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ミクロコスモス総合版2002年10月5日職人の言葉「大工定吉」
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             発行 ミクロコスモス編集部

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  職人の言葉シリーズ
     大工の棟梁定吉が弟子に言った言葉
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     おい、ノコギリってのはな、

     押すんじゃねえ、

     浮かすんじゃねえ、

     鋸の重さにまかせとけ。


          大工の棟梁定吉が弟子に言った言葉


 素人が鋸(ノコギリ)を使うと、板を押しつけて余計に力を入れてしまいます。これでは、曲がるし、切れないし、疲れるし・・鋸は「引いて」木を切るものです。

もちろん切断面に垂直に力を加える必要もありますが、水平方向、垂直方向の微妙なバランスの時に、美しく切れるのです。その押す力は、鋸の自刃の重みが丁度良いと定吉は、教えているのです。

 きちんと作られ、手入れされた両刃の鋸なら、その鋸自身の重みで、ちょうど良く切れるはずです。そのように作られているのです。両刃鋸があの大きさで、あの長さの柄がついて、鋸目があの深さである事から、来る必然なのです。

もちろん材の硬さ、部位、乾燥度、微妙に職人は調節しているはずですが、基準点として鋸の自重に「まかせて」いるのです。

同じく、定吉は金槌についても、言っています。


   かなづちは振り上げる時だけ力を入れな。

   後は、落とせば、釘は入っていく。


 下手は、金槌を「打とう」として余計な力をいれてしまいます。力の入った筋肉では、方向を取りにくいのです。余計な力は、真っ直ぐな動きを妨害します。釘が木に入っていく速度が速くても遅くてもいけません。材をにひびを入れず、釘の適当な締まりを得るちょうど用良い速度があるのです。

 その速度を生む目安が、金槌の重さです。「自由落下」になれば、重さと振り上げる高さで、力は必然的に決まる事になります。富吉は振り上げる高さに、神経を使えと言っているのです。そして打つ時には、力を抜く。

 さまざまな技術の入門時代には、みな自分の力で仕事をしようとしてしまいます。もっとも最初は腕力を鍛えるために、それも必要な時があるようです。富吉も、頃合いを見計らって、ぽつりと短く、言葉を弟子にかけたそうです。

 さらに、「止め」の心得、「軸」の心得、など、ほとんど「詩」に近い言葉で、弟子を指導したと言います。材木という生き物を扱う職人は、人の心も知ってるんですね。


 技をならうとは、我をならうなり、我をならうは、我をわすするるなり。
 我をわすするとは道具に従うなり。道具に従うとは、万法に証せらるるなり。

と言う事でしょうか。 

技を磨くというのは、道具を通して物理法則から、人間の法則・・宇宙の法則に身体を近づけていく事らしいのです。

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   今日はここまで   ではまた。
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【お便りより】 

「スライス」の記事に何人かの読者より、感想をいただきました。笑われてしまっているのは共通なのですが・・そしてさらに、「ありがち、ありがち、私も・・」と様々な「怖い」お話をいただきました。「皮が剥けた〜」とか「爪が・・・」とか極度に怖い話は隠しておくとして・・ベテラン主婦からいただいたメイルをご紹介させていただきます。

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主婦暦○年の私は、思わず笑ってしまいました.
長年同じような失敗をしてきた者の同感とおかしさで。

つい去年の暮れも、左手の小指の先端を(つめ半分ぐらいがえぐりとられた)
包丁で切りました。
手先を見ずとも切れると言う自負心と、 暮れの気ぜわしさで、

編集長みたいなそんな冷静さはありません。
ほとぼしる赤い血が、小指の先端から手首に流れるのを見、
ズキンという痛みが全身に走ったとき、
出血が△ccでなく、 ○リットルに感じられました.

落ち着いたのは、3〜6か月でもとの皮膚がよみがえると
言われ、丁寧に病院で応急処置をしてもらった後です。

不思議なのは、指が完全(?)に切断されても、
運が良ければつながると言うことです。
その運の良さは、医学的に??????の条件かあると思いますが
ご存知の方、教えてください。

           つ/き = 月
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ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部