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  ミクロコスモス総合版2003年1月19日今日の詩「雨」
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                 発行 ミクロコスモス編集部

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       雨
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本日は、英語のやさしい詩を紹介します。


【原詩】

The rain is rainig all around,

    It falls on field and tree,

It rains on the the umbrella here,

    And on the ships at sea.


【意訳】

  見回す限りに雨が降る。

  野にも 木にも 降る

  ここでは、傘の上に降る

  海では、船の上に降る


 イギリスの詩人スティヴンソン(stevenson,1865-94)の幼年詩園(A child's Garden of Versed)から有名な詩 雨 (The rain)です。

英米の詩を理解するには、その音調について理解する事か大切です。どこの国 の詩にも、形式をつくる基本的なルールがあります。

日本語の和歌は 五七五 七七 の音節の数による形式に、言葉をあてはめ て、形式とします。もちろん、字余りや、自由律などもありますが、基本の定 型詩があってこそ、それらも意味をもっているのです。

言葉は、その発音された音の音楽的な性質と意味が深く結びついているもので す。それを離れて、意味を理解する事は不可能です。また、言葉の美しさや活 力は、音の世界から生まれてきます。

日本語では、音節数、中国語では四声および平仄などが詩の形を規定する主な 要素ですが、英語では「強弱アクセントによるリズム」が形式の基本となりま す。

実際にこの詩で、そのリズムを見てみましょう。

強く読む 音節を 「′」、弱く読む音節を「?」で示します。

また音楽で言えば「小節」にあたる、リズムの単位を英詩では「音歩」 (foot)と言います。これを区切るために「│」を用います。

今日の詩に、これらの記号をつけると、次のようになります。英詩を詠む時の 楽譜のようなものと考えてください。

 ? ′   ?  ′   ?  ′   ? ′
The rain │ is rain │ ing all  │ around,

? ′  ? ′   ? ′
It falls│on field│ and tree,

これは、

 弱・強 │弱・強 │弱・強 │弱・強 │

というリズムにのっている事が分かるでしょう。英詩はこのようリズムを韻律 (metre)と言います。韻律には他に、
 
 強・弱 │ 強・弱 │ 強・弱 │ 強・弱

のような二拍子のものや

 強・弱・弱 │強・弱・弱 │強・弱・弱 │


のような三拍子のようなものなど、多くの種類の「格」があります。

日本語で、初心者が俳句を作る時に「指折り数えて」作ったりしますが、英詩 では、こつこつと杖を叩いたりして作るそうです。


そして、うまくリズムにのらなければ、単語の方をやりくりして、無理にでも それに合わせます。

The rain is rainning は 本来 It is raining が文法的に正しいのです が、音律に合わせるためにこのようになっているのです。

音歩がリズムの単位なら、音の単位がシラブル(syllable)です。一行目が8 シラブル、2行目が6シラブルからできています。raining が rain │  ing とふたつのシラブルに分かれていますね。単語の単位と、詩シラブルの 単位は違います。

 ? ′   ?  ′   ?  ′   ? ′
The rain │ is rain │ ing all  │ around,
1 2 3 4 5 6 7 8


? ′  ? ′   ? ′
It falls│on field│ and tree,
1 2 3 4 5 6


英語で歌に作曲する時は、このような分析をする事から始まります。また歌う 時も、楽譜の音にどのように言葉を割り当てるかは、このシラブルが基本とな ります。英語の楽譜についている歌詞は、シラブルに分けてありますね。

さて、もうひとつ英語の詩にはしかけられた、形式があります。それが脚韻や 頭韻と呼ばれる母音・子音を揃える詩の型です。 ●の所が、「イー」の音で 揃えられていますね。

また falls - field ships - sea のように頭の子音が揃えられている所 もあります。

The rain is rainig all around,

It △falls on △field and tree,●

It rains on the the umbrella here,

And on the △ships at shth △sea.●


みなさん、サウンドオブミュージックにドレミの歌と言うのがあります。名曲 中の名曲ですが、

Raing dorps ogn roses and whiskers ofn kittens,

Bright copper kettle and warm woolen mitten

Broow paper packages tid up with string
・・・

どうして、お気に入りの物が 雨粒、バラ、銅のやかん、羊毛の手袋・・なん てバラバラな品物なのか?そう思った事ありませんか。

日本語で考えたらどうにも分かりません。これは、音とリズムを絶妙に合わせ ているからです。もとの歌を聴いて、意味は分からなくても気持ちが良いの は、このような言葉の技によるのです。

日本語に訳して歌うと、どうも「変な」のはこのせいです。

  ねこに とらに とんで こい

  ここに きたら こめを やる

  ・・

みたいに、音をあわせて、かってな意味をつけた方が本来の翻訳かもしれませ ん。また、ドレミの歌は別の機会に、音律の分析と翻訳をしてみましょう。


【直訳】

はじめに紹介した日本訳は、定型詩に近づけるために、日本語での韻律を作っ ています。そのため原詩の意味からは遠くなる場合があります。詩の思想的な 解釈をするには、そのような事をせずに、原詩を直訳して理解する事も大事で す。

      雨


  雨はずっと周りに降っている

  雨は野原と木の上に降る
  
  雨はここでは、傘の上に降る

  海では船の所に降る

映画の手法で言えば、「ズームイン・ズームアウト」が使われていますね。大 きな「ひき」の映像から、「アップ」の映像に行き、最後にまた、大きな「ひ き」に戻しています。

【意味と内容】

さて、子供の頃に雨に不思議な思いをいだいた事がありませんか。大雨が降っ ているのに、電車にのっていったら、そこでは雨はまるで降っていない。

そんな事に、やけに感動した事があります。雨がふると、世界中に降るもの と、子供心には思っていたのですね。

反対に、子供の中には、雨はじょうろで水をやるように、とても小さな範囲だ けで降るものと思っている子供もいるかも知れません。

そんな子供が、高い丘に登って、海を眺めて、見渡す限りの範囲で雨が降る事 を発見して驚くかもしれません。多分、そんな子供の感動を歌ったら、こんな 詩になるのではないでしょうか。

それは、人の心に「世界」が開いていったり、また区切りができていく、素晴 らしい心の発達上の感動を示しています。

だから、この詩は、あたり前の事を歌っていますが、実は大きな世界観を歌っ た、思想詩と読む事も出来るのです。また、美しい響きをもつ音と受けとめ、 さらに広々とした大地に降る雨の情景を映像として、われわれに与えてくれま す。また、子供の時に世界を発見した思い出を蘇らせてもくれるのです。

良い詩は、響きと、映像と、思想と、思い出、をもっているものです。その意 味で、この詩は名詞のひとつでしょう。

また、韻律の勉強をしながら、英語の詩を鑑賞してみましょう。

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      今日はここまで ではまた。
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【編集長より】

前回「冬至」が来るとか言いましたが、誤りです。冬至でなくて、冬至と春分 の真ん中の日です。

年に一番寒い日です。生き物が一番眠る日でもあり、これから起き始める日で もあります。一番深い日という事になります。地方によって日にちは違うので すけど。もうすぐですね。

「寒」と言う日本語がありますが、近いですけど、ちょっと違います。
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ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部
   編集長  森谷 昭一   

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