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 ミクロコスモス総合版2002年12月6日へちがら「カリン」
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            発行 ミクロコスモス編集部

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    編集長の大失敗  「洋梨とカリン」
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 ある年の秋、青果店での編集長。

「洋梨が安いぞ。」

 パックに詰められ、その電球の形をした果実は一山150円で売られていた。「珍しいぞ。食べてみるか。」と編集長は購入を決めたのだった。なんだか安過ぎるが、きっと腐りかけなのだろうと思った。まあ、洋梨は少し腐った位が味は良いのだ。

 家に帰り、皮を剥こうとした。何やら硬い。・・・それは「かりん」だった。洋梨とカリンは似ている。・・カリンは漬け物にでもしないと直接は食べられない。

 しかし、どうも植物を見分けるのは不得意だ。編集長は農学部卒だけど。そういえば、大学の農業実習の時に、ブドウの葉をたくさん並べて、果樹園芸学の先生から「これは何?」と訊かれて、「ブドウ」と答えてしまって「アホ」とか言われてしまった。「デラウェア」とか「巨峰」とか、品種を訊かれたのだ。さらに先生は、さらに細かく葉から分かる生育状況なんてのを説明したかったらしいが、鑑定能力皆無の学生にあきれて、質問は他の学生振り向けられた。「鑑定能力」・・つまり違いが分かる事は農業の基礎なんだけど。しかし、洋梨とカリンを間違えては・・・

 食べられないカリンはどうしたか。カリン酒とか、蜂蜜づけにすると喉の薬になるのらしいが、なにやら材料も調わず、しかたなく冬まで部屋の飾りになった。香りが良くて、なかなか良い。それから風呂場において、時々風呂桶に浮かして風呂に入ると、ユズ湯ならぬカリン湯となって気持ちよかった。カリンは丈夫なので、繰り返して風呂に浮かせる事ができた。責任はもたないけど、カリンが手に入ったら試しみて欲しい。

 この世には「違いが分かる人」と「似てる事が分かる人」ってのがいる。「違いの分かる男」はなにやらコーヒーかなんかの宣伝だったが、「似ている事が分かる男」ってのは、鈍感あるいは、単なるお馬鹿、になりかねない。ある時、雑煮にいれる三つ葉がなくて、「似てる」という事でパセリをいれてみた。それから、うどん作りに「出汁のもと」がなくて、「似てる」と言う事で、「チキンコンソメ」を用いてみた。いずれも美味かった。・・

 違いが分かるのも大切だが、似てる事が分かるのも大切なんだ。だいたい、あんまり細かい差異に執着すると偏見や差別のもとになるのだ・・・と、鈍感なのを隠すための理論構成ではない。

 味醂がなければ、酢はだいたい似ているし・・・、炒め油がなくなった時には、マーガリンで炒飯を作っても、それなりに食べられ。毒物を混入しない限り、食べられるものを、いかに混合しようとも、ごく少数の例外を除いては、それなりの「料理」に仕上がるものだ。※

 それ以来、編集長は秋になるとカリンを手に入れて、部屋の香水がわりにしている。カリン湯も恒例である。先日八百屋で、「おっ、カリンだ。」と思って良く見たら、「なんとか瓜」という瓜だった。なんだか、そのうち瓜とカボチャの違いが分からなくなるんじゃないだろうか。

今年は、家の前のお寺の山門に「カリンです。お持ちください。」と篭にいれてあった。これでカリン湯ができる。

注意 カリンは一個にして置くこと。大量に部屋におくと、芥溜めの匂いになる。・・・

※ ごく少数の例外とは、頭痛のするような料理の例で別途報告する。バターの替わりに油を使った○○○○なんかだ。
            
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   今日はここまで   ではまた。
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【お詫び】配信時間が大幅に遅れました。もうすぐ日付かかわる。
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ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部
   編集長  森谷 昭一  

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