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   メイルマガジン 「ミクロコスモス」  総合版
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             2002/6/26
         ミクロコスモス編集部
             編集長 森谷

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     コンピューター講座  
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コンピューター初心者のための理論講座です。本日は用語解説です。

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    本日のテーマ  「プロトコル」
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【プロトコル】 pro・to・col

 二酸化炭素削減問題の話題に「京都議定書」という言葉が出てきます。この議定書というのは英語で「Protocol(プロトコル)」です。条約原案、外交儀礼、協定と訳されます。だいたい、約束とか、決まり事とか、そんな意味です。コンピューターの世界で、どうしてこんな言葉が出てくるのでしょうか。

 古代人達は「のろしを三回炊いたら、敵がせめて来たしるしだ。みんな集まれ。」とか約束をして、情報伝達をしたのでしょううか。情報をやりとりするには、こういう約束・取り決め、つまりプロトコルが必要です。情報伝達は根本的にプロトコルなしには存立しないのです。

 たとえば、無線通信の世界に、モールス符号と言うのがあります。

「・・・ ーーー ・・・」 と打電すると「 SOS 」となります。


船が遭難した時の信号ですね。「S  は ・・・ 」「O は - - - 」 等と決められているので、世界中の人が無線で通信できるのです。もちろん、かってに決めても良いのでしょうが、狭い仲間でしか通じません。モールス符号という「プロトコル 」の決定と、世界中への普及があったから、あらゆる船が無線電信を使って通信できるのです。

 SOS が船の遭難信号であるというのもプロトコルです。国際無線通信条約というまさに条約があり、そこで規定されているのです。このように、人と人がプロトコルを共有するして、情報を伝達する営みが成立するのです。プロトコル無しに、適当に電波を発っしても、猿とゴリラが叫び合っているように何も通じません。(?何か通じているのかな。)

 とても広くプロトコルを解釈すると、言葉そのものがプロトコルです。「ア・イ」 という音が 「愛」という意味を表現できるは、日本語という「プロトコル」が共通基盤にあるからです。情報処理、および情報伝達の道具であるコンピューターの世界は、プロトコルに始まりプロトコルに終わると言える位、あらゆる所でこの概念が登場します。

 
 モールス信号は電気信号の 「長点 ー と 短点 ・ 」 を組み合わせていますが、コンピューターでは、電気信号が「ある」「なし」の組み合わせとなっています。電気信号は紙の上に表現できないので、数字におきかえて表現するには、数字の「1」と「0」を使います。 電流があるを 「1」 、無いを「0」 で示します。

「 1101011110101101001・・・・」こんな信号がいわゆるデジタル信号です。

 コンピューターのあらゆる部分で、こういう電気信号が流れています。インターネットも、それを繋いでいる電話回線でも、そうです。コンピューターを電話回線に接続する時にモデム出す「ピーぎゃろぎゃろシュ〜」なんて音も、要するに101010101001110010・・・・の信号で、音にするとあんな具合になるのです。

コンピューターの内部はなんでも「10010101111・・・・」だけです。これで、愛を伝えるメールから、株式取引、赤ん坊の画像、お気に入りの音楽、クーラーの温度調節の信号までやりとりするのです。実にあるゆるものが「10101000101010・・・」に直されてしまう事になります。こういう事が成立
するには、それぞれ伝える内容ごとに、仔細な約束事つまりプロトコル必要です。これが、広い意味でのプロトコルです。

 音楽CDの形式、カラオケやデジタルピアノの楽譜データの形式、携帯メールの形式、エクセルのデーター形式、動画のための形式、数式を表現する形式、日本語の文字の規格、一太郎文書の形式、ワードの形式、・・・・あらゆる形式が広い意味でプロトコルに含まれるのです。
 
 さて、身の回りにもプロトコルは沢山あります。「山 ・・川」なんて忍者が合い言葉を交わします。これもプロトコルです。


昔、長距離電話が高価だった頃に「呼び出し音を 2回 しばらくして 1 回で 「無事暮らしている 息子より」という事にして無料で情報伝達した人がいました。これもプロトコルです。 お役所の「法令書式」や「帳簿の書式」・・面倒くさいですが、社会生活のためのプロトコルです。

 「小指と小指は、2人の愛のしるし・・・」とか2人だけで盛り上がっているような約束も、極小範囲でのプロトコルです。大げさに言えば、社会を成立させているのはプロトコルと言えるのです。

国家の間での条約が破棄されれば、やがて戦争になっていきます。情報通信で、プロトコルが壊れれば、情報伝達は破綻します。近頃の日本社会で発生しいる、学級崩壊、刃物を振り回す青少年、いじめ、様々な錯乱、解釈不能な振る舞い・・・これらは、大人の子供の間あるいは社会全体の「プロトコル」が失われた結果かもしれません。あるいは、プロトコルなしに、発信者だけの意味づけで、一方的に信号を発し続けている状況なのでしょうか。

 近頃の教室では、誰かが話していても、別の生徒は突然のように、他人を無視して自分の話だけをします。「質問していいですか。」「お話中、すいませんが、急用なので先に話させてください。」など、会話を成立させるための手順「プロトコル」を守らないので、情報を伝える機能は麻痺している状況です。「自分の発した声を体に受けて、自律神経を調節する」という情報伝達以外の身体機能だけを行っているのでしょうか。 「誰か人が話している時は、黙って聴く。」これは会話を成立させ、情報を伝達する最低のプロトコルです。

 さて、通信分野での「狭義の」プロトコルは、この会話を成立させる「通信の手順」を言います。無線通信ては、一方が送信している時は、一方はそれを受信しています。それを切り替える合図として最後に「 K 」と送信します。すると相手は送信・受信を反対に切り替えます。通信においては、こういう手順が厳密に決められています。

世界中のコンピューターを繋いで情報をやりとりするインターネットでは、厳密な通信手順が成立していないと大混乱となります。インターネットででやりとりされる信号の頭には、それがどういう種類の情報か、どこからどこへ送られるか等の本文以外に通信を成り立たせる信号が付け加えられています。これによって、誰が通信している間は誰が黙っているか、どの優先順位で会話をするかを機器が判断して、信号を流通させるのです。これらを成立させるために、実に多くのプロトコルが決められているのです。

 プロトコルには「階層性」があります。あるプロトコルを成立させるには、より基本的なプロトコルが必要で、そのプロトコルにはさらに基本的なプロトコルが必要・・・と、親亀の上に子亀、子亀の上に孫亀みたいな構造になっているのです。

 モールス符号というプロトコルの上に、SOSが遭難を意味するという取り決めが成立します。さらに、遭難信号がでたら、近くの船は必ず救助に行くという海運に関する国際条約が成立しています。逆にモールス信号を、船と船の間に伝えられるようにするには、電波の周波数や波形といった物理的プロトコル
を決めておく必要があります。

 コンピューターの資格の参考書などに「OSI参照モデル」というのが必ずのっています。ネットワークを成立させるための「物理層・データリンク層・ネットワーク層・トランスポート層・セッション層・プレゼンテーション層・応用層」というのかそれですが、プロトコルの階層を下から示したものです。

それぞれ細かい取り決めのある約束事です。初心者には何のことやら不明ですが、とにかくコンピューターと通信の世界は、何層にもわたる階層で複雑なプロトコルがある事だけは理解しておいてください。
 
 さて、初心者の人は次の用語を見て、何の事が分かりますか。

 アスキーコード ファィル形式 テキスト形式、HTML  XML  Unicord

  シフトJIS  Pordosフォーマット、全二重 TCP・IP SMTP 

 PIAFS 10BastT CVS形式 ISDN ADSL FDDI


 どれも意味不明とお思いでしょうが、みんなプロトコルである事だけは共通です。インターネットやメイルを設定しようとして解説書を見るとこんな言葉が並んでいて、頭がこんにゃくのようになった人もいると思いますが、約束事の種類なのです。結局は誰かがどこかで、かってに決めた事なので分かる筈がない事ばかりなのです。

コンピューターは、馬鹿まじめなので、教え込んだ規律はひとつ残らず守ります。世界中が通信できるようにコンピューターの世界はプロトコルでいっぱいです。言いたい事を一言だけ話すた前に「話していいですか。」「ここの回線空いてますか。」「私は○○ですが、××さんに話したいのですが。」そんな会話のための「仁義きり」「ご挨拶」ばかりが増えているのが、情報通信の世界です。

この世界で、情報をうまくやりとりするには、沢山の「プロトコル」を守っていかなくてはなりません。コンピューターの勉強は、こんな「約束事の習得」「会話上手になるための礼儀作法」を学ぶ事だと心得てください。人間の世界なら、会話の礼儀作法を破っても、嫌われるだけですが、コンピュー
ターではのプロトコル破りは「フリーズ」したり「文字化け」したり、すべてのコンピューターを巻き込んで、やりとりを停止させてしまったりするのです。

次回から、様々なな実際のプロトコルを解説していきます。プロトコルの意味を良く理解しておいてください。



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  きょうは、ここまで。
       ではまた。
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【編集後記】

 なんだか、「寒い」ですね。これ「やませ」って言うんです。


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