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ミクロコスモスいちもんめ講義録2002年12月29日ものとこころ 1 ──────────────────────────────── 発行 いちもんめ学園出版部 ──────────────────────── いちもんめ学園 講義録 ものとこころ 1 ──────────────────────── 文字だけ版 講師 も/あ 先生 さて、いきなりですが、新聞の記事を読んでみます。プリントの(記事1)を読んでください。 プリント 記事1 ゴッホやモネの眼病。ルノアールの画風、近視のせい。 ニューヨーク11日 関特派員 ルノアール 近視 、レンブラント 遠視 、ゴッホ 緑内障 、モネ 白内障 シカゴでこの程開かれたアメリカ眼科学会で、オハイオ州の眼科医ジェームズ、ラビンス博士が、絵画の巨匠が眼病を患い、それが独特の画風を作り出したとする新説を発表した。 ルノアールは近視が進んだため1一度メガネを作ったが、どうしてもなじめず、「自分の目で世の中を見る」とやめてしまった。輪郭のボーっとした画風は近視のため。 レンブラントは30歳以降遠視がひどくなっていった。現在残っている100枚以上の自画像を時代順にみていくと、初期には細部まで明白で、色彩豊かだったのに対し、年と共にぼやけてきて陰影部が黄色味を帯びてくる。これが遠視から老眼に移行して、症状が進んできた特徴。 ゴッホの自画像を詳細に点検すると片方の瞳が他方よりも大きい。そして絵の中のまわりにかさが描かれているものが目立つ。これは緑内障患者に特有の光のまわりに虹が見える特徴と一致する。モネは白内症で視力が衰え、それがかえって睡蓮のような幻想的な作品を生みだした。 [OHPによる絵画の図の提示 ルノアール レンブラント ゴッホ] さて、ここに記事にあるルノアール、レンブラント、ゴッホの絵があります。記事の内容と照らしてみてください。睡蓮の絵は確かに、側でみても絵の具の模様が見えるだけですね。でも、目をかすめてみると、綺麗な睡蓮が浮かび上がります。 画家の絵の個性の違いの原因が眼にあるという説ですが、どうですか。確かに当たっている気もしますが、どうなんでしょうか。 さて、この記事を読んで、みなさんはどう感じましたか。「とても面白い良い説だ。」と思った人と、「なんとなく、気に入らない考え方だ。」という人がいるでしょう。 物事の原因が眼という体の性質によるという、このような考えをなんとなく 好きな人を 「もの主義」 嫌いな人を 「こころ主義」 と呼ぶことにします。「もの主義」ってのは、簡単に言うと、「すべての原因は物にある」と言う考え方です。画家の画風も、個性も眼をはじめとして、その身体の性質によると言うのです。これと反対の考え方を「心主義」と言います。 さて、似た話をもうひとつ。 ある素晴らしい画家がいました。まだ若いのだけど、彼の絵をみると、世界中の多くの人が「震えるほど感動した」と言います。さて、彼の絵をみてみると、全体としてどうも青味ががっているのです。 どんな明るい題材を描いても、どうも青みががるのです。彼を絵を評論家は「それは、彼が非常に貧しく、辛い少年時代を過ごして来た事の反映である。悲しみや寂しさを青を基調にする事で表現しているのだ。」と言います。 また、別の評論家は「絵の青みは、彼の神秘的な思想における死の映像や苦悩、そして深遠な狂気を表現している。・・」とも言います。 ところが、本人にインタビューすると、「えっ、僕の絵って暗いかなあ。僕は明るい色がすきなんだけど。子供の頃、貧乏だったのは確かで、苦労する事もあったけど、友達も貧乏だけど面白いやつが多くて、毎日楽しかったよ。」と言います。 「きっと人には言えない精神的な内面があるのだ。」とか付け加える評論家も出てくるほどでした。 どうも変だと感じた、今は医者になった彼の友人が、彼を調べたら、彼は特別なタイプの「色覚異常」で、彼の目は青の波長の光だけ感度が悪くなっている事が分かったのだそうです。・・・本人は明るい色にするつもりが、どうも青っぽくなってしまったのです。 これも似たような話しですが、どうですか。どうも、こういう話は「物事をつまらなくする」気かして嫌いだと言う人もいるでしょう。心主義の考えです。 つまり、評論家の考えたように、「すべての出来事は、人間の思想や苦しみや感情という「こころ」から生まれるのだ。」と言う考え方です。こころが、画家の体を通して筆を動かし、キャンバスの上に絵の具で描くという物の世界を支配すると考えるのです。 さて、ふたつの話しましたが、ちょっとこれに対するみんなの感想を書いてもらいましょう。あなたは、この話しをきいて、どう思いましたか。もの主義、こころ主義のどちらに賛成しますか。10分ほどで手元のカードに書いてください。集めます。 (10分ほど、感想を書く時間。) さて、集まったので、ふたつだけ紹介しましょう。読んでみます。 Aさんのです。 私は、素晴らしい絵は、その人の眼のぜいだとか、考えるようにはなりたくないと思います。素晴らしい絵は、その人の感情がぶつけられたものであるので、たとえ眼の病気という事実があったとしても、私はそれを乗り越える心のほうが大切だと思う気持ちがあります。 B君のです。 あまり、深く考えずに、単純に聞いて面白いと思った。天才画家と言われる人達だけに、真実かどうかはともかくとして、何だか、こういう考え方は身近に感じる。偶然が重なったて出来た名画、そして天才画家、もしこれが真実なら、笑いが止まらないだろう。 みんなの書いたものを見てみると、もの主義4割、こころ主義が6割という所ですか。まあ、どちらが正しいという事ではないので、この話しは終わりにします。 もの主義、こころ主義という言葉を今回では覚えてください。これが、この講座のテーマです。 なお、もの主義は「物主義」、こころ主義は「心主義」ともかけますが、後でちょっと使い分けるので、ひらがなで「もの主義」「こころ主義」と書くことにしておいてください。 そして、この言葉は、この講義だけで通じる特別な言葉だと思ってください。 なお、これから色々話しをしますが、あまり信じない出ください。・・・と言うのは、間違った事を沢山教えるつもりですから。 「間違いなんか教えるな。」と言う人がいるかも知れませんが、ある正しい知識を理解するためには、少し間違った知識を身につけて、それを後で否定したり修正していった方が分かりやすい場合があるのです。 そんな訳で、時々「良く考えると、誤っている考え」も話しますから、初めから信じ込んだりしないように。そして、わざととんでもない間違いを言って、それを探してもらうのを宿題にしたりしますから、すこし間違いを見つけてやろうという気構えで聞いてください。 ミクロコスモス学園の規定どおり、50分の授業に対して、50分分の課題が出ますから、各自やってくる事。また、予習の課題もありますので、考えておいてください。さて、次回は「自由」について話しをします。 予習課題として「自由とは何か」という事を考えておいてください。特に、「人間には完全に自由があるか、ないか。」そこらを考えておくこと。 では、おしまいです。具体的な課題は今日はありません。 あ、それから「講義音声記録」「画像記録」の欲しい人は、注文ボタンを押しておいてください。15分後に資料室で指定のメディアでもらえます。家の方に転送希望した人は、夕方までには届いていると思います。ただ、ちゃんと鉛筆動かさないと、頭が良くならないからね。・・・※注 ※注 いちもんめ学園では、講義室には録音装置と、授業のビデオを自動的に撮影する装置があって、希望すると、未来のメディアに焼き付けて渡してくれます。これを家で見て、もう一度復習ができます。このサービスをするかしないか、各講師がきめますが、も/あ 先生は、このサービスを許可してます。また、遠隔地聴講も、学外参加も受けています。
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