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     メイルマガジン 「ミクロコスモス」  総合版
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                    2002/7/12
         ミクロコスモス編集部
               編集長 森谷

  αβγδεζηθικλμναβγδ
    すっごく簡単な理科のお話 
  ξοπρστυφχψωξοπρσ

【単位の話し 2回 】

前回は大きな数をしめす接頭語を覚えました。、千倍ごとに

 キロ メガ ギガ テラ ベタ エクサ ゼタ ヨタ 

でした。さて本日は、小さい方です。ミリ ミクロン は良く耳にする言葉です。顕微鏡でみるような世界をミクロの世界といいますが。1ミリの千分の1の大きさの世界の事です。それより小さい世界が「ナノ」の世界です。

 最近「ナノテクノロジー」という言葉が使われます。マイクロの千分の1の大きさ。原子の大きさの世界です。

ミリ、  m  千分の1。ラテン語で千を意味する言葉です。

マイクロ μ  その千分の1。つまり百万分の1。
        ラテン語で微少という意味です。

ナノ、  n  その千分の1。つなり十億分の1。
        ラテン語で小人という意味です。

ピコ、  p  その千分の1。つまり一兆分の1。
         スペイン語で少量という意味です。
 
 最近ダイオキシンや環境ホルモンについての報道で、ピコグラムという用語が使われています。pg/g [ピコグラムパーグラム]という形が多いようで、1グラムあたりに何ピコグラムという濃度を示しています。これがどの位の濃度なのか、身近な例で説明してみましよう。

 塩を、1グラムをとって1リットルの水に溶かします。1リットルは千グラムですね。さてこの溶液を1グラムとれば、塩も千分の1になるので、1ミリグラム(mg)です。この溶液1グラムあたりには千分の1グラムだけ含まれますから(1mg/g)[1ミリグラムパーグラム]の濃度です。

 さて、そこから1ミリリットルだけ、溶けた水をとります。小さじ一杯というのが、5グラムですから、まあ「小さじの先の方だけにちょっと」位です。さて、これを別の容器に入れてから、水が1リットルになるまで薄めます。千倍に薄めるわけです。これで、千分の1の濃度ですから(1μg/g)[1マイクログラムパーグラム]です。

 そして、そこからまた1グラムをとりだし、1リットルに薄めます。千分の1になって(1ng/g)[ナノグラムパーグラム]の濃度です。

さて同じ事をもう一度やります。これで濃度は(1pg/g)[1ピコグラムパーリットル]です。このように千倍に薄める操作を三回やるとピコグラムの世界です。

 これを極めて薄いと受けとめるかどうかですが、確かに塩水としては、ほとんど真水に近い状態でしょう。

でも(1pg/g)[1ピコグラムパーリットル]の溶液1グラムに入っている分詩の数を数えてみましょう。ダイオキシンの分子量(分子ひとつの相対的な重さだと思ってください。)は300位ですから、300グラムのダイオキシンには6の後に0が23個続く数の分子がふくまれます。

 これを 1pg/g まで薄めると、1グラムにはおよそ20億個のダイオキシン分子が含まれる事になります。

 ダイオキシン等は「ホルモン」の働きをしてしまう物質です。ホルモンの分子は究極的には一個あれば、作用する事ができます。鍵と鍵穴の関係になっていて、ホルモンという鍵が、細胞のレセプターという鍵穴にぴたりとはまれば、作用が起きるのです。

まあ、鍵穴に鍵がうまく出逢うにはある程度の鍵の数が必要ではありますが、この20億個の分子というのは、ホルモンの世界では、場合によっては効果があり得る分子の数です。

 ピコなんて、とんでもなく細かい事を、科学者達は気にするものだと思うかもしれませんが、実験室では千倍に薄める操作を三回やるなんて事は、毎日のようにやっている作業です。

 ナノだピコだの細かな世界がなんとなく分かったでしょうか。

さてピコより、もっと小さな接頭語も一応用意されています。

ピコのまた千分の1がフェムト、デンマーク語で15を示します。そのまた千分の1がアト、デンマーク語で18を意味します。またまた千分の1がゼプト、ギリシャ語の7が語源。さらに千分の1がヨクト、これもギリシャ語の8から来ています。

 科学技術は、どんどん小さな世界へと発展してきました。ミクロの世界を切り開いたのが十九世紀、ナノテクノロジーは、ここ数年の間に飛躍的に進んできています。ミクロだ、ナノだ、ピコだという世界を操る技術者には、米粒にぎっしり俳句を書いてしまうような人間的修練が必要だったりします。

小さな数の接頭辞をまとめておきましょう。

ミリ、   m   millli 千分の1を1回

マイクロ  μ   micro  千分の1を2回

ナノ、   n   nano  千分の1を3回

ピコ、   p   Pico  千分の1を4回

フェムト  f femto   千分の1を5回

アト   a atto   千分の1を6回

ゼプト z zept   千分の1を7回

ヨクト y yocto  千分の1を8回

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    きょうは、ここまで。
         ではまた。
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【編集後記】

 台風にとばされませんでしたか。編集長は風雨の中、海まで大波見物にいって「おお、、凄い風だ〜と」喜んでいました。編集長には、こういうのが大好きで生きている間に、是非、富士山が噴火するのをみたいと思っています。ここ小田原だと溶岩が来るかもしれないけど。・・・・でっかい事は面白い・・・・
 
【お知らせ・お詫び】

 単位にはギリシャ語やラテン語がたくさん出てきます。やっぱり科学の伝統はヨーロッパから始まりました。編集部では、そのうちラテン語講座を開講しようと企てています。ちと、執筆者に逃げられているので、どうなるか。                               
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      ミクロコスモスロス出版局 
        メイルマガジン編集部
        編集長  森谷 昭一