互生。コクサギのように左右に交互に2葉づつ並ぶものもあります。全縁、無毛、葉柄はなし。
【シマサルスベリ】
サルスベリには園芸品種として白花もあります。小田原の国道一号線ぞいに、それらしきものがあったのですが、良く観察してみるとシマサルスベリでした。
花の
構造はサルスベリと良く似ているのですが、より小型です。花弁もそれほど広がりません。花期は6月から8月。百日紅よりは短く、夏の中頃には終わってしまいます。葉は百日紅が倒卵状楕円形なのに対して、シマサルスベリは卵状楕円形で先端がとがります。
【ヤブミョウガ】
さて、森林の花を見てみましょう。今の季節、小田原近辺の人工林の林床では、白いぽつんとした花が群れて咲いている所があります。ヤブミョウガです。葉がミョウガに似ているので、こう名付けられていますが、ツユクサ科の植物です。
Pollia japonica ツユクサ科ヤブミョウガ属
関東地方以西から九州の山地の林内などに生える大型の多年草。花期は8〜9月。白色で花序は円錐状に数段に分かれて集散花序がつく。
根は白色で長く横にはう。茎は50〜90cmになり、なかほどに葉を6〜7枚集めてつける。葉は狭長だ円形で一見ミョウガに似ている。秋には藍色の実が熟してつきます。
照葉樹林によく群生し、アジア、オーストラリア、アフリカ、中米の熱帯、亜熱帯に分布。日本は北限にあたる。南にいくほど大きく育っています。中国ではヤブミョウガの実を虫さされなどの薬として利用するそうです。
花期は8〜9月。箱根の大雄山の杉林や真鶴岬の森などに大きな群落があります。林床の植物として耐陰性があります。ほの暗い杉林に、白い玉のような花をぼつりぼりと群生させている様は、不思議な風景です。こんな句もあります。
ヤブミョウガ群がり咲ける御所の闇 桂子
【生物多様性】
ヤブミョウガが林床に広がる杉林の風景も良いものですが、どうも少し寂しいものです。とにかく、人工林というのはそれなりの自然はあるとしても、どうしても「生物多様性」が高くありません。観察して数えていっても、十幾つかの植物を数えると終わりになってしまいます。
自然林や広葉樹林、混交林などで、植物を数えると、いくらでも出てきて数え切れない事が多いです。コケや、キノコ類も、また昆虫もそれなりに少なくなっています。
まあ考えてみれば、杉林などはイネを育てる水田と同じで、生物種が少なくなるように人間が誘導しているわけです。
もともと、杉などはあまり昆虫や動物を集める種類の植物ではないし、杉林に自然の豊かさを求めるのが無理なのかもしれません。
まあ、これが良いか悪いか、またお話する事として、「生物多様性」という言葉が出てきましたので、ちょっと覚えておいてください。
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今日はここまで ではまた。
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【お知らせ】
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ミクロコスモス出版 ミクロコスモス編集部
編集長 森谷 昭一
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