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  ミクロコスモス総合版2003年1月27日文章を書くために 1
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              発行 ミクロコスモス編集部

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     文章を書くために 1
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【編集部より】

複数の読者の方から、

「良い文章を書くには、どうしたら良いか。」

「私も、文章を書いて作品らしきものを作りたいが、どんふうに始めたら良いか?」

といった御質問をいただきました。こちらこそ、教えていただきたいのですが、少しでもお役にたてる方策を考えました。

そして、各執筆者に

 「文章を書くにはどうしたら良いか。」
 「物書き入門にはどんな事から始めたら良いか。」
 「今まで、文章に関してどんな学習や修行をしたか。」

などをテーマにして、書くようにお願いしました。集まり次第、順次掲載させていただきます。本日は二人分を紹介します。


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  執筆者 A 書く前に名文を暗記しよう
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 たんさん本を読んだら、名文が書けるかどうか。 多分、批判力ばかりついて、ちっとも書けないと思う。それよりも、少数で良いから名作を暗記して、いつでもすらすら言えるようにしておく方が良い。

暗記するのは、詩でも論説文でも、随筆でも何でも良い。選ぶ基準は、まず自分が好きであること事、次に、読んでいて気持ちが良い事、つまりリズムや流れを感じられる文であることなどである。

古典から選んで良いし、好きな流行作家の断片でも良い。実用的な文、例えば法律の文でも、自然科学の論文でも良い。そういうものを、完全に暗記して、いつでもすらすら取り出せるまでにしておく。

それらが体内に貯えられ、やがてそれが「文章発生装置」になっていく。少しでも良いから、自分の中で響いている言葉があれば、そこから文章は生まれる。

 なぜか。ひとつには文章を書くための基本能力は「暗記力」だからだ。画家が風景を描く時に、画像を多少でも脳内に記憶出来なければ、スケッチが出来ない。風景を見てから、キャンバスを見た時点で、もう忘れていたら、永遠に絵は描けない。

スケッチ力は、映像の短気記憶力による所が大きい。文章も、同じで記憶が在る程度持続しかないと、長い文章を書くことができない。文章が書けないのは、大抵記憶力が足りないからだ。

主語と述語が対応しない、いわゆる「ねじれ文」を書いてしまうのは、主語から述語まで意識が進む間に記憶が保てず、意識が変化してしまうからだ。意識を持続できる記憶力を鍛えるには、長い文章の暗記が一番効果的だ。少し長い文章を暗記すると、即効的に文が書けるようになる。

 もうひとつの理由は、文章を書くと言うのは、世界をある大きさで切り取る事だからだ。文章化されていない世界というのは、畑一面に切れ目のない巨大芋づるのようなもので、掘り出す事ができない。

それを、切って、蔓をすてると芋という文章が取り出せる。・・例が悪いかもしれないが、文章を書くとはそう言うものだ。

切りすぎると、芋も傷つくから、適当な大きさに切る必要がある。その切り取る時のスケールになるのが、暗記された名文のリズムと流れなのだ。

名文を読んでいる時は、リズムで身体が動いて、つられて心もうごく。その息づかいで、書き手は世界を切り取るようになる。

あとは、自然に文章は、身体の中から生まれてくる。書けなくなったら、暗記した文を調子が出るまで、順番に体内から取り出して、口ずさんでいけば良い。毎朝、繰り返せば、脳の健康にも良い。

文章書き入門として、良い見本を暗記する事から始めてはどうだろうか。

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 執筆者 B 文章で、風景スケッチをしてみよう。
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 絵を描く人は、デッサンとか、クロッキーとかやりますね。ピカソは、絵があの通りだから、スケッチも出来ないと思ったら大間違いです。ピカソでもミロでも、高度の写実的なスケッチの力をもっています。何事もスケッチは基本ですね。

 文章も、スケッチからはじめてください。眼の前の、部屋の様子でも、窓の外の風景でも、リンゴ一個でも良いから、文章でそれを表現してください。

 私は椅子に座り、机に腕をのせている。机は、木製で、両側に引き出しがついている。右の引き出しには・・・・

のような写生文から始めれば良いです。名前の分からないものがあったら調べてください。長さが分からなければ実際に測ってください。

そして美しいとか、好きとか、嫌いとか、主観は不必要です。あくまでも、書いた文章を他人が読んで、事物を再現できるような客観的文章をかいてください。

そういう挑戦をすると、いつも見慣れた世界なのに、そこにある物体の名前をいかに知らないかに気がつくでしょう。文章が書けないのは、それらが不足しているからです。図鑑や辞典を使い、丹念に目の前の風景を文章スケッチして正確な単語を増やしてください。

もちろん、自然科学系の文章執筆には不可欠の訓練ですが、感情あふれた人間心理を描く時にも、同じように力となります。

こういう訓練をして、人間は始めて動物でなく、人間になれるのです。心を表現しろとか言いますが、心の中の叫びだけを書くのでは動物の鳴き声と同じです。

何か写真とか、絵画でも構いません。同じ写真を、同時に複数の人が文章化すると、面白い事が分かります。客観的に書くほど、主観的になるんです。この逆も真理です。

余計な事も書きましたが、文章修行は、とにかくスケッチから。

【編集長より】

 その他、文型練習せよ、メモをもって現場に行け、パターンを使え、朗読をせよ、言葉遊びをしろ・・など、いろいろ集まりましたが、順次紹介します。

読者の中には、文章には一家言ある人も多いと思います。「私は、こうやって書く。」「こうやって練習した。」とか、一言ある方は是非、編集部までお寄せください。

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     今日はここまで ではまた。
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ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部
   編集長  森谷 昭一