当校の司書長であらせられる童子切安綱様
害虫駆除装置を見て書き綴られたものです。
「メンテナンス中」


主任「これかい?特定オブジェクト視認でひっくり返るやつってのは」

サービス「まあ、普通のゴキブリタイプなら何てことも無く、ちゃんと撃退してくれるんですけどね、

なんか、ムカデ・ナナフシ系の、細長い害虫をみると、このポーズになるんですよ」

主任「一言で表現すれば“ギャフン”て感じだな」

サービス「なんですか?それ」

主任「気にするな。まあそれより原因を確かめなきゃな・・・こいつ単体の問題なら、リコールもパッチ当ても必要なくなるしな」

“棍棒さん”を再びもとの直立に戻し、リセットする主任。

バッグから何か派手な成形色の物体を取り出す。

サービス「ちょっ、なに考えてるんですか!」

主任「みろよ、効果てきめんだな」

案の定、ひっくり返る棍棒さん。

主任「スイッチを入れてみよう」

“あぶないおもちゃ”の先が揺れるのに反応して、メインカメラが追跡反応を示す。

主任「興味があるらしいな」

サービス「あるわけないじゃないですか。単純自律行動しかできない、駆除専用ロボットなんですから」

主任「んじゃ、試しに使ってみよう」

サービス「だから、そんな機能ついてるはずが・・・ああっ!?」

棍棒さんの中心部に飲みこまれる玩具。

先端だけだが、しっかりホールドされている。

主任「ここだけ、海賊版の追加キットってわけだ」

試しに玩具を抜いて、自分の指を入れてみる主任。

微小スケールにもかかわらず、中は想像以上に複雑な動きをしている。

主任「ローテクだが、設計は確かなようだ・・・これならユーザー自身を傷つけることなく、“発射”に導くことができるかもしれん」

サービス「じゃあもしかして、あの“ひっくり返り”は、『受け入れOK』のポーズってわけですか?」

主任「しょっちゅうやってるうちに、棍棒さんが勝手に学習したんだろう。

それともこのデバイスのドライバについていた機能を、ユーザーが勘違いしたのかもしれん」

サービス「じゃあ、リコールも修正ファイルもなしってことですね」

主任「ああ。

“お客様の改造によるクレームは、応じられません”って、箱にも保証書にも書いてあるからな。

それにしても、AIBOの頃には考えられなかったことを、

人型になったとたん、すぐ実行に移す輩がいるんだな」

・・・その後、火星製薬の競合製品でも、やはり同様の異常を訴えるユーザーが、2ケタを下らなかったという・・・