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     メイルマガジン 「ミクロコスモス」  総合版
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            2002/6/20
         ミクロコスモス編集部
 
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     なとさんの古典講読
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 東洋哲学の なと さん に、よもぎちゃんと編集長が古典を教えてもらっています。ふたりとも、まじめでないので、ちゃちを入れたり、かってに古典を書き換えたり、訳分からない「意訳」をして、なとさんは呆れています。よもぎちゃんは、ミクロコスモス編集部の副編集長です。
 
今日の出典は「菜根譚」です。菜の根を噛みしめて味わうという意味の書物です。300篇ほどの言葉が残されています。

作は、中国明代の 洪自誠 の人。明代の末期に儒教・仏教・道教を学んで隠退の生活を送った人らしいけど、詳しい伝記が残されていません。 

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    菜根譚  (さいこんたん) より
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 ふたりとも、良いかな。今日は「菜根譚」より。まずは、原文だが、訳せったって、すぐには、できないだろうから、今日は訓読と解説を私がする。

【原文】

 一字不識、而有詩意者、得詩家眞趣。

 一偈不參、而有禪味者、悟禪教玄機。

【訓読】

一字をも識(シ)らずして、而(シカ)も詩意ある者は、詩家の真趣を得(ウ)。一偈(イチゲ)にも参せずして、而も禅味ある者は、禅教の玄機を悟る。

【なとさんの解説】

一字も文字を知らなくても、詩心のある人は、詩を書かないまでも、詩を表す事がで る。禅問答や禅宗の経文をひとつも知らなくても、機根のある者は悟りの境地に至る事ができる。

【編集長のちゃち】

 一字も知らなくても書ける詩がひとつだけある。それは・・・

   真っ白な 紙 だけ。
 
 禅の問答など、ひとつも知らなくても出来る事がひとつだけある。

  ただ、ぼっとしてるだけ。

【よもぎちゃんの意見】

 勉強はね、一日十文字覚えるとか、毎日段々ためてくもんなの。
 編集長は、鉛筆だと小学生3年位の字も書けないんだから。

【なとさん】詩心があり機根のある者と、ただのぼっとしているのと雲泥の差がある。・・次・・

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【原文】

 文章做到極處、無有他奇、只是恰好。

 人品做到極處、無有他異、只是本然。

【訓読】

文章は極処(キョクショ)に做(ナ)し到れば、他の奇あることなく、只(タ)だ是れ恰好(カッコウ)のみ。人品は極処に做し到れば、他の異あることなく、只だ是れ本然のみ。

【なとさんの解説】

 文章といものは、最高の域に達すると、特別な技を駆使するものではなく、ただぴったり合った言葉を並べるだけです。人間も、最高の域に達すると、特別に悟ったような風味があるものではなく、ただ自然にしているだけです。技巧を凝らしたりしないで、虫のように、 自然に生きれば良い。

【編集長のちゃち】

 初心の自然と究極の無為の、表面似たる事を隠れ蓑にして、技を磨かざる者、近頃頓に多し。技を尽くす先に、技の消えゆく事知る者少なし。さらに言う。宇宙自然、技より成り、自然の虫一匹たりとも、技を磨かざるものなし。故に、本然極処に到れば、他に異あることなし。

【よもぎちゃんの意見】
 
 インチキな偽古文書いて・・・ちゃんと古典の文法習いなさい。
 だいたい虫は勉強しないでしょ。虫は楽譜みて、鳴いたりしないの。

【なとさん】

原文に反対意見を述べているつもりらしいが、それじゃ意味不明。虫だって、ちゃんと努力したり、技を磨いたりするんだよって意味だろうが・・・なんなら漢文で反論を書いてみたらどうだ。・・・

【編集長】・・・・・・・・

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【原文】

 爲鼠常留?、憐蛾不點燈。

 古人此等念頭、是吾人一點生生之機。

 無此便所謂土木形骸而已。

【訓読】

鼠(ネズミ)の為(タメ)に常に飯を留め、蛾(ガ)を憐(アワレ)みて燈(トモシビ)を点ぜず」と。古人の此等(コレラ)の念頭は、是れ吾人の一点 生々の機なり。これなければ便ち所謂(イワユル)、土木の形骸のみ。

【なとさんの解説】
 
 ネズミのために、少しご飯を残しておいて、蛾を殺してしまうわないように、夜に灯りを点けないようにする。古い詩人の、この心づかいは人間が生きていく大切なものです。こういう、気持ちの無い人間は、土や木と同じだ。蘇東坂 の詩を引用している。小乗と言われようが、不殺生を守る事は人間が人間たる根元なのです。

【編集長のちゃち】

 凄いな。編集長なんか、たっぷりと溜めるから、ゴキブリやら蟻やら、生き物がたくさんご挨拶に来るぞ〜

【よもぎちゃんの意見】

 「それって、ただ食べ残して、片づけしないだけでしょう。
  まったく、も〜 ちゃんと原意を汲まないと駄目でしょ。」

【編集長】

人も動物もゴミも一体化していると言うこと・・・。で、どうも中国の仏教の受容形態って、インド人のそれと微妙に違っている気がするけど。どうなんですか。

【なとさん】

いきなり、真面目になったな。確かに、儒教や老荘思想などを基盤にして解釈する面が強いから、不殺生にしても、倫理的な意味あいが強い。土や木の存在まで、人の存在を並べて思考するような事はないかも知れない。東洋哲学としては、難しい問題だなあ。

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【編集部より】こなさんの古典シリーズは、ずっと続きます。ご期待ください。
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       きょうは、ここまで
           ではまた。
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【編集後記】

  今日は夏至です。春分、夏至、秋分、冬至 はきちんと休みにするべきだと思うのですが。自然の暦にしたがって色々の事を決めれば良いのに。
 
【お知らせ】

 最近、ちっと難しいのばかりだぞと、十代の読者からご意見いただきました。入門や紹介記事も増やします。

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      ミクロコスモスロス出版局 
        メイルマガジン編集部
         編集長  森谷 昭一
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