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 ミクロコスモス総合版2004年4月17日「フォーレ バイオリンソナタ」
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                ミクロコスモス編集部

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    今日の一曲 
  フォーレ バイオリンソナタ 1番
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 春が走り抜けています。山では、クヌギやコナラがみずみずしい若葉とともに森を彩ります。町の楠の木もポピーレッドの若葉を先端に、ひわ色の葉がつややかです。4月の森は、まるで、数百色もの色見本帳を見ているようです。

梅から始まった樹木の花のリレーは、コブシ、桜、桃、梨、ヤマブキ・・と続いていきます。シャガやスミレなどの下草たちも樹木のリレーを伴走しています。春はいのち彩りの世界です。

でも、若々しい春のいのちに触れると、ふと寂しさも感じるのは、どうしてでしょう。人は花や木々がありまにも、みずみずしく輝く時、自らの。そして、その若々しさは、すぐに消えていきます。

 あの若々しい木々の芽生えも数日で、活発な深緑の姿に変わっていきます。春の生命の頂点に立つ時、人は「このまま止まってくれ。」とさえ思う事があります。

でも、木々は、そんな、人の想いなどかまっていられないようです。いのちを何かに投げかけるように、やがて来るあの暑い夏の光の中に走り込んでいきます。

もえる春の若々しさを表現した音楽を紹介します。フォーレの「バイオリンソナタ、1番」、一楽章です。次の音源をお勧めします。

FAURE NUSIQUE DE CHAMBRE Vol.1 EMI CDM 762546-2


春のバイオリンソナタと言えば、ベートーベンの「スプリングソナタ」が有名ですが、そのみずみずしさ、そして、春の寂しさを合わせて表現している、このフォーレのソナタは、かくれた名品です。

 フォーレ30歳の時の作品です。79歳の死の直前まで作曲を続けたフォーレは、晩年は渋い深みのある曲を数々書きました。でもこの曲は、初期の若さあふれる作品です。

フォーレの曲は、演奏の解釈が難しく、気品ある演奏をするにはある程度の年齢が必要だとも言われています。その気品を保つには、高度な調和への感覚が必要なのです。

 でも、このバイオリンソナタ一番だけは、若さだけで演奏できる一品だと思います。思いっきり若さをぶつけての演奏が、この曲の生命をひきだします。

 森の木々が、その先の衰えもいとわず、生命力を走り抜いていくように、春を謳歌し、生命を爆発させていくようなみなぎる力が、この曲にはあります。

人にとって人生の春とはいつなのでしょうか。自分の中の命をもやしつくす時、それを人生の春と呼ぶのでしょうか。

しかし、不思議なものです。美の生命は、もやせばもやすほど、新しい力が生み出されていきます。高雅な音の美を追究した、フォーレの生涯のように。

息せき切ったようなピアノの序奏から始まり、バイオリンが最初から若さの歌を、とうとうと唄います。森の春が一挙にやって来るようです。

フォーレはピアノの名手でした。彼のソナタは、どれもピアノが単純な伴奏に終わる事はありません。木々と大地が語り合うように、バイオリンとの対話を最後まで続けます。


 1楽章の最初のフレーズは、春の風のようです。春の風は、時に強く木々をゆらします。そして、ふと曲が静かになる時は、風の休んだ春の野のようにやさしい瞬間です。主旋律は何度も変奏されながら、静けさの時と、いのちの燃焼の時とを繰り返します。

 聴き終わった時、その若々しさと、そして、過ぎていくものへの切ない感情を共有できたら、少しだけ、この偉大な音楽家の世界の入口に立った事になるのでしょうか。

春の生命に例えて曲を紹介しましたが、もちろん紹介者の私的な感覚です。フォーレの音楽は、何かを象徴するのではなく、何よりも美そのものである種類の音楽である事を付け加えておきます。

フォーレの曲を味わうには、「資格」がいると言う人がいます。正しく音を聞き分ける、音楽的な訓練と、文学や絵画などの広範な教養と、そして美を人生の目的とする高雅な精神。少し入口は狭いかも知れませんが、やさしい、美しい魂に触れる音楽なのです。

 そのような高雅な精神の世界も、また紹介しようと考えています。今日は、フォーレの曲で、春と若さを感じられる一曲を、季節にあわせて聴いてください。

 春です。自分の中に潜む、みずみずしい「いのち」をひきだしてみませんか。フォーレは「いのち」と美が連れ立って歩く世界を教えてくれます。

【お知らせ】

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      今日はここまで ではまた。
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【編集長より】 

 なんだか、メインのマックが不調です。ノートンユーティリティでスキャンさせたら、カタログツリーの不備がぞろぞろあって・・・・そろそろ再インストールしないと。

アドビの creative suite もなんだかショートカットキーがおかしいぞ・・・appleworks も相変わらず、のろいぞ〜・・・

マックユーザーしか分からない話で申し訳ありません。

ウィンドウズの方は、ウィルスがおっかなくて、LANからはずしたままです。セキュリティのパッチが発表されているけど、Win のみなさん無事ですか ?

参加しているいくつかのメーリングリストがウィルスに大感染したらしく、ウィルスメールが、いくつもの関門をくぐり抜けてきます。困ったものだ。

ミクロコスモスは、一応プロバイダーでも、送信時にもチェックされているのですが。

やっぱり、将来に向けてユニックス系をもう少し勉強しておいた方が良さそうです。
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ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部
   編集長  森谷 昭一   

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