─────────────────────────────────
ミクロコスモス大学報1月12日NDCの999冊「English DUDEN」
────────────────────────────────
                 発行 ミクロコスモス編集部

   ────────────────────────
    NDCの999冊「English DUDEN」
             NDC 833
   ────────────────────────

 「ええと、なんて言ったっけ? あの丸くて、パイとか伸ばすやつ。アメリカの漫画で、奥様がダンナを叩くのに使っているやつ?・・・」

 映像は浮かぶけど、言葉が出てこない事は多い。多分、獲得している名詞の数より、映像で脳に保存されている知識方がずっと多いのだろう。

「ほれ、ほれあれだよ、あれ・・・・」と困った時に便利なのが「図鑑」なのだ。動物図鑑、乗り物図鑑、服飾図鑑、などの専門別図鑑は多いのだが、世の中すべてのひとしきり集めた「総合図鑑」というのは意外と少ない。企画は少なくはないのだが、どうも名著と言えるものは少ない。

 その中で、古典的な「英絵辞典」が、この「ENGLISH DUDEN」である。本来ドイツ語の「図辞典」なのだが、その優秀さから英語訳がつくられ、さらに日本語訳がつけられて発行されている。それほど、国際的にも評価されている図辞典である。

図書の分類としては、ちょっと難しくて、博物学とも言えない事もないが、やはり英語の辞典として、833 言語/英語/辞書 に分類しておいた。少し問題があるかもしれない。

 このような組み方で、線画と単語が配されて、索引を別にして368項目、約350ページに渡りさまさまな専門分野の単語が微に入り、細に入り、詰め込まれている。

ちなみに、パイを伸ばす道具は「the rolling-pin 」とある。日本語の訳は後ろに別だてで付けられているが、それを参照すると「めん棒」となっている。

日本のそれは、ただの円筒の棒だから、強いて訳せば、「洋式めん棒」とか言う事になるだろうか。

読者は、眺めて、目についた一品の英単語をで感心して、そして日本語訳をみて不思議な事に気づいたりする。このように、何かと発見の出来る書物で、飽きない読み物にもなっている。

またこの書物は、人間が外界のものに注いできた情熱と、文化の重みを認識させてくれる書物でもある。

動物に接する機会の少ない現代日本人には、「シカの角」は「シカの角」で、どこの部分も区別はしないが、この書物では、the burr, brow tin,the bez tine, the trez tine,the beam・・と細かに名がつけられている。
      

狩猟民族としては、これらは必要な区別なのだろう。へら鹿の角は、「palm」となっているが、日本訳では「掌状角」となっている。日本人が「へら」と受けとめた形を、英語圏では「掌」と捉えているようだ。

見開きページがだいたい一つの専門分野を記述しているので、368の分野にわたり、図と単語が集められている事になる。

その分野からして立派な「百科全書」とも言うべきもので、原子核から始まり、核燃料、火山、電離層、惑星、星座、気象機器、国旗、人体大脳、看護、歯科医、ラジウム療法、子供服、男性用帽子、選択場、農業機械、飼料作物、養鶏場、ブドウ園、漁労、捕鯨、製粉器、食肉店、篭職人、製糸工業、レンガ工場、港湾、帆船、映画撮影、舞台装置、航空エンジン、テレビの内部、ビリヤード、中国美術、代数記号、幾何学、カトリック教会儀式、騎士道、パイプオルガン、ギリシャ神話・・・・など、見ているだけで、知られざる世界探検ができる。

映画の撮影現場など、殆どの人が入る事の出来ない世界に、気楽に立ち入る事が出来るのが嬉しい。

子供は、人生の一時期、このような書物に熱中する時代がある。世界を網羅しているようなものに、強く興味をしめすのだ。

特に多種類が並んでいる画像に興味をしめす。飛行機や電車のカードを集めたり、昆虫や石を集めたり、「ままごと道具」や「着せ替えの衣服」に熱中したりする。それは、子供が単語数を加速的に増やしていく時期と重なる。
 
 また、ある時期、ものの内部構造に興味をもつ時期もある。船の内部構 造や、人体の解剖構造、エンジンの仕組みなどに、強く興味をもつ。

そんな時に、気に入った図をみつけると、時間をかけて、書き写したりす子がいる。特に強制されるわけでなく、それが楽しいらしい。
 

 そんな子達が、やがてエンジニアになり、日本の基幹産業を支えているのだ。ただ、最近は、そのような発達段階の欲求が向かう対象が画一化されて、ロボットの画像や、恐竜ととか、マスコミや玩具産業が大量流通させる画像ばかりに、向かってしまうのは残念だ。

この書物のような、広く多様な世界を見せてくれる、書物とであって、そして世界を発見してもらえたら良いのだが。

 「一家に一冊、絵入りドーデン」とかで、これを普及させたいくらいである。なにげなくお茶の間において、いつも親が眺めて、どうこう話題にしているうちに、どこかの段階で、子供が興味を示す時期があると思う。

もちろん、お勉強して強制させるようなものでなく、まるで絵本を読み聴かせるように、「これはね、映画を撮っている所なんだ。これが、監督さんで、これが時間を計る人・・・」のような会話が、親子に交わされていけば、「自分の将来がみつからない子供」が少しは減るのではないかと思う。
       

少なくても、筆者の子供時代の例から  すれば、このような書物が、今の自分への何かの方向性をつけてくれた事は確かである。

 中学、高校の英語教育でも、この書物は有益なものではないだろうか。英語教育に絵を用いる事は広く行われているが、このようにあらゆる微細なものに、きちんと名前がついている事を教えてくれる教材も少ない。

 英語の教師は、文学部卒、または社会系卒が大部分だろう。どうしても、興味や教材が物語や歴史やせいぜい社会問題に偏る。科学や系術、日常生活、などに話題が向かない。特に、工学、産業、実業関係などは、ほとんどとりあげられない。

どんな、子供でも、何かしら好きな事はあるものである。教室でつまらなそうにしている子供が、単に教師の視野の狭さの被害者になっているとしたら、気の毒な事である。

少なくても、理系の人間が、英語に親しむようになるのは、専門書を読む時からである事は確かだ。

だから、多少、教師が分野を広げると言うような事で済ますのではなく、最初から、あらゆる分野を提供しておいて、各自で好きな入口、言葉の世界への入り口をみつけてもらったらどうだろうか。

 たとえば、この書物を各班に一冊与えて、自分の好きな分野をみつけてもらい、その絵を模写して、英語と日本語を書き込むといった授業は、どうだろう。

なにか単純作業で、つまらなそうであるが、子供達の発達のある時期に、そのような事を好む時期がある事は先に述べた。

発達段階や時期的な必要性と、教材として与える時期が一致すれば、意外な成果が上げられるのではないだろうか。

さらに、興味をもった分野についてさらに資料を集めさせて、発表させるような事を試みていけば、お互いに好きな分野を開示する作業を通じて、他者の興味の世界にも開眼していくのではないだろうか。


類似の書物はいろいろある。カラー写真やイラストを用いた、「図典」の類はいくつか日本でも出版されているし、子供と会話しながら、眺めるには良いかもしれない。

しかし、ドーデンの良さは、白黒の「線画」をもっぱら用いている事にある。写真は実物を表しているようで、意外と不正確なのである。例えば、虫の足やら節の数とか、眼の形などに興味をもっても、写真では捉えられない事が多い。

 線画というのは、単なる自然の「撮影」ではなく、高度な「解釈」および「説明」がなされているのだ。そして、類型化され、無用な雑音が削除されて、より言葉に近い記号性をもっている。子供達がかき写すには、好ましい手本だ。筆写に近い学習となる。

それに、デッサンは、油彩などにくらべて、より見るものの想像を喚起して、より作品への見る者の参加が可能なように、この書物はなんとも、想像をかきたてる存在でもある。

また、各種イラストや漫画を描いたり、各種教材を作る時など、正確な描画で、そのまま引用する訳にはいかないだろうが、実に「参考」になる材料となる。

漫画などで、飛んでいる虫の足の数やら、魚のヒレなど見ると、「笑ってしまう」ものが多いのだが、この程度の書物は揃えて、参考にして欲しいものだ。

さて、このような書物としてはなかなかの力作なのだが、しかし専門家からしたら、どうにも使えないというか、不足なものだろう。

どの専門分野で、少なくても数倍から数十倍の、物品とその名称を覚えなければ、仕事はやっていけないだろう。門外漢には、この書物の図だけでも、眼が回る程なのだが、いかにも現実・現場と言うものが多くの「名詞」溢れた世界だと言う事だ。

この辞書で、興味をもった世界があったら、それぞれの専門の図鑑に進めば良い。その時は、もう専門家としての勉強が始まる時だろう。

     

このシリーズは、図書を通じて、より広い世界に出会っていける書物を紹介するのが目的だが、絵入りドーデンは、まさにそのような書物である。

一家に一冊、絵入りドーデンとでも宣伝しておこうか。高校で、辞書を強制的に購入させられるが、多くは使わないまま、卒業時に捨てられたりする。

そこらは、電子辞書にでも任せて、全員必修で、これを持たせた方が、一生楽しめる気がするのだが、無謀な意見だろうか。

 さて、最後に、図書の専門家としての、夢を語らせてもらう事にする。図書館を通じて、広い世界に出会って、偏狭さと戦ってもらいたいと言うのが、筆者の希望なのだが、その目的にかなう夢の書物がある。

それは、この絵入りドーデンの10倍ほどの分量で、より広い分野で、さらに詳しく品目を増やして、国際的に通じる「図典」が編纂される事だ。

ドーデンはドイツ文化を中心にしているが、国際的な機関で、各国の固有事情も、組み込んで、有能な細密画家による、図を作成する。

絵は、言語を越えていると言われるが、図なら各国の言語を越えて共通の基盤とできる。

そして、それをあらゆる国の言語に翻訳して、刊行してもらいたい。そして、図書館では、それらをすべて備えるコーナーを作る。

聖書が、あらゆる国の言語に翻訳されて、アイヌ語の聖書まで、現存する。もちろん宣教の目的と情熱によるものだが、それとは別に比較言語、比較文化、の観点からも大きな価値のある仕事と言える。共通の思想を異なる言語に翻訳する過程で、文化の違いというものが、逆に浮き彫りにされて来た。

聖書を別にして、あらゆる国の言葉で表現されている共通のものは、ウィンドウズの使用説明書だと言う冗談があるが、こんなグローバル化は寂しい限りである。

ぜひ、国際的に共有できる図版を作成して、それを翻訳した書物を作ってもらいたい。そして、それを各国で、教育に用いて、親子の会話、先生と生徒の会話、日常の会話の話題にする事で、異なる文化や、広い世界に心を開いていける環境を書物の世界に作りたい。

もしこのような書物ができれば、どこに分類されるだろうか。言語一般の辞書として、803 言語/総記/辞書 となるのだろうか。できたら総記の中に、「国際共通図画」という項目を設定したいと思う。

   ───────────────────────    
      今日はここまで ではまた。
   ────────────────────────

【編集部より】

最近、添付書類のある記事ばかりで、モデムの読者の方には御迷惑をおかけしています。
今後も容量増加がみこまれます。申し訳ありません。

で、・・・・まことに言い出しにくいのですが、出来ましたら、モデムの方は、ADSLとかにしていただけると大変有り難いのですが、・・・・ええ、無理は承知で一応のお願いと言うか、御提案といいますが、できたらで、そのうちで、・結構ですので。
最近どんどんお安くなっているようで、できましたら、なんとか。・・・
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部
   編集長  森谷 昭一   

★ 編集部宛メール  公式メール 執筆者・編集部員に
           内容のみ転送の場合あり。