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ミクロコスモス総合版2002年9月14日人生処方詩「1番2番」
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              発行 ミクロコスモス編集部

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     人生処方詩集 1   切断面の響きより
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 ケストナーに「人生処方詩集」という名作があります。「貧乏にであったら」「生きるのが嫌になったら」「同時代の人間に腹がたったら」などの項目がたてられ、100編の詩が、その処方箋となっています。

 寺山修司もこれにならって「人生処方詩集」をつくっています。読む薬とか、この種の詩集は色々と出ているようです。

 ミクロコスモスの詩の同人誌「切断面の響き」の仲間でも、人生処方詩集をつくろうと言う事になり、のんびりですが作っていく事になりました。

ケストナーより、もっと細かく具体的な症状に対応しようという事になり、

「何にもする気がおきず、体が動かない時」
「雨の日に、誰かと話したいけど、誰もいない時」
「夜中に、きっと自分は天才だと確信した時」
「食べたら眠くなった時」
・・・とか、そんな細かい症状をたてる事にしました。

とりあえず、今回は、その第一作。試作の詩作なので、とりあえず発表して、御意見により訂正などいたしていきます。コンピューターのソフトのベータ版みたいなものです。まあ治検薬というやつです。服用された方は、是非作用の報告をお寄せください。

【人生処方詩集1番】

 
【適応症】

  何にもする気がおきず、体が動かない時

【処方詩】

  指の先は動くかい
  ちょこちょこ動かしてみよう
  そんだけ動けば、すごいこと
  一本指がはそのうちあたたかくなる
  そしたら、すぐに二本目が動くさ
  そしたら、ゆっくりゆっくり、リズムをつけて
  そのうち腕も動き出す

  息が小さく、短くないかい
  ちょとで良いから
  なが〜く、すってごらん
  時間をかけて、だんだんと長く
  そしたら、だんだん
  背中がのびて
  そのうち、きっと立ち上がる

  忘れちゃだめだよ、この気持ち
  あれもしたい、これもしたいって
  やりたい事ばかり沸き上がる時
  その時、ちゃんと思い出そう
  何にもできない今日の日を


[使用説明書]

 急性の強烈なストレスを受けた場合に「体が止まってしまう」状態はあるものです。「なあ〜んにもやる気が起きない」という状態です。俗に鬱状態と言われるやつですが、ほっておくと、進行して極限で人格崩壊がおこりかねません。ただし、本人はなんとかしたいと思っている場合には、いくつかの処方があります。

本処方は、「寝てばかりいる」といった症状に適応しています。心の中心部の動きが緩慢な時は、末梢の身体器官を少しでも良いから動かすです。人差し指をぴくびくさせるなんて方法でも構いません。これにより、末端と心臓および大脳との最低限の経路が確保されるために、全身の停止は防ぐ事ができます。そして、自然の治癒力がやがて、全身の活動を促してくれるようになります。

沈み込んだり、浮き上がったり、心身のリズムの揺れが出来てしまうのは、良い時の心身と、悪い時の心身との連絡がつなかないからてす。それを繋ぐのは、身体の活動をともなう心の活動です。当たり前ですけど。

「何も出来ない、何もする気が起きない」という状態は、「謙虚」という性質育成にとっては、大切な状態なのです。今を否定しないで、遠くから見られれば良いのです。

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【人生処方詩集2番】

【適応症】

 文章を書こうとしても何も書けない時

【処方詩】

  久しぶりだね、字の練習
  ゆっくり、ゆっくり、字の練習
  十秒かけて一字だけ
  あいうえお から もう一度
  次に、好きな詩、写してみよう
  半日かけて、ゆっくりと

  きれいな言葉、くりかえそう
  リズムをとってくりかえそう、
  大切なお手本、くりかえそう
  素敵な言葉、思い出そう
  ほんの少しの、きれいな言葉

  言葉のリズムで遊んでいると
  きれいな言葉と遊んでいると
  言葉がやがて、やってきて
  ペンの先からにじみ出す
  その時までは、文字と遊ぼう


[使用説明書]

文章書きでも、作曲でも、創作活動には「スランプ」がつきものです。創作はもともと心の揺れを利用するものですから、「落ち込み」のあるのが当然なのです。そして、行き詰まりは、大抵は基礎能力の乱れや不足から来るものです。手足の正確な動きが出来ないと、大事に挑戦する段階で「もつれて」しまい先に進めなくなるのです。

 こんな時は、はやり基礎を見直すしかありません。それも入門の時以上に、もっと基礎に戻るのです。ゆっくりゆっくり手足を動かして、動きを反省します。美しい見本を丁寧に書き写ししたり、一日かけて同じ詩を音読し続けたりします。そんな仕切直しをすると、やがて大きな段階へ羽ばたける時が来るものです。

【症状募集】

 人生処方詩集チームに、処方をしてもらいたい人生の症状がありましたら、編集部までお送りください。処方をみなで考えてみます。

ただし、「ちろちろと」やってますので、半年後になるやら、1年後になるやら、いきなり明日できるかもしれません。

 「コンピューターがいつも特定の所でフリーズする・・」とか「トリカブトにやられて死にそうだ」とか詩人に訊いてもも仕方のない事は、それぞれの専門家に訊ねてください。

治検薬として処方いたしますので、妙な副作用が起きたり、効果がなかったりする事を了承の上請求ください。

 処方料は無料。ただし、治検薬なので、出された処方には、使用報告をお寄せください。


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   今日はここまで   ではまた。
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【編集長より】

 いきなり寒くなりましたね。衣替えしないと。でも天井だ・・・編集長は季節毎に着る者を天井にしまい込んでいるので、出すのが大変なのです。

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