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  ミクロコスモス総合版2002年11月9日コン講座「階層性」
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                発行 ミクロコスモス編集部

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   コンピューター講座 「階層性」
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 小学校の時、手紙の宛名の書き方を習った。県を書いて、市を書いて、それ から町を書いてと、いわゆる住所の書き方を習った。自分の住所を  神奈川県 横浜市 戸塚区 名瀬町 ・・ と書いて練習した。

ところが、編集長とまわりの数人は、これに飽きたらず、「そうか、こういう ふうに書くなら、もっと上もあるだろうと、「宇宙 、銀河系、太陽系、地 球、アジア、日本、関東地方、神奈川県・・・」などと、実用上は無用の宛名 を封筒に書いて、いい気になっていた。

そのまま、笑っていた先生の包容力は、今でも尊敬と感謝の念をもっている。 しかし、アホどもは、さらに図に乗って、小さい方にもいくだろうと、「森谷 家、昭一の部屋、机、二番目の引き出し、筆箱、・・」とか「戸塚小学校」第 二棟、五年、3組、3斑、机、引き出し・・・」てな「宛名」をつくり同類の 友達とラベル貼りをしたりした。変なやつらだったかもしれない。(・・戸塚 小の生徒でした・)

 しかし、これが編集長が「階層性の自己認識」を得た瞬間だったかも知れない。理科教育の専 門家が、何よりも子供に持たせたい、その段階を踏ませたい認識図式のひとつ が「階層性認識」なのだが、編集長とその仲間は、四年だか五年で獲得した事 になる。発達段階として、早かったのか遅かったのか分からないけど、与えら れた思考を拡大解釈して遊ぶというのは、少数派だった気がしている。

 このように「まとまりが、まとまりをつくっている」という世界の認識の仕 方の方略を「階層性認識」と言う。これは、さまざまな分野で、物事を的確に 理解する基本となる。

先ほどの

 県 市 区 町 番地  地方 国 国家群 等

は地理学や政治の基本概念だろう。

 生態系・個体群・人間・消化系・胃・表皮組織・吸収細胞・核・染色体・染 色糸・DNA・塩基分子・窒素原子・素粒子

という自然の階層性認識は自然科学者には、今更空気のように当然の思考であ る。この階層性は言語・音楽・工学・美術・心理・社会などでも基本の認識の 方略なのだが、

そこら辺はまた、ミクロコスモス大学講座といちもんめ講座で、詳しく取り上 げる事にして、本日はコンピューターを理解するための階層性の認識について 説明したい。

宇宙 、銀河系、太陽系、地球、アジア、日本、関東地方、神奈川県・・とい う思考ができる人間にはコンピューターは簡単なものだ。コンピューターは階 層性思考で出来ている。

URL いわゆる「アドレス」というのがある。×××.or.jp という  ○○ドット×× というやつだ。これは階層性をしめしいる。 

  地球、アジア、日本、関東地方、神奈川県 

を ドット方式で表現すれば、

  地球 . アジア . 日本 . 関東地方 . 神奈川県

となる。見にくいとは思うが「.」で階層性の区切りをつけるのである。組織 別の
 co or ac ed gv 
 (企業 組織 大学 教育機関 政 府機関 )
や 国別の 
 jp uk ch fr sp 

等と、アルファベッ トを組み合わせて、まがりなりにも世界中の人間に 「番地」を与える事がで きる事になっている。


  小学校、第二棟、五年、3組、3斑、机、引き出

というのを子供の時に考えたと言ったが

  家・部屋・机・引き出し・書類入れ・書類綴り・ページ・行・文字・・

という方に細かくしていく思考を使えば、世界中のあらゆるものに番地を与え る事ができる事になる。

この階層性思考をコンピューター内部に浸透させた体系が「ディレクトリー」 という概念である。「ファイルシステム」でもある。コンピューター内部にある 情報を、収納してある「家具」、「引き出し」、「書類入れ」毎に区切って整 理整頓していく。

インターネットでページを見回っていると、

  www.yahoo.co.jp/promotions/survey/20021107t/index.

といった文字列が上部で明滅しているのに気づかれるだろう。これがイン ターネットでの「ディレクトリー」である。この方式で

 森谷家の居間の東のキャビネットのAの引き出しの鉛筆箱 を表現すると

 森谷家/居間/東のキャビネット/Aの引き出し/鉛筆箱

という具合になる。「/」で階層性の区切りをつけるのである。実際にはどこ ぞのコンピューターのハードディスクに格納されている情報の区切り方にな る。実際にはアルファベットで

 /usr/lib/netscape/bookmark.htm

なんて書き方になる。

コンピューターを動かすのにマウスなんてなかった時代には、情報を移動させ るのにキーボードから

 $ cp -v hoge1/bokoboko2

なんてのを打ち込んで情報を操作した。これはデーターを複製する命令である。


「サイト」という言い方は、「森谷家」というようなレベルの階層性を示す用 語であある。

 yahoo.co.jp/  なんてのは 「サイト」 にあたる。


この情報の管理のしかた、家具や引き出しに整理してラベリングする方法、あ るいは 書物や書類に見出しをつける方法を系統的に行えば、世界中にあるあ らゆる情報を一元的に体系化する事ができる筈だと言うのがこのシステムの根 本にある思想である。階層性思考を、情報の世界に適応したものだ。

情報の階層性を区切る記号としては、いろいろ流儀がある。「/」を使うのは  ユニックスでの昔からの方法で、インターネットはこれを踏襲している。
 
  森谷家/居間/東のキャビネット/Aの引き出し/鉛筆箱

ウインドウズでは

  森谷家\居間\東のキャビネット\Aの引き出し\鉛筆箱

と 「¥」を用いる。実際にはアルファベットで

 C:¥windows¥comand¥misem.sys

マックはどうなんだと言うと、基本的にマックは、こういうキー操作の階層性 表示はない。こういう文字ばかりで気が狂いそうな操作から、マウスを使っ て、エレガントに情報を移動したり、複製したり出来ようにしたのが、マック のシステムなのだ。だから、基本的にこういう文字で、階層性を操作する事はな い。

 マックでは フォルダーと呼ばれる本当に書類フォルダーを「もどき」した 絵柄で、階層性を管理する。フォルダーを開いて、その中にまたフォルダーが あって・・・複雑な階層性でも、フォルダーの中にフォルダーを「入れ子」に していく方式をとっている。

ウィンドウズでも、Xウィンドウの ユニックス でも同じですが、これはマ ックの方式を取り入れて進化させたものだ。だから、ウィンドウズやユニック スには、階層性を画面で操作する方法と、キーからの文字列で操作するふたつ の方法がある。画面操作方式の元祖のマックは、フォルダー方式だけだ。

ただ、OSXになってからは、裏にかくれていたユニックスが、少し表に出て きましたので、「/」を用いる操作も出来るようになっている。

どの方式でも、入れ子構造が数多く積み重なると、混乱して、「どこになにが あるのやら」「どこに、行った私の書類」になってしまいます。階層性の混乱 は、情報を行方不明にしてしまいます。フォルダーの奥に隠れてしまうと、書 類探しも大変になる。

 そこで、フォルダーによる階層性管理を補うために、いろいろ補助手段も出 来ています。ウィンドウズでは「エクスプローラ」という表示法をとってい る。ツリーを用いた直感的に理解しやすいものである。初心者にはちょっと操 作しにくいが慣れると極めて便利である。

 マックの場合は、△ を 起こしたり、倒したりして、階層性を展開させる 方式を使っている。これもさまざまなソフトでに応用されている。ここら辺の 細かいテクニックは、またの機会に。

 さて、コンピューター世界の「階層性」は、情報の実体の階層性と、操作す るものが感覚的に捉える「バーチャル」な階層性が別立てになっている。コン ピューターの画面上、みかけは 国/地方/県/市 というきちんとした階層性 になっていても、実際の情報のありかは別の所にあったりする。

 or.jp というアドレスだから、そのデーターは日本にあるかと思う と、データーの実体はアメリカのコンピューター内にあったりする。最近は、 あるデーターが、自分のコンピューター内にあるのか、フランスの山奥にある のか、みかけから判別できないような事もある。ここらへんがコンピューター を分かりにくくしている。情報実体と「みかけ」との違いはまた、別に学んで みたい。

さて、コンピューターの「ちんぷんかんぷん」な用語であるが、次のものはみ な「階層性」に関する言葉だ。

 ドライブ  シリンダー クラスター トラック セクタ 

というのは、物理的な情報の実体をの階層性をしめす言葉である。

 ドメイン ワークグループ 論理ドライブ  パーテーション レコード  モジュール 

ここらへんはみな「情報のまとまりかた」つまり「階層性」を示す言葉であ る。だんだん学んでいきたい。

階層性を理解できないと、コンピューターはうまく使えない。逆に階層性さえ 理解してしまえば、コンピューターなど、どんな新手の概念が出てきてもおお よそ理解できる。

階層性はは理解できても、実際に運用するには、毎日の慣れも必要だ。そし て、毎日の心がけも必要である。整理整頓の基本は階層性なのである。日々の 片づけでも

 衣類
  上着
   シャツ
   セーター
  下着
   靴下
  ・・・
といった階層性を定めて、管理しているだろう。だらしない人は、階層性管理 ができない。こういう人は、どうもコンピューターと相性が良くないかもしれ ない。

 さて、宇宙 、銀河系、太陽系、地球、アジア、日本、関東地方、神奈川 県、横浜市 、戸塚区 、名瀬町森谷家、昭一の部屋、机、二番目の引き出 し、筆箱、・・と馬鹿な事を考えていた編集長の事を笑っていないで、自分を 中心とした、様々な階層性を考えてみて欲しい。

言葉の世界の階層性、音楽階 層性、心の階層性、などかどんなものか分かるだろうか。別の場で、説明する機会もあると思う。

 ここらへんの思考を身につけないと、コンピューターに振り回される。

【まとめ】

 ○まとまりがまとまりをつくっている事を 階層性 という。
 ○階層性を理解する事が、コンピューター理解の鍵となる。


【予告】
 
 次回は、階層性を操るソフトである、アウトラインプロセッサーについて学 んでみたい。文章書きには必須のソフトである。

【推敲時の追加】
 マックはOSXになってから、基本をすっかりユニックスにしました。したがって、階層性表示は、ユニックス方式です。まあ、特別な使い方しない限り、今でもそんな事を気にする必要のないOSですが。
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ミクロコスモス出版  ミクロコスモス編集部
   編集長  森谷 昭一