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ミクロコスモス総合版2002年11月14へちがら「只見線の旅」
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発行 ミクロコスモス編集部
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編集長の旅日記 只見線の旅
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編集長は先年、只見線の鉄道旅行をしました。10月半ば、一泊二日の旅でした。書いてそのままになっていた旅行記を、この季節に引っ張りだして、記事にしました。前世紀最後の年の旅の記録という事になるのでしょうか。 世紀を越えて、推敲しました。
只見線は福島県の会津若松から新潟県の小出までをつなぐJRのローカル線です。ウィークデーの一人旅でした。
編集長の只見線の旅
会津若松の駅前旅館を5時半に出て、駅に五時40分についた。乗客の姿はなく、駅員はひとりだけ。六時なって改札口はひらいた。6時15分発の只見線が、会津若松から出る最初の電車である。3両編成の電車。のっているのは10人以下だろう。小生の座った車両には、他にだあれもいない。
定刻、ホームのベルもならずに、本当に勝手に動き出していった。出発ベルになれた人口密集地居住の人種は、ローカル線の音なし出発は勝手がちがう。しかし、鉄道というのは本来これで良いのだ。山手線やら小田急やらが騒がしく、お節介過ぎるだけだ。
ひとつめの駅でひとり、高校生らしき「いなか気」のある女の子が乗ってきた。なんだか、リュックに体操服という勇ましい格好である。
町中のバス停のような駅に止まるたびに、高校生が増えてきて、だんだん通学列車の雰囲気になってきた。今や各地のローカル線を、なんとかにぎわせているのは、朝夕の高校通学なのだ。駅毎に高校生が増えていく。
すると、いきなり先ほどの女の子は、着替え(というより増やしていくだけで着付け)をはじめ、制服姿に変わりはじめた。周囲を気にする様子もない。
全国共通現象の、女子高生が体操服の上に制服を着る「股引姿」にだんだんと変わっていく。埴輪とも言われるが。
駅を通過するたびに、だんだんと高校生姿へ用意をしていくらしい。何駅目かで、足に「のり」でルーズソックスを貼り付る作業が終わると、女子高生全国共通ルックスがついに完成した。
完成すると、すぐ次の駅に到着。大声でその子の友達が乗り込んできた。ボックスが4人で埋まり、朝一番のおしゃべりが開始された。彼女達のあの正装は誰のためにするものなのだろう。どうも、男の子に対してでなく、自分の楽しみでもなく、決して周囲の大人達の目のためでなく、何よりも同性の友人の目のためらしい。
車内いっぱいに、高校生会話が飛び交う。会津なまりのある高校生言葉だ。高校生としての若者言葉と、全国共通の話題。日本全国、朝の通学列車は同じである。全国同じ高校生風の言葉に、方言の変調がかかるのは、言語学的にどのうよに分析させるのだろう。まず世代差があり、地方差がある。年代差は地方差を超えるのか。うむ、ちょっと、言語社会学してみた。
町を出て、田園地帯にくる。空はどんよりして、まだ暗い。田んぼの刈り取後の株がのびて田植え直後のよう伸びている。今朝は、それが白くなっている。霜がおりたのだ。当然、零度以下という事だ。
「今朝は寒いな。」と年輩の乗客の言葉が聞こえる。この地方としても、急な冷え込みで、初霜だったのかもしれない。一時雲が晴れて、遠くの山かみえた。朝に低く霧がかかる盆地特有の気象なのだろう。
男子、女子、同じ制服の高校生が増えて、車内に声が飛び交う。昨日、会津若松でみた蛍雪時代風の若松女子高校の生徒とは、違い マガジン ジャンプ 風の高校生達で列車はしめられている。
だんだん人家はなくなり、列車は容赦なく、山岳地帯に進んでく。こんな山奥に学校があるのだろうかと編集長は思い始めた。まあ、高校というはのとんでもない、山中にあったりはするけど。
車窓には湖が見え、そこに架かる鉄橋を渡る。紅葉ならば、鉄道写真家達の良い被写体なのだろう。
少し大きな駅舎がみえて、会津川口についた。高校生達は、どっと降りてしまった。時間は8時半前後だった。川口のどこに、どんな高校があるのだろう。これから朝のホームルームか。田舎の学校での仕事をまたしてみたくなった。
しかしあの最初に乗った女子高生は毎日2時間近く只見線に揺られて通っていることになる。往復で四時間。これを3年間続けるのだろうかか。ふと、箱根と横浜を往復していた生徒を思い出した。それぞれ事情があるのだろう。
車内は、また静かになった。列車の乗客は数人になってしまった。ここで半分ほど、只見線を来た事になる。しばらく停車。
只見線は、ここで登り下りの列車がすれ違う。車掌が大きなタブレットの輪を運んでいる。これは、単線で区間毎にたった一つしかない。列車が衝突するのを防止する制度だが、残っているのは、日本中でもどの程度だろう。見たかったひとつの風景だ。旅のひとつの目的が果たせた。他に珍しがる人もなく、タブレットは会津川口駅の風景に、当然のようにとけ込んでいた。
川口を出発。知らないうちに、空はすっかり晴れて、雲ひとつない。湖と見渡す限りの山と、鉄橋とトンネルが続く。本当にローカル線らしい景観だ。残念ながら、ここらはまだ紅葉一歩前である。良い年の、ちょうど良い日の、この天気の、この時刻に、この只見線にのったなら、さぞ美しい風景が広がる事だろう。
山と湖と小さな駅を繰り返と進んでいく。車窓にはりついて、楽しい旅の時間である。止まる駅には、ほとんど駅舎もなにもない。草だらけのブラットフォームに駅名の看板がひとつあるだけである。時刻表や全国地図に立派にのっている駅なのだが、実体は草にうもれそうである。冬の雪の中、どう列車は駅に停車するのだろう。冬の只見線の風景を想った。
沿線はは本当に山奥である。冬の大雪の時で道路の除雪が間に合わない時には、この列車だけが唯一の交通機関になるそうである。そんな時に是非また来てみたい。
只見についた。列車の旅の目的地である。ここで、降りてのんびりしても良い。でも、ここで降りたら、次の電車は夜6時までない。只見線は、気楽に途中下車を楽しめる路線ではないのだ。
只見は、なんとか町の様相を呈していて、店も宿もあるようだった。一泊してみたかったが、あれこれ考え、降りずに路線全部を乗り通す事にした。今回は、只見線に乗る事だけを目的にした。
だいたい只見線は、全線を走りきる列車は一日2本しかない。一本は今回乗車した朝6時発の列車。もう一本は夕方5時の発だから、風景を見られる列車はこれだけなのだ。もったいない。鉄道と言う文化を大切にして、その旅をもっと楽しんでもらいたい。車の旅は人を獰猛にするが、鉄道の旅は人を思慮深くする。
只見をでると、山々の樹木はすっかり色づいている。只見線最高地点で、紅葉に出会えたのである。みごとだ。
小さなトンネルを過ぎると、田子倉である。あたりは、すっかり紅葉して、空は真っ青で遠くまでつづく。本物の青空だ。陽の光はあたたかくなり、空気はすんでいる。別天地という言葉がうかんだ。
ここで飛び降りて、紅葉の山を登りたくなった。駅はまったくの無人で、売店も自動販売機もない。ここで下車したら、夕の六時まで列車はない。装備も食料もないので断念した。この駅は登山客専用なのだろうか。登山の装備の数人が下車した。
青い青い空が、山のかなたまで美しく広がる。山頂方向を望むと、あの向こうに永遠に広い世界がが続いているような気がしてしまう。田子倉は、そんな秘境の雰囲気をただよわせる。ひっそりとした、鉄道と山以外に何もない美しい場所だ。いつか、また登山の装備を整えて、来てみようと強く思った。
田子倉はトンネルの入り口に駅がある。田子倉を出ると、長いトンネルをとおる。会津と越後を隔てる山を貫く長いトンネルである。
川端康成の「国境の長いトンネルを過ぎると・・・」というのは、関越トンネルであるが、もうひとつの「国境の長いトンネル」が、この只見線のトンネルである。こちらは入口も出口も雪国である。
このトンネルを越えると、風景は一変する。紅葉は、まだまだで初秋の風景である。天国から帰ってきてしまったような少し寂しい心持ちになった。只見は、いつか必ずまた来たい。一回は深い雪の季節に、もう一回は、田子倉からの登山のために。
越後平野に抜けると、魚沼や広瀬という懐かしい駅名が続く。編集長はしばらく雪の越後に住んでいた。そこでの人々との会話に良く登場した駅名を通過していく。日本最高品質の米を生み出す地帯を通り過ぎ、終点の小出につく。まだ10時半ばである。
小出で列車から降りた乗客は小生を含めて四人だけだった。只見線の車両は、夕方の出発まで小出で休むらしい。越後平野から、只見の山をのぞむと、あの有名な名詩の一節を思い出した。
山のあなたの空遠く
幸い住むと人の言う
その山は只見の山ではないか。なんとなく、そう思った。
【編集長より】
この後、編集長は関越トンネルをくぐりぬけ谷川岳に登ります。
以下に只見線の全駅の写真があります。引用させていただきます。
http://www.asahi-net.or.jp/~IV4H-YKYM/tada/tada.htm
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今日はここまで ではまた。
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【獅子座流星群について】
もうすぐ獅子座流星群の日がきます。今年の予測はあまり出ないとの事ですが、はずれる事もあります。今年は月が出ていて条件は良くないです。ピークと予想される時刻が日本では昼間になってしまいます。11月19日の13時と19時が予想ピークだそうです。18日の夜更け19日の夜更けあたりに見てみるしかないですね。どうも条件良くないです。
編集部では責任はもてないので、各自で良く情報収集してください。
次でライブをやってます。
http://www.nmt.ne.jp/~star/
次に詳しい情報があります。リンクをたどってください。
http://www.nms.gr.jp/nmsleo0.html
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ミクロコスモス出版 ミクロコスモス編集部
編集長 森谷 昭一
★ 編集部宛メール micos@desk.email.ne.jp