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     メイルマガジン 「ミクロコスモス」  総合版
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                  2002/6/22
         ミクロコスモス編集部
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    今日の句 山頭火 ・・ 旅の中に  第一回
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今日は山頭火の旅にかかわる句を紹介します。今回は、英訳も一部につけてみます。英訳してみると、また別の意味で味わう事ができます。意味理解を主眼とした英訳です。詩としてはどうでしょう。
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┃ 【種田山頭火】 明治15(1882)〜昭和15(1940        ┃
┃                               ┃
┃ 早大中退後いくつかの職業につくが、ことごとくうまくいかず、 ┃
┃なじめず、ひとり旅にくらした。                ┃
┃その句にかける意気込みは激しく、愚行と悟りの間を往来した深い ┃
┃魂に惹かれる読者は今も数多い。                ┃
┃非定型の句風は、前に誰もなく、後に誰もないような独特のもので ┃
┃ある。                            ┃
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 今日は、特に「旅」についての句を取り上げます。「人は、旅にでるだけで、すぐさま詩人になり、直ちに哲学をはじめる」と言います。人生の大きな出来事「誕生、学び、決断、出会い、別離、 死・・」そんな大事が、旅の小事として立ち現れるのです。

「旅は、人生の時間軸を、路の空間軸に置き換える」と言います。「どこまで、あとどれだけ。」「あそこで、ああしなけば。」「やっと、ここまで来てしまったか。」「もう、お終いなのか。」こんな、旅の地理感覚が、突然、人生の時間感覚に置き換わる瞬間があるのです。旅の文学作品が人生を教えるのは、そういう理由かもしれません。

英訳=ミクロコスモス編集部  
次の訳を参考にさせていただきました
→三浦久、ジェイムズ・グリーン

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【山頭火作品】

    分け入つても分け入つても青い山


【英訳】

  Wading through,
  And wading through,
  green mountains still stand by.

【鑑賞】

 夏に、林道のような長く続く道をたどると、この句が良く分かります。ほんとうに、分け入っても分け入っても山が続き、そして夏の青い空もどこまでもついてきます。それは不思議な感覚です。確かにいつか山は終わるのだけど、歩き続ける一瞬がなんだか永遠に続くように思えるのです。歩く旅をすると、時にそんな感覚の中を歩いていく事があります。

 【山頭火作品】


    この旅、果もない旅のつくつくぼうし

【英訳】

    This trip
    An endless trip,
    In sound of Tsu-ku-tsu-ku-boshi.


【鑑賞】

 帰る所のある旅と、そうではない旅は根本的に違います。帰る所のない旅をする人は、現代では希でしょうが、だから人生が帰る所のない旅である事を、ふと忘れてしまうのです。そんな時、人は遠いものを求めるようになるのです。つくつくぼうしは、今ここにいる私の存在そのものなのでしょう。もうひとつ似た作品があります。


  【山頭火作品】

    歩きつづける彼岸花咲きつづける

【英訳】

Walking through
Blooming a cluster amaryllis.


 【山頭火作品】

    まつすぐな道でさみしい

【英訳】

     
The road goes straight
    With Loneliness.


【山頭火作品】

    この道しかない春の雪ふる

【英訳】

There is only one road
Snow falling in Spring


【山頭火作品】

    わかれてきた道がまつすぐ

once road separated
straight ahed now


 上の三作品は道を題材にしています。旅は道をたどり、道と対話します。あての無い旅は、ふとした出来事で大きく変えられていきます。トンボを追かけていたら、終電車がいってしまって、それが由縁で不思議な宿で不思議な人に出会ったり・・・・迷うと、本風の吹く方向にでも行こうかと思ったりして。

 しかし、選ぶ事も出来ずに続く道もあります。そんな道に限っって、険しい道であったりします。そんな旅人には、道が供に、道が語り相手になります。だから、道の表情の豊かさが心をなごませるのです。

旅においては、前をみれば未来、振り向けば過去、横を眺めれば今なのです。

                      続く
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    きょうは、ここまで。 ではまた。
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【編集後記】
 土曜の朝九時から、小田原港では「朝市」がおこなわれる。もの凄く安いのだが、早くいって列の場所取りしないと買えない。でも干物は並ばなくても良い。こちらも安い。野菜も安い。九時半には、殆ど終わりになる。
 という訳で、編集長は季節はずれに「鍋物」を食べた。適当に買ったので魚の名は分からない。色々あった。怖い顔のもあった。

  で・・ 山頭火のまねして。一句。

    名はしらぬ魚 鍋からにらむ

               駄作だ・・

【お知らせ】

★ 漢文や古文を扱うと、引用の関係で、文字セットがおかしくなるのでしょうか、数人の方から文字化けの指摘がありました。文字化け(変な暗号ばかりの文になっている)している人は、報告してください。
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     ミクロコスモスロス出版局 
        メイルマガジン編集部
        編集長  森谷 昭一