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ミクロコスモス総合版2004年4月22日短編「意味のない小説」
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発行 ミクロコスモス編集部
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短編 「意味のない小説」+ 現代音楽紹介
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「ああ、なにか、誰のためでもない、意味のない事をしてみたいな。」
代々、厳格な家の長男に生まれた彼は、幼い頃から「人につくす」ことや、「社会に役立つ意味ある仕事をする」事を教えられて育った。そして、その通りの仕事ぶりで、日常生活も奉仕の毎日だった。
少しまとまった歳になって、ある日、春風にでもふかれたのか、ふと我が人生を振り返る気分になった。
「ふ〜っ。意味ある仕事を続けるは疲れるものだな。
「誰の役にも立たない、意味のない事って、どんな事だろう。」
「達成感などいらないから、だからといって『その場のなぐさみ』みたいな事ではなく・・・」
こんな想いにとりつかれ、彼は、色々な事をした。座禅、マイナーなスポーツ、石ころ集め、希少になった子供の遊びのたぐい・・・・。
どれもやっているうちに「意味」が生まれてしまった。他の人には無意味な遊びでも、本来有能な彼のこと、いつの間にか周囲に流布して、それの世話役のようになってしまう。無意味な事をすればするだけ、彼の人生はどんどん豊かになってしまった。
「ああ、なにかもっと無意味な事はないかな・・
誰の役にも立たないで、
人の迷惑にならないで、
まるで意味のないもの・・」
ふと思いついて、彼は小説を書き始めた。自叙伝のようでもあり、でも実は意味のない小説・・・役に立たない文章・・
そういう趣旨だから発表する気は、無い。人の目に触れる事もない秘密作品にしようと決めた。
「何・・。秘密などと言われると、かえって見たくなるな。」
とおっしゃるなら、見せてもよい。
それは、簡単である。そう、これ。この文章が、それだ。
これ、この文章が、彼が書いた「意味のない小説」の第一作である・・・・・
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【講評】
辞書で右の意味を記述するのに、「この項が印刷された、ページの方向」とか書いてあるやつがあるけど、その種の手法ですな。
ある現代美術の展覧会で、「トイレ→」と描いた作品が出品された。おかげて、必要時に迷って困る人が続出したとか・・関係ない事だけど。
「再帰代名詞手法」「額縁手法」とか言うんですかね。
もう、少し彼の心理描写があっても良いんでない。ちっと出来すぎた人間、それ故の悩みみたない心理の描写。構成は、一応は三重構造程度にはなつているけど、その割に意外性には欠ける・・。
ほれ、だいたい、意味ない文章って、もっと「ダダイズム」していないと駄目ですよ。
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みたいなやつ。あれ、これもちょっと「意味」ありげかな ?
人はどんなにあがいても「意味」から逃れるのは無理なんだよね。
それに、この種のものって、意味ないようで、読む人が読むと意味があるって仕掛けもして置くものでしょ。
「意味を求めて生きる人間の性を批判する。」とか、さらに「意味なく生きている人間の批判。」とか。そういう事を仕掛けるつもりなら、もっと洗練された文章を書かなくちゃあ。自分が意味ないって言いながら、高度な技を披露すると、本当に意味ない小説なんかが炙り出されるだけど。これじゃ、自分が炙られちゃう。
まあ、こういう事、考えているってのが不純なんで、それに対する批判にはなるけど。
どうせ、「第二作」も送ってくるんでしょけど、さらに、もっと「意味ないのを」よこしてください。「お前、の講評の方かよっぽと意味ない。」とか言わないこと。
(構成)☆☆☆ (奇抜さ)☆☆ (描写)☆
(凝縮度)☆☆(哲学性)☆☆(意味なし度)☆☆☆
☆は5つが最大です。
編集長
【現代音楽紹介】 「スティーブ・ライヒ」
では、「意味ない音楽」 かどうか知らないけど、そちらの方に向かっている、現代音楽を紹介しましょう。「スティーブ・ライヒ」です。
本当は意味のない音楽と言う事なら、「ジョン・ケージ」とか「クセナキス」とがいいんだけど、いきなりでは、ぶったまげる人もいるので、ちと分かりやすい「スティーブ・ライヒ」を選んでみました。
彼の音楽をはじめて聞いて、
「おや、やけに前奏が長いな。そろそろメロディーが出てくるのかな。」
と、思う人も多いのですが、その「前奏」はえんえんと続いて、突然終わってしまいます。
彼の音楽は「繰り返し」が特徴なのです。構成性や意味の要素の体系性などを否定していく種類の音楽です。身近な風の音や機械の音を体で受け止めるような「環境音楽」にも近いものがあります。
ただし、そのような事をもっと過激にやつた「ジョン・ケージ」などとは違い、彼はよりポピュラーで耳障り良い音を響かせてくれます。執拗な繰り返しだけど、まあ良いところで変化がやってくるし、「汽車の描写」だったり、『砂漠の風景」だったりして、具象的で分かりやすい面ももっています。もちろん、単なる描写だけではないのだけど。
彼の曲は、みななかなか長大なものです。「CD一枚、どこを切っても違いがわからん。」みたいなのもあるのですが、聴くものは、彼の音楽の中に取り込まれる事が正当な聴き方かもしれません。
船に「揺られ」たり、電車のレールの音のリズムが「体にについて」しまったり・・と、より。身体で聴く音楽かも知れません。
今時の時代では、「テクノ」や「サンプリング」や「ゲームミュージック」に、みな慣らされてしまって、むしろ、「スティーブ・ライヒ」の音楽に叙情性を感じてしまう程です。でも、登場した頃は、なかなか衝撃的な音楽でした。
古典派のクラシック音楽や演歌にどっぷり浸かって、それだけが音楽だと信じている人には、異次元世界だったのです。
「エレクトリック・カウンター・ポイント」も、本当は長大な作品なのだけど、今日はサンプラーから体験版として聴いてください。
最初のエレキギターの「前奏」のようなフレーズが、最後まで続きます。ただ、少しずつ「変容」していき、平板さの中に「彩り」が感じられます。フレーズは洗練されていて、快い音響ですから、その響きに身をまかせて、曲に浸かっているのが聴き方でしょうか。
歌謡曲やオペラのような濃厚な文学性や「意味性」に、ふと疲れてしまった時に、「スティーブ・ライヒ」は、爽やかな「無意味」を与えてくれる音楽です。
【 音源 】
STEDVE REICH
ELECTRIC COUNTERPOINT FAST
スティーブ・ライヒ入門 から WPCS-5051
4分29秒
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今日はここまで ではまた。
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ミクロコスモス出版 ミクロコスモス編集部
編集長 森谷 昭一
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