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ミクロコスモス総合版 2002年9月5日 今月の詩「 September Song 」
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                  発行 ミクロコスモス編集部

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     今月の詩 9月  セプテンバーソング
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      September Song

  When he was a young man courting the girls,
 He played them a waiting game.

 If a maid refused him with tossing curls,
 He let the old earth take a couple of whirls,
 While he plied her with tears in lieu of pearls.

  And as time came around she came my way.
  As time came around, she came.

  Oh, it's a long, long while from May to December,
  But the days grow short when you reach September.

  When the Autumn weather turns the leaves to flame,
  One hasn't got time for the waiting game.

  Oh, the days dwindle down to a precious few--

  September, November.
   And these few precious days
  I'll spend with you.

  These precious days,
  I'll spend with you.


       Words by: Maxwell Anderson
      Music by: Kurt Weill De Sylva

     ♪♭♯     ♪♭♯   ♪♭♯
   
     九月の歌

  女性を誘う若者だった時
  彼は、いつも待たされてばかり

  女の子に軽くあしらわれても
  古き大地のめぐるほどにも気にしなかった
  真珠を涙にかえて彼女にうたい続けた

  そして、時が来て彼女は彼の所に来た
  時が来て、彼女は私のもとに

  五月から十二月まではなんと長い事か
  でも九月になれば、日は短い輝きになり

  秋風が葉をもぎり、樹を枝だけにする
  もう待ちぼうけに時を費やせられない

  日々は、貴重な残りへそぎ落とされていく

  9月、11月と
  この残り少ない貴重な日々を
  私はあなたと過ごす

  この貴重な日々を、
  あたなと過ごす

          翻訳 ミクロコスモス編集部


      ♪♭♯     ♪♭♯   ♪♭♯

 「9月だからって、セプテンバーソング。ちょっと軽すぎない。」と言われそうです。でも、なんと言っても名曲中の名曲です。古典的な詩の形式に、きちっとした作曲の技法、確かなスタンダードナンバーです。

「気がつかない程、当たり前の真実。それを技巧つくしきって正確に私達に示してくれる曲。世界の標準。そんな曲がスタンダードナンバーだと思います。

 フランクシナトラ、ナットキンコール、ビクターヤング、そして多くのジャズメン達が取り上げ、たくさんのオーケストラにも演奏されています。

 詩は、二番までありますが、これは二番の方です。歌い手により He を I と歌いかえるものもあります。

空気が冷たくなる頃、多くの人が身体全体で受けとめる共通感情。セプテンバーソングはそんな心を表現しています。多くの人にもそんな感情を共有してもらえたらと思い、今月の歌としてで選びました。

     ♪♭♯     ♪♭♯   ♪♭♯

 イタリアを舞台にした映画「旅愁」の主題歌です。人生も残り少なくなって来たピアニストと技術者のふたりが主人公。二人は飛行機で隣り合います。偶然に飛行機は故障でナポリの空港に止まってしまいます。

「ちょとナポリ見物にでも行かないか。」二人は町に出てしまいます。空港にもどると、飛行機は飛び去ってしまっています。「いっそのこと・・」と、やがて二人のイタリア旅行が始まります。残した者の事を気にかける二人に、とんでもないニュースが。二人を置き去りした飛行機はなんと墜落して、両人とも死亡した事になっています。

「このまま、知られずに別の人生をいきていくのも・・・」そう考え、行動に移す二人。しかし、やがて元の人生にもどっていきます。最良の出会い。でもちょっと遅すぎた出会い。そんな美しい出逢いを描くハリウッド映画の「スタンダード」です。

 この頃のアメリカ映画は、大人のための渋い作品が目立ちます。そんな年代が優良顧客層だったのでしょうか。良き時代のほんのり渋い映画をたまにはご覧になりませんか。白黒映画です。

     ♪♭♯     ♪♭♯   ♪♭♯

 ひと巡りの季節を人の一生になぞって歌えば、人生の秋とは何歳くらいでしょうか。若き日々には、時が過ぎる事を深くは感じません。でも時々、若き日々に、時の過ぎる事を悟る人がいます。それゆえ若き日を一事に費やし、打ち込み、天才の偉業を成します。

 大部分の人は、仕事をするようになって、時の足りない事、貴重な事に気付きます。だから、気づいた事により、その後の人生を設計するようになり、確かな人生と社会を築きます。

 人生の秋になり、定年まじかに「人生とは何かに気づき、時の貴重さに打たれる人も少なくはないでしょう。でも、その時確かに、誰かを愛して、愛された事に気づくかもしれません。

  These precious days, I'll spend with you.
  この残り少ない貴重な日々を、私はあなたと過ごす

そんな伴侶をもつなら、人生は美しかったのでしょう。

 原詩には、 September,  November. までで、December までうたいません。
どうしてか、ちょっと深く考えてしまったりしました。

 時の意義に気づのが死の間際だとしたら、寂しいようにも思えます。でも、それほど何かに翻弄され、自分を棄てなければならない人生なら、きっと永遠と呼ばれるものに拾ってもらえるはずです。

 ミクロコスモス読者は春、夏、秋、それぞれの年代の方がいらっしゃいます。秋のひととき、自分の歳をみつめて「人生と時」に想いをめぐらすのも「おつなもの」でしょう。古いイギリスの詩をひとつ

  人生の短く、貴重な事を
  若き日に心身に刻めば
  人は、天才の偉業を成す

  人生の短く、貴重な事を
  生涯の半ばで悟れば
  人は、幸福な実業を実らせる

  人生が短く、時の過ぎる事を
  人生の秋に気づけば
  人は生きた事と人の愛を知る

  人生が短く、時が終わる事を
  人生の最後に知れば
  人は、神の存在に愛でられる


            「時の葉」 より

ちょっと皮肉にも聞こえる詩ですが、「いつ、時を悟ろうとも、人生はすぐれて美しいものだ」と受けとめる事にしましょう。いろいろな年代の人を眺めても、本当に人生が短く、時が過ぎていく事を心の底から知る人は少ないようです。みんな人生の残りを数えてはいるけど、本当に終わるとは思っていないようです。

 でも、・・人生が終わる事など、知らなくても良いのかもしれません。「時の過ぎゆくままに」、草木が芽生え、花が咲き、実り、そして枯れていき、人を愛する。時など知る事なく、草木と共に人生を終わる事も、それはそれで、きりっと美しい人生なのでしょ う。


   あの頃の萌える葉も

   そろそろ、枝から離れる季節

   少しだけ時が顔をみせ

   すぐまた、大地の底に隠れていく

   秋のはじめの、ひととき

   どんな人生も美しい

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      今日はここまで       ではまた。
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【編集部より】今日の記事は、3人の執筆者の共同作業です。秋のミクロコスモスは、少しセンチメンタルなスタンダードにしてみたいですね。9月は「時」をテーマにするのにふさわしい月です。では、これからの秋日々に、時を考えつつ、ミクロコスモスをお楽しみください。

 御意見・御感想・御質問・リクエストなどは以下までメールまたはお葉書などで。
   ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部

   編集長  森谷 昭一 

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