この国の害虫が薬物耐性をもつようになってから、数年がたった。 最初は高嶺の花だった、家庭用害虫駆除専用ロボットも、需要に後押しされていまや、廉価パソコンより安い価格で買えるようになった。 うちの「補遺補遺さん」は3世代目の廉価機だが、 本体カバーをあけて直接コネクタをつなぎかえることで、拡張性を持たせる方法があるとネットで知ったので、ぼくも試してみることにした。 今回使用するオプションは、海外製の「リキッドユニット」だ。 本体中央部の一部と外装を交換することで、虫を寄せ付ける特殊な潤滑液を分泌できるというものだ。 ようやく取りつけとドライバインストールが終わった。 早速補遺補遺さんの電源をいれてみる。 「ヴィン・・・」 あれ?様子がおかしいぞ。 いつも無表情な補遺補遺さんが、どういうわけか「とろん」とした目つきでボクを見ている。 ハンドガンを捨てて、よろよろとボクのほうへ向かってくるようだ。 今までにない新しい挙動に興味を覚えたボクは、しゃがんで様子を見守ることにした。 至近距離で、ボクの顔をじっと見る補遺補遺さん。 短い指がすっと伸びて、ボクのズボンのボタンをつかんだ。 「なんだ、これ」 補遺補遺さんはボクの疑問にはかまわず、ぎこちない手つきでボタンをはずすと、そのままチャックを引きおろしてしまった。 「お、おい、なんだこの動きは?聞いてないぞ」 問いかけたところで、答えるロボットでもあるまい。 “それ”はパンツの前の開口部を探し当てると、ボクの一物を外気にさらけ出した。 「ちょっ、な、なんだこれ」 さすがに気持ち悪くなってきたので、リモコンを引き寄せて電源を切ろうとしたが、 あいにくリモコンの電池が切れて、停止命令を出すことができない。 あわてて引き離そうとしたものの、小さいながら強力なアクチュエーター出力を誇る補遺補遺さんの握力で、ひっぱられた一物の皮が悲痛な状態をもたらすだけだった。 「ど、どうすりゃいいんだ」 引き離すのが無理とわかったボクは、どうすることもできずに、ただ“それ”の行動を見守るしかなかった。 対象が逃げないことを確認した補遺補遺さんは、さっきまで強くつかんでいた皮を優しく押さえ、両手でなでさすり始めた。 気持ち悪いと思いつつも、下半身は敏感に反応しはじめる。 やがて、十分に大きくなった一物のサイズを確認すると、補遺補遺さんは、一物をよじのぼるようにして、先端の皮を剥きにかかった。 「!」 トーク機能のない廉価版補遺補遺さんに、口腔はない。 それでも、まるで舌でなめとるかのように、一心に唇での愛撫をする“それ”の行動は、あきらかに本来のプログラムにはないものだ。 しかも、時々ボクと一物の両方を、かわるがわる見つめる動作までする。 『こうなったら、どこまでやるつもりなのか、見届けてやろう』 ボクののどが、ごくりと鳴る。 背中のスナップボタンをはずしてやると、補遺補遺さんは一度だけうなずき、自ら衣装を脱ぎ捨てた。 そこから先は、想像を超える世界だった。 拡張キット付属の外装は、オリジナルよりもはるかに人間くさく、 きめ細やかで吸いつくような肌ざわり、絶妙な弾力をもつ局部の感触・・・ボクはその魅力に、ほとんどとりつかれそうになった。 ボクの一物にまたがり、しきりに腰を押し付けてくる補遺補遺さん。 雁首に腕をまきつけたまま、ほおや唇、小さな乳房で、懸命に愛撫をくり返す。 かすかな駆動音は、彼女のあえぎ声とも思えた。 幼い割れ目から、分泌液が流れ出す。 それに伴い、腰の動きも直線から、いびつな円にも似た軌道に変わっていった。 ボクは興味にかられて、可愛らしい尻穴のモールドに指を伸ばしてみた。 激しくのけぞる補遺補遺さんの身体。 だが、彼女は愛撫をやめようとはしない。 時折快楽にたえるように不規則な停止をくりかえしつつも、補遺補遺さんは、ボクを高みへと導いていった。 それが使命であるかのように。 「ほ、補遺補遺さん、ボクもう・・・出るっ!!」 びゅるっ!ぶしゅしゅ! どっく、どっく、どっく。 通常のオナニーとはまったく違う未知の刺激に、 ボクの先端からは、驚くほど大量の粘液が放出された。 補遺補遺さんの顔にかかる、濃くて重い精液。 その感触に感極まったように、彼女もまた、股間から液体をを吹きだして動かなくなった。 『待機モードに移行したのか・・・』 心なしか幸せそうに見える彼女の寝顔。 ボクは愛しいこの小さな存在を傍らに置くと、泥のような眠りにおちていった。 ・・・ところで、ひとつ忘れていたことがある。 補遺補遺さんの股間から出る液体は、「虫をおびきよせる」ためのものなのだ。 ―――ボクが再び目をさましたとき、そこに広がっていた光景は、 棘のついた足でボクの股間をはい回る、害虫の一団と、 勇ましくハンドガンで狙いを定める、補遺補遺さんの姿だった――― |