青年劇場 第70回公演 (1997秋公演)
作:布施博一 演出:堀口始 |
1945年8月6日、広島に投下された原子爆弾で被爆した一人の女性。
彼女は、それから50年、自分を被爆者だと言う事を隠し、表向きは有名女優北川すずとして、華やかに生きてきました。
幕が開くと、そこは北川すずを準主役にしたプロデュース公演、サトウハチロー物語の楽屋が舞台になっています。楽屋には、すずのむかしからのファンと言う町長や元民政党幹事長なども出入りして、宿は個室、内湯がなければ駄目、水着姿はお断り、恋い多き女と呼ばれた、すずの若き頃の女優時代が華やかに語られてゆきます。
そんなすずに嫉妬する若い女優・すずに恋心をうちあける脚本家・・・・この作品は、そんな楽屋内の人間達のすがたを、ユニークに描きながら、なぜすずが半世紀もの間、誰にも被爆者だと言う事を語れず、自分の胸ひとつに収めてこなければならなかったのか・・・・原爆を忘れようとし、むしろ、「ふつうの人間」として生きようとすればするほど、人生の節目節目で<原爆>につきあたってきたということだったのかもしれない・・・・
「甦る夏の日」、もう一度あの戦争のもたらした悲劇を、今の自分と重ね合わせてそれぞれに引き継ぐ・・・・そんなことを考えながら観ていただきたい作品です。
(文責:大嶋) |
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