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メイルマガジン 「ミクロコスモス」 総合版
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2002/8/28
ミクロコスモス編集部
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シリーズ NDCの999冊
第1回 014.45 日本十進分類法
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ミクロコスモス研究学園図書館の館長 楡実(にれみのる)です。ただ今建設中のバーチャル図書館、ミクロコスモス図書館の館長です。図書館というのは、中身を作るのが大変なのです。どんな本が揃っているかを蔵書構成といいますが、ちゃんと方針をもつて本を収集整理していかなくてはなりません。新教養主義・「百科全書学派の生き残り」として、体系性を重んじるミクロコスモス研究学園では、なおさらの事です。
さて、図書館と言えば「分類」ですね。小学校の図書館でも、地域の図書館でも下のような表が貼られていてたのを覚えていますねこれは「日本十進分類」といって、本を分類して書架に並べるための基準です。日本と殆どの図書館はこれに基づいて分類しいます。日本中かなり浸透していますが、古くなって時代に合わなくなっている部分もあります。
ミクロコスモス大学図書館では、建設にあたって新しい分類を作り上げようと研究中です。その事は別にお話する事にして、少しこの日本十進分類(NDCと略して言います。)を味わってみようとおもいます。
十進分類はその名のとおり、0から9までの数字を使い、十倍ずつに分類していき、001から999までで999冊の項目があります。 実際には999だけ、すべて対象項目があるわけではなく、空番のものがあります。また番号があっても本が見あたらないような項目もありますので、およそ999です。
そこで次のような企画を立てました。この分類項目の999について、原則として一冊づつ最良の本を選びだしてみようというのです。 新たに図書館をつくります。
できるだけ、偏らない、そしてその蔵書を利用すれば、視野が広がり広く世界が見渡せるような図書を選ぶと、どんな本が選ばれるか。そのような意図もあります。そして一人の人間の教養として、図書を選ぶとしたらどんな本が選べるだろうか。こうも考えました。選定基準は次のようなものです。
1 代表的な「総説」や「概論」を選ぶのでなく、その分野の神髄を示した本。
2 日本語で書かれたか、または日本語に翻訳された本。
3 古本をふくめ、なんとか入手できる本。
4 その本を出発として、さらに広い世界に探検できるような指針となる本。
999冊もあるので、何年かかるか想像もつきませんが、他の執筆者にも応援してもらって取り組んでいきます。どうぞ、読者のみなさも御協力お願いします。さて今日は、その一冊目です。
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第1回 日本十進分類法 改正8版 日本図書館協会
ISBN4-8204-7800-1 本体4000円 NDC 014.45
さて最初の一冊は日本十進分類です。「なんで、そんなもの面白いの? だいたい読むような本でないじゃん。」とか言われそうです。635ページの少々重たげなこの本は大部分は数字と分類項目が並んでいるばかりです。図書館員が実務に使う一覧表のようなものですが、しかし「読んで」みると面白いのです。
無味乾燥な一覧表みたいなもので案外と面白いものがあります。例えば、「職業別電話帳」いわゆる「タウンページ」ですが、かなり面白いものです。別に番号が面白いわけでなく、職業の種類が面白いのです。「世の中にはこんな職業があるのか・・・すごいな。」とか思って、住所をもとに見に行きたくなったりします。電話帳はまた詳しく取り上げる事として、他にもいろいろ「面白い一覧表みたいなもの」が沢山あります。
だいたい○○年表とか、▽△総覧とか、□□統計とか読み込むと面白くありませんか?・・・地図帳の鉄道の路線名一覧をみたら、端から乗ってみたくなるし、国の一覧で聞いたこともない国名をみつけたりすると、何故かワクワクしませんでしたか。(同意してくれる人が少ないのですが・・・)全てを一覧にして列挙してあるものというのは、好奇心旺盛な人には、魅力的な「道しるべ」になるのてす。
さて、NDCは一桁で10の分類項目、二桁で100の分類項目、三桁で千ほどの分類項目になります。それぞれ?次区分表、2次区分表、3次区分表と言いますが、3次区分表まではさほど面白い事はありません。さらにその先を詳しく分類する場合には、少数をつけてどんどん詳細に分類する事ができます。これを細目表といいますが、ここらまで読むと、とても面白いのです。細目表まで目にする事ができるのは、この厚手の本だけです。一体何が面白いか?実際の細目表の一部を見てください。
630 は蚕糸業です。蚕糸業そのものが、今の日本では規模の小さな産業ですが、昔の日本では国家の大事業でした。NDCの分類の精密さは、その痕跡です。
630 蚕糸業
631 蚕糸経済・行政
632 蚕糸業史
633 蚕学
634 蚕種
635 飼育法
636 くわ 栽桑
637 蚕室 蚕具
638 まゆ
639 製糸 生糸
蚕種(蚕の卵)だけで3次分類を使っている所がすごいですが、さらに635の細目分類をみてみましょう。
635 飼育法
635.13 春蚕飼育
635.15 秋蚕飼育
635.14 夏秋蚕飼育
635.2 掃立法
635.3 蚕の飼料 給桑法
635.4 稚蚕飼育
635.5 壮蚕飼育
635.6 上簇 収繭
635.9 野蚕 作蚕 天蚕 ヒマ蚕 アナフェ蚕
何かこれだけでも不思議世界ですが、 蚕の飼育にかけた養蚕家の意気込みと当時の日本の国家体制が伝わってきます。かっての日本では、養蚕は一大国家プロジェクトだったのです。
分類細目があったという事は、それぞれ分類すべき図書、文献があったという事です。そしてそれを書いた学者なり、実務家がいて、その背景には、莫大な知識の集積と人々の労苦があったはずです。
細目ひとつひとつに、それをつくり上げた人生があると創造すると、たかが図書分類とは言えない、つきない興味が沸いてくるものです。今では、この分野そのものの本は、一般図書館で目にする事はないでしょう。
他にも興味深い世界が細目表には展開されます。医学の細目など、「こんな病気があるの?」と門外漢には不思議世界ですし、言語学や、法律学など、興味つきることなくわいてきます。
ただ、自分がその専門に入ってみると、はじめは細かすぎるとと思っていたものが、だんだん項目が足りなく感じるものです。そして、新しくできた分野、例えばコンピュター関係などは、実に不備ですし、社会問題や異常心理学など新しい現象が続出する分野では、分類がおいついていません。
ともかく、一度この日本十進分類を手にとって眺めてください。不思議異次元世界が広がります。本の好きな人には必携の本だと思うのですが。
そして、特に「この世にはどれほどの世界があるのだろう?」という知的好奇心をもつ人には、良き指針となる書物です。時刻表なしに、鉄道旅行をするとまともに旅が出来ません。知識の世界の時刻表である、この本を是非一冊書棚の左上に揃えて知の世界を旅してください。(書棚の左上から、図書館は順番に並びます。)
参考
日本十進分類法 2次区分表
000 総記
010 図書館
020 図書・書誌学
030 百科事典
040 一般論文・講演集
050 逐次刊行物・年鑑
060 学会・団体・研究調査機関
070 ジャーナリズム・新聞
080 叢書・全集
090
100 哲学
110 哲学各論
120 東洋思想
130 西洋哲学
140 心理学
150 倫理学
160 宗教
170 神道
180 仏教
190 キリスト教
200 歴史
210 日本史
220 アジア史・東洋史
230 ヨーロッパ史・西洋史
240 アフリカ史
250 北アメリカ史
260 南アメリカ史
270 オセアニア史
280 伝記
290 地理・地誌・紀行
300 社会科学
310 政治
320 法律
330 経済
340 財政
350 統計
360 社会
370 教育
380 風俗習慣・民俗学
390 国防・軍事
400 自然科学
410 数学
420 物理学
430 化学
440 天文学・宇宙科学
450 地球科学・地学・地質学
460 生物科学・一般生物学
470 植物学
480 動物学
490 医学・薬学
500 技術・工学・工業
510 建設工学・土木工学
520 建築学
530 機械工学・原子力工学
540 電気工学・電子工学
550 海洋工学・船舶工学
560 金属工学・鉱山工学
580 製造工学
590 家政学・生活科学
600 産業
610 農業
620 園芸・造園
630 蚕糸業
640 畜産業・獣医学
650 林業
660 水産業
670 商業
680 運輸・交通
690 通信事業
700 芸術
710 彫刻
720 絵画・書道
730 版画
740 写真・印刷
750 工芸
760 音楽・舞踏
770 演劇・映画
780 スポーツ・体育
790 諸芸・娯楽
800 言語
810 日本語
820 中国語・東洋の諸言語
830 英語
840 ドイツ語
850 フランス語
860 スペイン語
870 イタリア語
880 ロシア語
890 その他の諸言語
900 文学
910 日本文学
920 中国文学・東洋文学
930 英米文学
940 ドイツ文学
950 フランス文学
960 スペイン文学
970 イタリア文学
980 ロシア文学
990 その他の諸文学
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きょうは、ここまで。
ではまた。
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【お詫び】
前回配信の「英文法講座では、罫線や下線が大幅にずれているとの御指摘がありました。申し訳ありません。 英文を扱う関係で、半角の扱いが難しいのです。テキストファイルの範囲では無理かも知れませんが、将来はPDFで配信できるように計画しています。
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ミクロコスモスロス出版局
メイルマガジン編集部
編集長 森谷 昭一
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