社会福祉法人 日本ライトハウス養成部

1970年7月7日から9月30日までの約3ヶ月間、日本ライトハウスとAmerican Foundation for Overseas Blindの共催でわが国初の「視覚障害者歩行訓練指導員講習会」を開催(岩橋英行監修、視覚障害者の歩行および訓練に関する参考資料集(その2)社会福祉法人日本ライトハウス、1973).講師:Mr. Robert C. Jaekle(AFOB Mobility Consultant)

1972年厚生省(当時)の委託を受けて、盲人歩行訓練指導員研修を実施(昭和47年7月6日付社更第107号厚生省社会局長通知「盲人歩行訓練指導員研修事業について」)

1994年厚生省(当時)の委託を受けて、視覚障害生活訓練指導員研修を実施(平成6年7月27日付社援更第192号厚生省社会・援護局長通知「視覚障害生活訓練指導員研修事業について」)

2001年厚生労働省の委託を受けて、視覚障害生活訓練指導員研修を実施(平成13年3月30日付障発第141号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「視覚障害生活訓練指導員研修事業について」

国立障害者リハビリテーションセンター学院

1990年に1年間の課程で視覚障害生活訓練専門職養成課程を開設.(平成2年厚生省告示第85号)

1999年に2年制へ移行(平成11年厚生省告示第91号)

日本盲導犬協会付設 盲導犬訓練士学校
2004年わが国初の盲導犬訓練士学校を開設
杖を使ったオリエンテーションとモビリティについても学ぶ.

「歩行訓練士」という呼び名について

最近、視覚障害あるいはロービジョンリハビリテーションの分野の広報の中に以前にも増して下のような記述をよく耳にします.「視覚障害生活訓練指導者」と「歩行訓練士」各呼称の違い、意味の違いは明らかです.二つの呼称を同義に使うことのないようにすべきだと思います.

「視覚障害がある人へのリハビリテーションを行う視覚障害生活訓練等指導者のことを「歩行訓練士」といいます.歩行訓練士と聞くと、歩くための訓練を主に行っていると思うかもしれませんが、歩行訓練の他にも相談を受けたり、コミュニケーション訓練をしたり、生活するうえで必要な動作の訓練を行ったりしています」
(視覚障害者支援サービスを提供する公立のある機関のホームページから引用)

「歩行訓練士」はもともとは日本ライトハウスの「歩行訓練指導員養成講習会」(1970年)その後の「盲人歩行訓練指導者研修」(1972-1993年)を修了した人たちの呼称でした(資料1、2&3).その後コミュニケーション、日常生活動作など歩行以外の訓練項目についても修得する「視覚障害生活訓練専門職養成課程」(1990年)が国立身体障害者リハビリテーションセンター学院(現、国立障害者リハビリテーションセンター学院)に、同じく「視覚障害生活訓練指導員研修」(1994年)が、日本ライトハウスに開設されました(資料4).訓練士養成プログラムが、歩行訓練のスペシャリストからリハビリテーション訓練のゼネラリストへ転換した訳です.それらの養成課程を修了した人たちはそれぞれ「視覚障害生活訓練専門職」あるいは「視覚障害生活訓練指導員」と呼ばれることになりましたが、それまでの講習会/研修を修了した人たちすなわち「歩行訓練士」も現役でしたから、歩行訓練のスペシャリストとリハビリテーション訓練のゼネラリストが混在し、新旧2種類(歩行訓練士と他の二つ)の呼び名が併存する状況が生まれました.

歩行訓練が始まった当初は訓練は専任制で、歩行訓練士は歩行だけを担当するのが一般的でした.1980年頃から、分野毎の担当制を取り払い、訓練士はすべての分野を担当する現在のような形態が普及し始めました.前述の養成プログラムの変換はそんな状況を反映したのか、あるいは養成プログラムの変換が訓練士の職務形態に影響を及ぼしたのか定かではありません.スペシャリスト歩行訓練士の養成が終わって、20年余り過ぎ、現在活動している訓練士の大多数は「視覚障害生活訓練専門職」あるいは「視覚障害生活訓練指導員」です.かれらの最も多くが従事しているのは歩行訓練で(資料4)、スペシャリスト歩行訓練士はごく少数の存在になりましたが、歩行訓練が視覚障害リハビリテーション訓練の中核であることは今も変わっていません.

参考資料
  1. 岩橋英行監修、視覚障害者の歩行および訓練に関する参考資料集(その2)、社会福祉法人日本ライトハウス、1973
  2. 昭和47年7月6日付け社更第107号厚生省社会局長通知「盲人歩行訓練指導員研修事業について」
  3. 視覚障害リハビリテーション協会の概要(http://www.jarvi.org/general/intro.html retrieved March,2011)
  4. 平成6年7月27日付け社援更第192号厚生省社会・援護局長通知「視覚障害生活訓練指導員研修事業について」
  5. 野口忠則、小林章、吉野由美子、田邊正明:平成21年度視覚障害者生活訓練専門職現況調査の結果について、第26回国立障害者リハビリテーションセンター業績発表会、平成21年12月22日(http://www.rehab.go.jp/achievements/japanese/26th/05.pdf. retrieved March, 2011)

教科書・参考書

Hill,E.W.& Ponder,P.,Orientation and Mobility Techniques, A Guide for the Practitioner, AFB Press, 1976


Jacobson,W.H., Art and Science of Teaching Orientation and Mobility to Persons with Visual Impairments, AFB Press, 1993


Lagrow,S.& Weessies,M., Orientation & Mobility: Techniques for Independence, The Dunmore Press Ltd., 1994


文部省、歩行指導の手引き、文部省、1985


大倉元宏編著、村上琢磨著、目の不自由な方にあなたの腕を貸してください−オリエンテーションとモビリティの理解−、(財)労働科学研究所出版部、2000


東京都盲学校自立活動教育研究会、私たちの考える歩行指導Q&A- 視覚障害教育の現場、読書工房、2006


村上琢磨,関田巌共著、目の不自由な方を誘導する ガイドヘルプの基本 初心者からベテランまで、第2版、文光堂、2009


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