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ミクロコスモス総合版2003年1月31日1月おしまいの御挨拶
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発行 ミクロコスモス編集部
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一月、おしまいの御挨拶。
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一番寒い季節です。さすが、海の側の当地でも、朝には霜柱ができたようです。やっと零下になりました。少し前に東京にも雪がつもりましたが、ここでは雨でした。
しかし雨の上がった朝、箱根方面の山をみると木々が真っ白になっていました。自転車でもいけそうな近さですか、そこはもう雪の世界です。
雪と雨の境目は、実に僅かな距離です。スキー場で山上から滑降してくると、粉雪が粗目雪に、さらにみぞれに、そして雨に変わります。そんな連続した気象をくぐり抜けてきます。わずか10分ほどの間に肌で感じ取る体験ができます。そんなわずかな温度差で、氷の世界から水の世界に変わっていくのです。
地球の中心部は6370度。オーロラの光る200キロ上空は600度。オゾン層のあたりは、マイナス100度。それぞれの温度で、特有の出来事がおこります。でも、それらは、ことのほか単調で変化の少ない世界です。
しかし、水が氷る温度の前後30度ほどの世界では、実に多様な変化がおこります。水が氷に変わり、そして、水蒸気に変わり、そしてまた水に戻る。この変化が地球の風景を、こんなにも多様で美しいものにしてきました。
霜柱たちは、冬の日々、せっせと岩を砕き、固い土地を耕し、ゆたかな自然の畑を造成してきました。土壌生成と呼ばれます。昼夜の温度差が地面を耕して、豊かな植物を育みます。
わずかな温度の変化で、水は雪晶から、氷河、流氷、さらに大河の流れから、雲の表情まで、見事な舞台衣装を地球という舞台で着替えてくれます。地球の風景の美しさは、温度変化による水の相転移が刻んだ彫刻です。多様な生命が育てられて来たのも、この微妙な変化あっての事です。
雪や氷を研究すると、わずかな温度差により、水は実に偉大な変化をみせてくれる事に驚きます。雪の結晶の美しさは格別です。
もうすぐ、一番寒い日を迎えます。寒さには厳しさ共に純粋さと完全さをも感じます。雪のかなたに、氷の向こうに、北の果てに、厳しさを超えて、人は何か憧れを感じるのはどうしてでしょう。人は冷たさに厳しさと恐れを感じるとともに、完全さへの憧れも持つのです。
冷たさと、暖かさの繰り返しが霜柱となり大地を耕すように、暖かさ、冷たさの両方の人間性があって、人はより豊かに他を育める存在になれるのではないでしょうか。
寒さと氷に象徴されるような、冷静さ、完全さ、冷徹さ、透明さも、人間性のひとつです。冷たい事が非人間的な事の代名詞のように言うのは、まだ世界の広大さを知らないからなのでしょう。
ひとりの人間に共存する暖かさと冷徹さ、それも人間性のひとつの温度差です。宇宙の広大な温度差の中では僅かな温度差でしょう。 宇宙の冷たさの向こうにも、人の冷たさの向こうも、何かがあるようです。
寒さの季節です。冷たさをみつめていきたいものです。
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今日はここまで ではまた。
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ミクロコスモス出版 ミクロコスモス編集部
編集長 森谷 昭一
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