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  ミクロコスモス総合版2002年10月31日10月のお終いのご挨拶
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                発行 ミクロコスモス編集部

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    10月お終いのご挨拶  編集長
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「秋も深まってきました。」これは秋の挨拶の常套句ですが、でもなぜ秋は 「深まる」と言うのでしょう。「夏が深まる」とは言わないようです。

実感として「深まる」という言葉が、この季節にぴったりしているのは確かで す。「夜が深まる」と言う表現もあります。暗さや冷たさの方向に深まるのでしょうか。ならば、雪にとざされる冬こそ、深まるとの表現 が似合ようにも思いますが、冬も深くなるとも言わないようです。

 生命の方向性を示した表現なのでしょうか。緑と命が吹き出してくる春や 夏。生命が迫ってくる向きと反対に、秋は紅葉とともに向こうに去っていく方 向性を感じさせます。

その方向の極に深みというものが感じられるのでしょう。ならば、秋の深みの 向こうには何があるのでしょう。「死」なのでしょうか。眠りなのでしょう か。

 一年草や卵で越冬する虫にとって、秋は死の季節です。落葉樹やさなぎにと となる虫にとって、秋は眠りの季節です。ならば、秋の深さ数ヶ月で測定され る命の時間です。

夏の盛りにも死を感じる一時があると以前に書きましたが、それは過去の死者 への思いです。秋に感じる死の想いは、命そのものの終わり、そして自分の死 を垣間見る想いです。

 それゆえ、秋は深くなっていくのでしょうか。人生の秋と言えば、死の前の ゆっくりした一時を言います。その意味では、秋の深さの距離感は、数十年と いう単位で測られる時間に変換されるものでしょうか。

 空の青さ、夜空の透明さが増す事も秋が深くなると感じる要因に思えます。 秋の星座は、控えめで暗黒の深い夜空です。やがて現れる冬の星座の絢爛さへ の前舞台といった所でしょうか。

 海も深くなっていきます。もちろん海水が増加するわけでなく、透明度が高 まり海の色が深くなるからです。もうすぐ海中は一年で一番美しい季節を迎え ます。秋の深さは、数十メートルの透明度に比べられるものでしょうか。

  秋の夜に月が照らされ、光りの筋の続く海は遠い世界への通路のようです。水面に水平線から一条の光 のすじが、海辺まで続く美しさは、冷え込む空気とともに体につきささり ます。その光の方向に人は永遠の世界を垣間見ます。ならば、永遠までの 距離は、せいぜい数キロです。

 人間にとって深みや高みと言う時の、即物的な距離はどの位なのでしょう か。人生の深さや神への高みなど、即物的に語るものではないと言われるかも知れませんが。

 でも、あえて秋の深みの意味を測定するなら、木の葉の数?、海の深さの数 十メートル、空の青さの数千メートルでしょうか。神の高みさえ、5千メート ルの山に抱く畏敬の念の深さで測定できるものです。それは、すべてを矮小 化する思考でしょうか。そう評する人は、数?の無限さ、数分の時の価値を知 らない人です。

 残された人生の数時間の価値を知る時、我々は人生を手中に取り戻します。 散っていく数?の木の葉をいとおしむ時、秋はいっそう深まっていきます。微 少と無限の交錯に、人は永遠を我が身に近きものとするようです。

 古来、偉人は微少と無限の交錯を縮限と呼びました。きっと秋の深みは、永 遠が凝縮される縮限のなかにあるのでしょう。

  秋の深みと共に人生を楽しみたいものです。

【編集長より】

 またまた、月に一度の編集長の文章の練習です。なんだか自分で書いた気が しない文章だな。

 さて、明日から11月です。編集長の一番好きな月です。そしてミクロコスモ ス編集部にとっては、大切な月です。創刊記念日でもありますし、いろいろお まつりとかあるのです。葉っぱの落ちて寒そうな木々が、暖かな雪をまって風 にさらされる季節に、あらゆる真実が目の前立ち現れます。物語の登場人物達 も、みな11月にどこかから跳びだして来たのです。一番美しいミクロコスモス の季節にご期待ください。

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   今日はここまで   ではまた。
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ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部
   編集長  森谷 昭一