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 ミクロコスモス切断面の響2004年4月14日詩作研究「ここに」
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   詩作研究室 「ここに」
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   ここに


 ここに帰ってこよう
 こうして一人
 自分だけ、
 私の世界。

  ここから出ていこう
  私を確かにして
  でも、今は
  ここ。


 窓らか差し込む太陽の光
 世界を巡ってきたこの空気
 この体、きっと自分のものではない
 ヒヨドリの声が聞こえてくる。

  自分はひとりじゃない
  それは確かな事
   だから、思いっきり
   ひとりになれる。

 私を迎える人も、もういらない、
   理解される事も、もういらない。

  誰かを理解しなくて良い、
   誰も迎える事もいらない。

 ここは、ここ
 私が、私を分かっていて
 世界は、きちんとここにある
 だから、それで良い。

 ああ、明日はあたたかそう、
 梨の花、見に行こう。
 
 
            梨花

【鑑賞1】 

 そうですよね。単純にそう思います。ひとりだけの場所、一人だけになれる事、自分の部屋。必要ですね。

「こもる」なんて言い方しますけど、「自分でいる」って言い換えて欲しいですよね。ひとりでいられるから、出て行ける。

自分があるから、みんなになれる。単純に大賛成です。私も、明日は海を見に行く事にします。

【鑑賞2】

 「理解される事より、理解する事を。」
 「愛されるより、愛する事を。」

という言葉もありますが、この詩は、それよりもっと高い心を見つけているかもしれません。人との関係で、自分を考えている時、それは苦しみや悩みとなります。

自分と自分の関係で、自分を考える時、確かなものをみつけます。そして、自分と「ものの世界」との関係で、自分を考える時、人は自由で、広い心に到達するのです。

 作者は、それを少しずつ見つけはじめています。作者の部屋は、ちゃんと光が差し込みます。空気が世界を回ってきたと、ちゃんと気づいています。

 「自分に気づく事は、世界に気づくこと。」それが分かれば、もう他に何もいらないはずです。

帰る自分のある人・・きっと強い、確かなな人でしょう。

【鑑賞 3 】

 世界に背を向けてしまう人。小さな世界に閉じこもってしまう人。そんな人達を見ていると、弱い魂ではなく、「美しき魂」である事を感じる時があります。

 「自分の事だけ、考えるな。」「人間は、一人で生きられる筈ないだろう。」そんな言葉で、人を外に連れ出そうとしても、美しい魂は、外に出てきません。

「そういう、あたなたちの世界に出て行きたくないんだ。」・・・本当は、そう言いたいのでしょうが、それすら心の清らかさから言えない魂に、「外からの言葉」は翻訳不可能です。

詩のように、美しき魂は、やがて花や空気を味方にして、確かな言葉を身につけて、やがて、「外の世界」さえ、取り込んでしまう大きな世界を広げてくれるはずです。

大地に花を育てておきたいですね。そして、自分が花になれるように、魂を磨いていたいものです。


【編集部より】

 ミクロコスモスのアンソロジー「水滴集」の選定基準は、「ミクロコスモス」です。大きな世界と小さな世界が、交錯する一瞬を捉えている作品が選ばれます。

ミクロコスモスを通り抜けていかない限り、新しい世界は開けません。それなしに、どんな難問も解決しないのです。ミクロコスモスの意味、色々な作品から、だんだんと感じていただけると幸いです。

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      今日はここまで ではまた。
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【編集長の御近所情報】

 月曜日は、良い天気でした。編集長は天気が良いと、樹木の勉強と、花の撮影取材に出かけています。誰もいない公園や畑は、気持ちがいいです。クヌギの花が風にゆられて、森を飾っています。

今日の原稿を見ていて、梨の花を思い出しました。山の中腹にある公園に咲いているのを見つけました。見事です。桜もいいけど、梨もすごいです。コブシ、桜、桃、梨・・・花のリレーがしばらく続きます。

 若々しい木々の芽生えをみつめる事が出来るのはとても幸せです。小田原の山は、シャガの花にどこも被われています。木の陰に、白く光るシャガはとても健やかです。今度、写真取材したものをお届けします。
  
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ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部
   編集長  森谷 昭一   

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