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Michael Pit旅公演日記 前のページへ 次のページへ
三浦綾子『銃口』の世界を訪ねてpart1

(2002.夏)
 旭川の記念文学館にて

いま私は2002年の9月公演 『銃口 教師・北森竜太の青春』 の稽古の毎日です。
7月下旬、旅公演のあいまを縫って取材のため北海道旭川市と歌志内市に行ってきました。その中で印象に残った事をいくつか書いてみました。

旭川・三浦さんの取材した質屋さんにて

物語の主人公である竜太の家は質屋で、その姉の役を演ずる私は質屋の娘ということになります。できれば三浦さんが取材したというお店でお話を聞きたくお電話で伺ってみたところ、来てもよいとのこと、おじゃまさせていただくととても暖かく迎えて下り、また幸運にもおばあさんから昔の質屋さんの仕事についてくわしくお聞きすることが出来ました。

おばあさんはお兄さんの質屋を娘時代から手伝っていました。こちらの家に嫁いでからはからだの弱かったご主人のために実家を見ならって家で営業できる質屋を昭和22年から始められたとのこと、当初は近くにある陸上自衛隊駐屯地から来るお客さんがほとんどで、給料前にお金がない隊員がカメラなどを質草に持ってきたそうです。多いときは200人のお客さんがきて、子供のおしめを替える暇もなかったとか。

「質屋はお客さんが持ってきた質草がどんなひどいものであっても、"だめ!"と言う言葉は絶対に言ってはいけなかったのよ。
「質屋に来る人は後ろめたさを必ず持っているのね。だから店で近所の人と会うことがないように早く仕事を済ませてその人をお店外に出させてあげました」

おばあさんが近所でお客さんと会っても絶対目を合わせないようにして気をつかったそうです。質屋さんが「庶民の銀行」と親しまれてきたのは、こういう人情があったからこそなのですね。
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