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ミクロコスモス総合版2003年2月16日なと氏古典「禅問答1」
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                 発行 ミクロコスモス編集部

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   なとさんの古典解釈講座「禅問答1」
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【なと氏】

これからしばらく、禅問答を解釈する。中国宋代の禅僧が編集した、公案集だ。まあ、悟りのための問題集といったとこかな。いきなり古典でやると、珍聞漢文だろうから、初回は現代訳から。さて、ふたりとも次のを、意味をとって意訳してごらん。

────現代訳 無門関 第七則────────

【現代訳】

 入門したての僧が、趙州和尚に尋ねた。
 「私は、修行に入ったばかりの者です。どうか、仏教の根本を教えてください。」
 「朝の食事は、終わったのか。まだか。」
 「はい、食べ終わりました。」
 「それならば、自分の茶碗を洗いなさい。」


【よもぎちゃん】

 はい、翻訳しますう〜。母子編です。


  としお君はおかあさんに聞いた。

  としお  「ぼく、どしたら良い子になれる?」
  お母さん 「部屋のかたづけしたの?」
  としお  「うん、終わったよ。」
  お母さん 「じゃ、台所掃除も手伝うのよ。」


【編集長】

同じく翻訳しますう。 師弟編です。


  生徒 「どうしたら、数学で一番になれるんですか」
  先生 「宿題やった?」
  生徒 「うん、やったよ。で?」
  先生 「じゃ、次の宿題がこれ。」


【なと氏】

 まあ、ふたりともよい線にたっしてる。理屈よりも実践、抽象よりも具体的、理想よりも眼前の現実、という事かな。偉大な人物は、弟子にいつも具体的で現実的な解答を即座にするもんだ。

【よもぎちゃん】

なとさん、質問です。古典を見事に解釈する達人になるにはどうしたら良いのでか〜。」

【なとさん】

その、語尾を伸ばすのをやめなさい。

【よもぎちゃん】

   ・・・・・・・

【なとさん】
では、次にいく。次は「趙州録」より。意訳してごらん。

────────趙州録────────────────

厳陽善信が、まだ修行中のこと。趙州に訊ねた。

 「私は、今、一切を捨てつくして何も持っていません。
  さあ、私は、どうするべきでしょうか。」
 「放下著(捨ててしまえ)」
 「捨ててしまえといわれても、もう何も持っていないのです。何を捨てるのですか」
 「その、すてるべき何もないというこころを捨てるのだ。」
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【編集長】

監督と作業員編です。ちょいと長いですよ。工事現場の現場事務所の会話です。工事は終わってます。

監督   「おい、この事務所かたづけておけ。」
作業員  「机も、ロッカーも片づけて、掃除も終えました。」
監督   「事務所を片づけるんだ。」
作業員  「片づけ終わったじゃないですか。」
監督   「でなくて、事務所そのもの、建物を片づけるんだ。」

【なと氏】

はずれていないけど、なんだか分かりにくいな。短くて、きっぱりした文章にしなさい。まあ、心という心の入れ物そのものを捨てる必要があると言う事は分かっているようだな。

【よもぎちゃん】

師弟編だ。・・・短いぞ。

先生  騒がしい、授業中はしゃべるな。
生徒 「はい、しゃべりません。」
先生 「それが騒がしい。」

【なと氏】
だから、ふつうの喋り方はできないのか。しかし、よもぎ君のかっての様子そのものだな。まあ、言明とメタ言明の関係に、多少はせまっているので良しとしよう。でも、ふたりとも、まだ甘いな。もっと深遠な意味があるのだ。

【編集長】

まだあるんですか。今日のは簡単なのばかりだとおもったけど。

【なと氏】

いいか、ここに「何でもとかしてしまう液体」があったとする。ビンにいれたら、ビンが融けてしまう。さあて、どうやって保存したら良いか。分かるかな。

【よもぎ + 編集長】

 ? ? ?

【なと氏】

無重力状態で浮かしておけば良いのだ。液体は、球形になる。つまり、無はなんでも支えられるのだ。

【編集長】

 でも、空気は周りに必要でしょ。真空中だと、液体は拡散してしまう。

【なと氏】

まあ、そこらへんは確かに。・・・・

【よもぎちやん】

??「何もない」が無くなったら、何も無いが、無い・・??

【なと氏】 では、宿題をひとつ。よく考えて意訳すべし。
───────宿題─────────────────
ある僧が和尚に尋ねた。

 「達磨大師は、何の目的でわが国にきたのでしょう。」
 「庭先にある、柏の木だ」
 「和尚、たとえはやめてください。」
 「私は、たとえなどで答えていない」
 「達磨は、なぜわが国に来たのですか。」
 「庭先にある柏の木だ」

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      今日はここまで ではまた。
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【編集長の一言】

なかなか表にでかけられません。せっかく天気が良いのに。梅の季節には梅を求め、雪の季節にには雪を眺め、そんな季節を追いかける暮らしをしてみたいですね。

一年間、その事だけの時間を持たないとだめかな。生涯に一年間だけ、何も仕事せず、遠くにも旅行はしないで、近くの季節を追いかける暮らしをしたいものですね。まあ、無理でしょうね。

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ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部
   編集長  森谷 昭一  
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