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 ミクロコスモス2002年12月12日コン講座「アウトラインプロセッサー」
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                発行 ミクロコスモス編集部

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  コンピューター中級講座 アウトラインプロセッサーの勧め
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 アウトラインとは『階層性』をもった情報を扱うソフトである。階層性とは、例えばこんなものだ。

【例1 地理区分の階層性】

■地方 □県  ▲市  △区  ○町名
───┴───┴───┴───┴────
■東北
    □青森
    □秋田
    □宮城
       ▲仙台市
           △青葉区
               ○名掛町
    □岩手
■関東
    □茨城
    □群馬
    □栃木
    □千葉
    □東京
           △千代田区
               ○西神田
               ○内幸町
           △港区
           △渋谷区
    □神奈川
        ▲横浜市
           △港北区
           △戸塚区
              ○名瀬町  
              ○戸塚町
           △港南区
           △旭区
              ○三ツ境        
        ▲川崎市
           △中原区  
           △川崎区
           △中原区
        ▲相模原市
              ○下溝
              ○上溝 
        ▲小田原市 
              ○本町
              ○浜町
■東海
    □静岡 


地方の中に県があって、県の中に市町村があって、市の中に区があり、区の中に町があり・・。このように「○の中に△がある」という関係が階層性だった。階層性を分かりやすく表示する様々な方法があるが、上のように「字下げ」あるいは「ラベル」(上の例では■、□、▲、△、○)を使う方法の他、様々ある。

さて、日本全国を網羅するこのような資料があったとすると、膨大で見にくい。縮尺の違う地図を交互に用いるように、階層性を「ズームイン」あるいは「ズームアウト」したいと思うだろう。階層性を「折り畳む」操作である。こんな風にしたい


【例2 折りたたみの例】

■東北
    □青森
    □秋田
    □宮城
    □岩手
■関東
    □茨城
    □群馬
    □栃木
    □千葉
    □東京
    □神奈川

■東海
    □静岡 


さらに一番大きな階層に「たたんで」しまう事もできる。(ランク1に『縮小』等と言う)


【例3 さらに折りたたみの例】


■東北
■関東
■東海

あるいは次のように部分的に展開できたら便利である。(部分拡大すると言う) 


【例4 さらに折りたたみの例】

■東北
■関東
    □神奈川
        ▲横浜市
           △港北区
           △戸塚区
              ○名瀬町  
              ○戸塚町
■東海

さらに、このような階層性をもった構造のまま、入れ替えできれば便利だろう。

【例4 階層を保ったまま入れ替える例】


 『入れ替え前』

    □神奈川
        ▲横浜市
           △港北区
           △戸塚区
              ○名瀬町  
              ○戸塚町
           △港南区
           △旭区
              ○三ツ境        
        ▲川崎市
           △中原区  
           △川崎区
           △中原区
        ▲相模原市
              ○下溝
              ○上溝 
        ▲小田原市 
 

 『入れ替え後』

    □神奈川
               
        ▲川崎市
           △中原区  
           △川崎区
           △中原区
        ▲横浜市
           △港北区
           △戸塚区
              ○名瀬町  
              ○戸塚町
           △港南区
           △旭区
              ○三ツ境 
        ▲相模原市
              ○下溝
              ○上溝 
        ▲小田原市 
 

横浜と川崎を下位階層ごと入れ替えている。これをマウスの操作だけで、一挙にできたら便利だろう。このような操作がアウトラインの操作となる。


 アウトラインの利用例   分類をつくる

さて、これを用いて何をするのか。きわめて広い分野使える道具なのだ。一番分かりやすいのが、『物事の分類体系を作る時』である。いわゆる「カテゴリー構成」だ。たとえば、人間の『楽しみ』には、どんなものがあるか、分類して「趣味の検索サイト」を作ろうなんて考えたとする。動詞ごとに大分類を開始して、次のような分類したする。

(『人間にはどれだけの楽しみがあるか』というテーマでミクロコスモス編集部は『ミクロコスモス分類』なるものを研究中です。その、さわりの部分です。)


【例5 分類に利用する例】

■ 食べる
   □ 和食
      △寿司 
      △そば
      △懐石
      △郷土料理
   □ フランス料理
   □ 中国料理     
■ 見る
   □演劇
   □舞踏
   □映画
   □自然
      △花   
      △紅葉 
      △
■ 聞く
   □音楽
      △クラシック
         ○管弦楽
         ○室内楽
      △民族音楽
         ○
      △ポップス
   □話芸
      △
■ 集める
   □骨董
      △陶器
      △民具     
   □玩具
      △ブリキ
      △ぬいぐるみ
      △モデル


 【アウトラインの利用例  アイデアをまとめて文章にする】

「日本の未来を開拓するには」なんて論文を書けとか言われたとする。頭に浮かぶ考えの断片はこんなものであろう。

 日本の未来・・・??・・まずは現在の問題を分析しないと・・・殺人事件の増加・・青少年犯罪・・それは・・夢の欠如から?・・例はええと(?)・・・希望の芽だってある・・女性の進出して元気だし・・日本のアニメは評価されてるし・・天文学・物理学・・これは日本の数学の教育のせいかな・・・でも、指導層のモラルは低下して・・制度疲弊かな・・これからの行動としては 守るべきもの と 育てて伸ばすべきもの と 打破すべきもの に分けて結論を書くかな・・ボランティア活動の拡大の例とかも大切かな・・市民層の活動は・・・


頭の中思いつきは、こんな「ごたまぜ状態」であるのが普通だ。ノートに走り書きしたり、エディターに打ち込んだりしても、どうも文章にはならない。いきなり書き始めるには、大きすぎるテーマだからだ。

そこで、上のような文を、「箇条書き」にする。

 日本の未来
 現在の問題を分析 
 殺人事件の増加
 青少年犯罪
 夢の欠如
 希望の芽
 女性の進出
 日本のアニメ
 育てて伸ばすべきもの 


これらにまず、上下をつけて、書き出しをずらす


 日本の未来
  現在の問題を分析 
       殺人事件の増加
       青少年犯罪
     夢の欠如
 希望の芽
      女性の進出
      日本のアニメ
 育てて伸ばすべきも

次に並べ替えたり、記号を追加したりして、最終的に次のようにする。


【例6 論文構成に利用する例】

■ 現在日本の問題

    □ 心の問題
        △モラルの低下
            ○青少年のモラル
            ○指導層のモラル
        △犯罪の増加
            ○殺人事件の増加
            ○青少年犯罪
        △夢の欠如
            ○希望の描けない例(?)
    □ 制度の問題
        △制度疲弊
        △指導層の活力 
    
■ 希望の芽
    □ 最近の出来事から
        △市民層の活躍
            ○ ボランティア活動の拡大
            ○ 市民団体の拡大
        △女性の進出と元気
            ○各分野への女性進出
            ○
        △芸術分野の希望
            ○日本映画
            ○日本のアニメ
            ○日本の天文学・物理学
    □ 日本ならの伝統
        △職人芸
        △数学の能力
        △自然への感心
■ これからの行動
    □ 打破すべきもの
        △疲弊した指導層
        △
    □ 守るべきもの
        △市民層の活動
        △伝統の中の協力体制
        △基本的な学習体制
    □ 育てて伸ばすべきもの
        △省みられなかったもの
 
   
このように発想の部品に「大小」をつけて、並べ替えをして、さらに削除や挿入を続けて、論文の「外形の線」つまり「アウトライン」をつけていくのが、アウトラインプロセッサーの役割だ。論文とは、本来このような作業の末に構成されて行くものだ。読みやすい文は、このような作業を念入りに行っているものだ。

 【各種アウトラインプロセッサーの紹介】

アウトラインを扱う機能として、ワープロに付属しているものと、専用のソフトの二種がある。アウトライン専用にも、主としてアイデアをまとめて、文章を構築していくためのものと、目次機能を主体にしたものがある。☆はお勧め度。☆五つが最高。

『ワープロソフトに付属のアウトライン機能』

  ● ワード  →アウトライン   ☆☆☆

  ● 一太郎  → ランク     ☆☆

  ● クラリス → アウトライン  ☆☆☆☆


ワードも一太郎もアウトラインに相当するものを付属しているが、ワードはタブキーだけで、階層移動が出来て使いやすい。ただ、あまり高度な機能はない。一太郎のランク機能は使いにくい。他機能が優秀なのに残念である。なにより、クラリス(アップルワークス)のアウトラインは秀逸なのだが、マック専用なので、汎用性がないので、広範な読者に勧められない。次は専用ソフトによるものである。

『アウトライン専用ソフト』

● NSアウトライナー  (フリーウェア)☆☆

フリーなので無料で使える。基本的な機能はある。ただし、ウィンドウズだけ。


● アイデアツリー  (シェアウェア)☆☆☆

本格的なもので、アイデアをまとめていく機能を充実させている。ツリーによる図示の機能をもっていて、高度な論文を作成していく時にやくだつ。アイデアプロセッサーとでも言うソフト。ただし、ウィンドウズ専用。

● KacisWriter free ☆☆☆☆

 製品版の KacisWriter と フリーで公開している KacisWriter free がある。カタログや取扱説明書を出版するのが主要目的のようで、製品版はそれを編集する立場のソフトで、フリー版は「リーダー」のような位置づけである。PDFリーダーのような位置づけであるが、フリーでもかなり高度な編集ができる。ウィンドウズとマックのハイブリッドとなっているので、ミクロコスモス編集部として、これをオフィシャルソフトに採用した。

【特徴】

左右に二分された画面が特徴で、左の画面がアウトラインの画面である。10層までの深さをもつ階層を扱える。階層をのマークをヘッドと名付けているが、階層を作ったり、また上下させたりするのは、簡単なショートカットが使えるので、使い心地は、まあまあである。

右側の画面は、左のアウトラインを「目次」とした、「本文」の扱いになっている。次のように、項目に解説や本文をつけたい時には、右画面に記載すれば良い。

【KacisWriter freeの画面概念】

     左の画面              右の画面

■東北                 ┃
    □宮城             ┃
       ▲仙台市         ┃
           △青葉区     ┃
               ○名掛町・┃森谷編集長の生まれた所。
                    ┃二歳まで暮らした。七夕は
                    ┃この町内から始まった。
■関東                 ┃本人には記憶がない地。
    □神奈川            ┃
        ▲横浜市        ┃
           △港北区     ┃
           △戸塚区     ┃
              ○名瀬町・・┃森谷編集長の第二の故郷。
                      幼稚園から
                    ┃大学時代まで住んだ。柏尾
                     川のほとり。
              ○戸塚町・・┃戸塚小学校が
                     ある。創立140年になる筈。
           △旭区      ┃
              ○三ツ境・・┃森谷編集長が一時住んでい
                     た。
                    ┃とくに特徴のない住宅街で
                     
  ある。                ▲小田原市               ┃
              ○本町・・・┃森谷編集長がただいま住んでい 
                    ┃て、編集部はこにある。北原白秋
                    ┃も一時住んでいた。 
              ○城内・・・┃勤務先がある。
                    ┃
                    
左のアウトラインを折り畳んだり、拡大したり、移動したりすると、それに伴い、右の画面も移動していく。それがとても便利である。

右に法令の条文を並べて、右画面に詳しい判例を記載しておけば、引用が簡単になる。また分厚い取扱説明書や、ソフトのマニュアルなどを、これで作成するとページめくりの労力が省ける。

長文の物語を執筆する時に、左にタイトル、右に本文を「思いついた順」に書いておいて、後から並べ替えて、全体構成を考えたりできる。最終的に右の画面をコピーすれば、構築力のある文章が書ける。

特に論文のような、構成がものを言う文章執筆では、絶大な威力を発揮する。ただし、ここら辺をさらに高度に取り扱うには、アイデアプロセッサーのような専用ソフトが良いだろう。

以下のリンクからカシス社のページで内容を確認して欲しい。KacisWriter free の方は、同サイトからダウンロードできるので、是非利用してみてほしい。安定したソフトを供給している会社なので、バグなどの心配なないと思う。製品版は、大きなショップなら販売されている。
  
【リンク】

○Kacis(カシス)社のホームページ。
http://nks.mvi.co.jp/

○NSアウトライナー  (フリーウェア)
http://www.nsd.co.jp/share/nsout/

 ○ アイデアツリー  (シェアウェア)
http://www.dicre.com/soft/itree.htm

【応用】

その他の利用例を列挙しておこう。

○ 会社、学校などの組織分類をつくる
○ 法令の条文毎の判例集などをつくる
○ ウェブのサイトを計画して、分かりやすいリンクを作りたい
○ 授業のための教材を打ち込んでから、
   順番を工夫して論理的な授業展開をする
○ 講演のメモをつくり、話す順番をかんがえる
○ 仕事や、これからの計画を書き出して、体系的にこなしていく
○ 日頃の職場の諸問題を溜めて、分析してから上司に具申書を書く
○ 自分史を作る時に、思い出した順に書いて、後から年代順にする。
○ 発想の順に書き、読者の読む順、心に落ちていく順並べ替える。
○ 引用文献からの要約を集めて、総括論文を書く
○ 組織内の諸規定を集めて、内規集をつくる
○ 犯罪事件や社会問題の表面現象の記録から、深層にある構造をさぐる
○ 物語の構造分析をして、表層構造から深層構造を導き出す

【最後に】

とにかく、階層性や分類が関係する事を取り扱うに絶大な威力を発揮する。混乱した頭の中を整理してくれる偉大なソフトなのだ。

次のような指摘を受けた事のある人は、これを用いて、頭を鍛えると良い。

 ○「君の言うことは、感情的で支離滅裂で、理解できないよ。」
 ○「あなたの小説、部分部分は面白いんだけど、
    全体として何言ってるか分からない。」
 ○「君の論文は、構築力に欠けている。」
 ○「先生って、とっても良い人だけど、授業は分かんない〜」
 ○「あなたの作ったサイト、なんだか迷子になりそう。」
 ○「君の家って、ごちゃごちゃで、どこに何があるか分からない。」
 ○「一生懸命仕事するけど、なんだかうまくいかないね。
   手順が悪いんだよ。」
  ○「あなたの文章は固くて難しい。」
 
 アウトラインプロセッサーの起源は、原稿用紙での推敲と、文献カードである。一昔前まで「京大式カード」のような文献をカードに引用して、それを並べ替えて論文を構成してく手作業をしていた。学問の基礎技術だったが、案外面倒だった。これを機械化して、さらに原稿の推敲まで一貫して行おうと言うのがアウトラインプロセッサーなのだ。

すらすらと名文をよどみなく書く天才作家がいる。彼らは頭脳のどこかに「アウトラインプロセッサー」の機能を先天的に備えているのだろうか。いや、宮澤賢治あたりの天才でも原稿用紙を見ると、苦労して発想の断片を並べ替える作業を地道にしている事が分かる。天才は発想の才と共に、それを整理・構成する才を持ち合わせた人物なのだろう。

しかし、凡才にも、このような頭脳の欠陥を補ってくれる協力な道具を利用する事により、構築力を手にする事ができる。構築力養成ギブスとしてアウトラインプロセッサーを利用して構築力、論理力のある作品を生み出してみたい。

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   今日はここまで   ではまた。
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【編集部より】

 ミクロコスモスでは「ジャンル探検」という企画があります。またミクロコスモス大学では「万物分類学」という研究を進めようとしています。このような記事に付属する資料を読んでもらうソフトとして、本日紹介したソフトを利用する予定です。是非お試しください。そのうち、詳しい資料とともに添付して配信します。                
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ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部
   編集長  森谷 昭一  

★ 編集部宛メール  公式メール 執筆者・編集部員に
           内容のみ転送の場合あり。
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