青年劇場 第77回公演 (2000秋公演)
作:松田章一 演出:松波喬介 |
この作品の主人公、島田清次郎は、大正時代に実在した小説家です。
金沢の遊郭裏にある置屋で母と貧しい生活のなかで育ちながら、おのれの才能に対して自負を持ち続け、20歳で長編小説「地上」第一部を書き上げたところ、50万部も売れ、大正期最大のベストセラーとなりました。文字通り彗星のごときデビューです。その後、日本人の国際ペンクラブ会員第一号にもなりました。
この大成功で天才作家としてもてはやされる一方、生来の傲慢さに拍車がかかって数々の奇行を繰り返すようになっていったそうです。これが周囲からの孤立を生み、恋愛事件をめぐる致命的なスキャンダルで出版社からも見捨てられ、ついには精神を病み、巣鴨の精神病院に収容されて31歳の短い生涯を終えました。その後、約半世紀にわたって、文学史から抹殺されることになったのでした。
この作品は島田清次郎の金沢時代と上京してからの生活を通して、ひとりの男の成功と没落、その背後の今世紀初頭の時代状況を浮かび上がらせます。彼は自己過信におちいった単なる敗残者だったのか、それとも社会に闘いを挑んで力及ばず挫折した英雄だったのか…。真相は舞台で明らかになることでしょう。
わたしはこの作品で、遊郭で働く「かすみ」という名の肺病に冒された娼妓役で出演します。大人の役です。ぜひ見にいらしてください。
(文責・大嶋)
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