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ミクロコスモス総合版2004年5月30日「書棚で考えた事 1」
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発行 ミクロコスモス出版
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書棚で考えた事 1
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編集長は、本が沢山ならんでいる所にいくと、必ずいくつかの疑問と感慨をもつ。本が沢山並ぶ所と言えば、書店、古書店、図書館、個人の書棚などだろうか。
同じ量の書物が、廃品回収で積まれていても疑問はわかない。並んでいないといけない。書物が、きちんと並べられると、人はそこに何かを感じ取るものだ。そんな感慨や疑問を少しばかり、書いてみたい。ひとつめはこんなものである。
ひとつめ 「どうして、こんなに本があるの?」
書店や図書館に初めて出入りするようになってから今日まで、これは変わらない思いである。自分だけの思いなのか、数人に訊ねてみた。
「本屋だから当たり前だ。」
「さあ、でも欲しい本は足りないわ。」
「はて ?」
などと、編集長のような感慨は少数のようだ。
「どうして、こんなに本がが沢山あるの?」という感慨を自分なりに分析してみた。いくつかの前提がある事に気がついた。「世界のすべてを知りたい。」そのような心性の存在だ。人は、「すべてを知りたい欲求が、心のどこかに必ずあるのではないか。」
小学生の時、鉄道に興味をもち、「路線の名前」地図からノートに書き出した事がある。「宗谷線 、 宗谷 ─ 根室」から始めて、順番に並べ書いた。
やがて「すぺて知りたい」と思うようになる。すべての線路が載っている本をみつけて来た。地図で調べるまでもなく、一覧表になっていた。なあんだと思った。すべて知りたければ、本を探せば分かるという事が分かった。後になれば、当たり前の事なのだが、小学生にとっては、こんな事でも発見のひとつなのだ。
「すべて知りたい。」と言う気持ちは、グレードアップしていく。昆虫に興味をもてば、すべてを知りたくなって図鑑を探す。詩というものに開眼すれば、世界各地の詩を読んでみたい気になる。音楽を聞く事が楽しいと分かると、ラテンだ、現代音楽だ、津軽三味線だ、ガムラン音楽だと、ジャンル探訪がはじまる。みな「この世のすべて」を知りたいという思いからなのだろう。
そういう思いを背負って、書店に行くから、書物のあまりの多さに幻惑するのだ。小説だけをとっても、古今東西どれほどの著者がいて、どれほど沢山の本を書いているのだろうか。「一生かかっても読み切れない。・・」と焦ってしまうのだ。
さらにそのような傾向を進めれば、昆虫の本、歴史の本、絵、思想、音楽、料理、植物、技術、・・・・と、限りなく「分野」を広げていく事になる。そんな事をすれば、世界の多様性に目が眩むことになる。すべてを知りたいと思わなければ、そんな感覚はもたないだろう。
「本屋だから当たり前・・」みたいに思った人間は、そういう思いは持っていないらしい。自分の興味ある専門分野だけに、ライトがあたっていて、その他は陰になっている。あるいは関係のない書棚の本は、紙屑にしか見えないのだろうか。
編集長は 書店や図書館にいくと、とりあえず、あらゆる分野の書棚を回ってみる。そして、彫金の技巧書だの、梵字の書き方だの、日本工業規格だの、紅茶の産地の本だの、キノコの作り方だの、原子力工学の本だの、箱庭療法の本だの、交通事故の法律の本だの、・・・知らない人が見たら「この人何の専門の人?」と思うようなランダムな本の立ち読みが展開される。
もちろん、そんなものを眺めても、内容を深く理解する事はできない。ただ、「こんな世界があるんだ〜」程度の「分野」のコレクションが増えていくだけだ。そんなコレクションには限度がないから、いつも疲労感をもって書店や図書館から出てくる事になる。
本屋にいくたびに、「どうして、こんなに本があるのだろう。」と思わされる原因は好奇心だろう。まあ、こんなふうに本棚の迷路をうろつきまわって、くだびれている人間など少ないかも知れない。
同種の人間が少ないのは、寂しいので、是非こんな立ち読みの仕方をして、「どうして、こんなに本があるのだろう。」との感慨の持ち主になってもらいたい。本はたくさんあり、世界はいっぱいある。
編集長
最近、ちょっと各執筆者から原稿が来ません。で、編集長ひとりで、思いついた事を書いてます。こういうのを「埋め草」って言うんです。ちょっと古い編集用語かな。埋め草って、案外くたびれるんです。
くたびれんだけど、調子にのって「書棚で考えた事 2・3・4・5・・と書いてみる気にもなっています。まあ、読みにくくて申し訳ありませんが、おゆるしを。
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今日はここまで ではまた。
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ミクロコスモス出版 ミクロコスモス編集部
編集長 森谷 昭一
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