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 ミクロコスモス総合版2004年4月21日短編「夢見人」
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               発行 ミクロコスモス出版
                 
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    短編 「夢見人」
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    人に愛される条件は、聞き上手であることだ。

 「彼」は聞き上手だった。人の話をしっかりと受け止め、特に話し手に「夢を語らせる」のが得意だった。。

彼のやさしげな表情に接すると、どんな人も心を開いて、自分の夢を語り始める。金儲けの事業の夢から、新しい学問の創始者になる夢、世界を改革する夢、平凡な生活の夢・・・、夢はいろいろだった。

「夢物語」に聞き入る彼の目の輝きに、多くの「夢見人達」はついつい遠大な計画を膨らませていくのだった。

「彼」はどんな職業なのか良く分からなかった。彼の部屋を訪れると、沢山のノートが山積みされているので、みんな彼をルポライターだと信じていた。粗末な部屋だが、そこで多くの人と夢を語り合った・・いや語ってもらっていた。

でも、一方で彼は随分と冷めている面もあった。多くの夢見る人達の計画を知っているのだから、それをうまく結びつけるコーディネーターのような事をすれば、夢のいくつかは現実化されたに違いない。だが、彼は夢を聞いても、その実現を手助けするような事はなかった。

嬉しそうな表情とともに、彼はいつも少し寂しそうな顔もしていた。そんな夢を語る人の弱さも。「夢見人達」が気まぐれで、不満が多く、いざとなると体を動かそうとしない事も知っていた。

ある時、彼はふと、こんな言葉をもらした。

「うん〜。そんなものさ。人は100の夢を語るけど、実現のために動き出すのはそのうちの1か2程度だろ。そして、実現するのは、0.001位だからな。実現したとしたって・・・」

少し、驚いて問いただした。

 「そんなことどうして分かるんだ。」

 「いや、調査の集計によると・・・」

そう言いかけて、まずい事を言ってしまったかのように、彼は急に黙ってしまった。


 独りになると、彼は、粗末なアパートで夢が記録されたノートの山に埋もれて、つぶやいた。
  「そろそろ帰るころだな。随分と夢もたまったし。もう任務も果たせたろう。」

 実は、彼はあの世から来た【人間世界調査人】だった。彼の任務は「儚い夢」を収集して、彼岸の国の支配者達に報告する事だった。

ある春の日、彼は、夢の記録をもって「昇天」した。地上の人には、突然の失踪にしかみえない。

何もなくなったアパートを訪れた「夢見人」の何人かが訪れた。彼の素性など知らない「夢見人」は、不思議な感覚にとらわれていた。言いようのない寂しさが、彼のいなくなった空間に漂っていたからだ。みな異口同音に言った。

「寂しいな。・・なんだか、夢をもって行かれてしまったような気がする。」

   ・・・・・
                    k/y

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【講評】

(新鮮さ)2
(話のリズム)3
(話の巧みさ)2
(描写の巧みさ)2


まあ〜た。良くある「天国の使者」ものですな。ショートショートでは、定番パターンの「落ち」です。まあ、夢を「語る」ばかりで何もできない人間の性を描くって・・感じのねらいは分かりますけどね。

それから、もう少し「彼」とか「夢見人」のイメージを読者に喚起できるように、描写にも凝ってもらたいですね。ノートの事など、少し突っ込まれると多少話が破綻しかねない部分もあるし。

まあ、総合点 5点満点 2.5点・・・今後の努力を期待するって所で。

でえ、なんとなく寂しい「落ち」なので、持っていった夢を天国で神様が叶えてくれるとか、続編も書いてみたら・・・面白くないかな・・・・
                         編集長
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 BGMに次の曲を流してください。。聞きながら読むのではなく、読み終わったら口直し・でなく「気分直し」にお聞きください。

 武満徹  不良少年  演奏 鈴木大介

【編集部より】
 久しぶりに「短編」も復活しました。SFとか童話とかも、やってますからね。よろしく。この種のもの、書かれる方はどうぞご応募のほど。

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      今日はここまで ではまた。
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ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部
   編集長  森谷 昭一   

★ 編集部宛メール    micos@desk.email.ne.jp