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ミクロコスモス大学講座2002年12月28日ラテン語基礎「導入1」
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                発行 ミクロコスモス編集部

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   ミクロコスモス大学講座 ラテン語基礎 導入編1
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 ラテン語講座を始めますが、最初のうちは前座と言いますか、「ラテン語って 何?」との方もいると思いますので、いろいろラテン語そのものの紹介をしま す。

これから数回にわたり、身近に接する事の出来るラテン語をさがしてみよ うと思います。本格的な文法は、その後にしましょう。

さて、最初は映画「サウンドオブミュージック」の最初の修道院のシーンで歌 われる「朝の聖歌」です。
この前に、もうひとつグレゴリア聖歌がラテン語で歌われますが、次回紹介し ましょう。


   Morning Hymn

 Rex admirabills
 Et triumphator nobills
 Dulcedo ineffabills ineffabills
 Totus desiderabilis
 Totus desiderbills

 Alleluia. Alleluia. Alleluia. Alleluia.
 Alleluia. Alleluia.

発音をひらがなで書いてみましょう。平仮名にすると、なんだか隠れキリシタ ンの口伝えみたいですが、あれもラテン語ですね。


 れくす あどみらびりす
 えと とりうむぱとる のーびりす
 どぅるちぇど いねふぁびりす いねふぁーびりす
 とおーとぅす でーしでらびりす
 とおーとぅす でーしでらびりす

 アレルヤ、アレルヤ、アレルヤ、アレルヤ、
 アレルヤ、アレルヤ、アレルヤ、アレルヤ、

さて、どうですか。発音は簡単でしょう。ほとんどローマ字読みです。イタリ ア語と同じ系統の言葉なので、イタリア語とも似ていますね。

ただ長く伸ばす音と、そうでない音で、違いがありますから、区別のために聴 音記号がつくのですが、今の所テキストファイルなので、表示できないので、 編集部の方で、その準備が出来たら、ラテン語の表示にしたいと思います。

その他は、英語とほぼ同じ文字を使います。(w を使わないので25文字)で す。簡単ですね。

単語の品詞と意味を書き出しましょう。


Rex  【男性名詞】 君主 王家 司祭 指導者 王であるキリスト

admirabills 【形容詞】 驚くべき 賛嘆すべき 不思議な 驚嘆する

et  【接続詞】 そして ところで 同時に  および しかも 同様に すなわち 

triumphator   【男性名詞】  凱旋者 ジュピターのの添え名

nobills  【形容詞】 知り得る 著名な  高貴な 卓越した

Dulcedo 【女性名詞】 甘いこと 美味 好ましいこと 喜び 楽しみ

ineffabills 【形容詞】 言いにくい 口に出しにくい 言葉にならない 

Totus  【形容詞】 全くの 全体の すべての

desiderabilis  【形容詞】  願うことの出来る 願望の 忘れられない

単語を見てどう思われましたか。英語を学んだ人なら、そんなにとんでもなく 違う言葉とは思われないでしょう。

nobills = noble
Totus = total
admirabills = admilabe

と何となく似てますね。これが、サンスクリットとか、ヘブライ語とか、アイ ヌ語とかだと、何の手がかりもなくて大変ですが、 ラテン語はそれらに比べたら楽です。さて、初めのうちなので原語と読みと単 語をならべてみます。なれたら、やりませんから各自ノートをつくって、こう いう風にしてください。


Rex        admirabills
れくす       あどみらびりす
王であるキリスト  賛嘆すべき


Et     triumphator    nobills
えと    とりうむぱとる   のーびりす
そして   凱旋者      高貴な


Dulcedo     ineffabills    ineffabills
どぅるちぇど   いねふぁびりす    いねふぁーびりす
喜び      言葉にならない   言葉にならない

Totus    desiderabilis
とおーとぅす   でーしでらびりす
全体の     願うことの出来る


Totus    desiderabilis
とおーとぅす   でーしでらびりす
全体の     願うことの出来る

今これを見て気づいた事はありますか。良く語順を見てください。高貴な凱旋 者は英語なら

a  noble     triumphant
   形容詞    名詞

で、形容詞・名詞 の順ですが、ラテン語では

   triumphator   nobills
    名詞     形容詞

と逆になってますね。実は、ラテン語は「語順は基本的にどうでも良い」のです。

   nobills   triumphator   
   形容詞    名詞

と書いても間違いにはなりません。実は、ラテン語は「各変化」で、どの単語 が、どの単語に結びつくか決めていくのです。英語のように語順はあまり意味 をもたされていないのです。簡単ですね。ただ、その分、文法はやっかいです。

それからもうひとつ、単語の所で名詞を男性名詞と女性名詞とふりましたが、 ラテン語は「男性」「中性」「女性」名詞の区別があります。フランス語など と同じですね。これもやっかいです。

さて全訳を掲げます。まず直訳です。

   賛嘆すべき 王(であるキリスト)

   そして、高貴な凱旋者

   言葉に表せない喜び(甘味)

   全体の 願うことの出来る

映画の解説にある対訳は次のようになっていました。

   賞むべき王

   気高き支配者

   言葉にあらわせない
 
   言葉であわせらるる美しさ

   全き存在であらせらるるもの

原文と比べると、ちょいと違う気もしますね。すべての翻訳というのは、原語 をみてみると、どうも「違うな〜。」と感じる事が多いですね。原語で味わう のは、大切な事です。

  解説忘れましたが、アレルヤ と言うのは、ラテン語ではありません。 haleluiah と言う「ヘブライ語」です。「主を誉め称えよ」という意味で、こ れはラテン語にも訳されず、ヘブライ語のまま使われているのです。アーメン と言うのもヘブライ語ですね。

さて、最初の歌に戻りましょう。サウンドオブミュージックの主人公マリアの 修道院はカトリックの施設ですから、聖歌はラテン語が基本です。映画を見て いても、綺麗な歌だと思っても歌詞の言葉とか意味まで、鑑賞してない人が大 部分だと思いますが、意外とラテン語と言うのは、色々な場面に登場するので す。

ラテン語は、発音の所で説明したように読み方は単純で、またイタリア語に似 て、母音がはっきりしていますから、長々と続けて歌うには適した原語なので す。だから、たくさんの歌がラテン語で作られました。ラテン語が分かるよう になると、こんな歌の数々が楽しく聴けるようになります。

さて、ラテン語ってどんな言葉か? 日本でラテン語を学ぶ人と言えば次のよ うな人でしょう。

  1 カトリック関係者

 カトリックでは、聖書はウルガタと呼ばれるラテン語聖書が公式のもので す。聖歌や典礼などは、基本的にラテン語で行われます。まあ、最近はは各国 の言葉が用いられる方か多くはなっていますが。

世界を又にかけるカトリックですから、バチカンに世界各国の神父さん達が公 務でやつてきて会議をしたりします。その時にいちいち通訳してたらたまらな いので、みんなラテン語で会話するわけです。

公式文書もラテン語と言うことになります。ラテン語は、今は民衆の生活語と しては消滅していますから、世界の誰にとっても外国語になるので、文句言え ないのです。もっともイタリア語に一番近いですから、イタリア人は楽ですが ね。

日本で、ラテン語の講座があるのは、私学では大抵カトリック系の大学です。


   2 音楽関係者

 1のカトリック関係者とだぶる面ももありますが、音楽、特に宗教音楽を研 究したり、演奏したりする人達は、ラテン語を学んでいます。中世音楽は、し られざる音楽の宝庫ですが、ラテン語なしに、この宝庫を開く事はできませ ん。

  3 植物、動物 の分類学者。

 動物・植物に「学名」がついてますね。あれは、ラテン語です。まあ、西洋 の植物学の基礎は、カトリックの神父さん達が発展させました。昔の坊さん達 は、医学のために薬草の知識が必須てしたから、植物の研究はラテン語で行わ れました。

その伝統で、学名は今でもラテン語です。そして、新種を発見したら、その形 態とか分布などをラテン語で記述した論文にして発表しないと、新種と認めら れないのです。まあ、今でも分類やる人とか、薬草、薬物やる学者はラテン語 をある程度勉強する必要があります。

ただ、みんな文法に詳しくないので、女性名詞・男性名詞を適当に書いてしま い、発見者の名前を女性型にして、奥さんが発見者になってしまっているなん てのもあるそうです。

  4 ラテン文学をやる人

 キリスト教関係ばかりでなく、ラテン語によるラテン文学は広大な書物がありま す。代表格は「キケロ」などです。ラテン文学は、先にいって詳しくお話す る事にしましょう。


  5 中世・ルネッサンス哲学をやる人

 中世から近代にいたるまで、ヨーロッパの学問の言葉はラテン語でした。だ から、中世の哲学、特にスコラ哲学や教父哲学とよばれる思想を学ぶにはラテ ン語が必修です。これも、また別詳しくやりましょう。

まあ実利的にラテン語が必要な人を言うと、上記のようなものですが、「教養と してのラテン語」と言う世界があります。日本では、「教養としての漢文」を 今でも、学校で学ばされていますが、ヨーロッパのいわゆる受験校みたいな所 では、今でも必修科目の所が多いようです。

日本でも、漢文を無理やりやらされて、嫌になった理科系人間なんか多い ですか、ヨーロッパでの人達のラテン語に対する感覚は、日本での漢文に対す る感覚に似ているでしょうか。どうも無理やりやらされた、面倒な勉強という 感覚です。

でも、古文漢文の知識が日本文化を理解する上で大切なように、ヨーロッパ文 化を学ぶ上で、良い基本教養になります。英語もその他のヨーロッパの言葉に は、ラテン語からの言葉が大量に含まれています。

日本語も、大半は漢文、つまり中国語から来ているように、英語もフランス語 もみんな学問的なな単語の語源はラテン語です。ラテン語を学ぶと「ああ〜。 そうだったのか」とうなづける場面が良くあります。

さあて、初回の講義はここまで。サウンドオブミュージックのサウンドトラッ クから曲を、文字を読みながら何度も聞いて、 できたら覚えてしまってください。

では、次回もサウンドオブミュージックからで、グレゴリア聖歌の方を勉強し てみましょう。

では、vale

(ラテン語で「さようなら」(汝すこやかなれ)です。

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      今日はここまで   良く復習してください。
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【お知らせ】 本日なし。
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ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部
   編集長  森谷 昭一   

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