準の名前の由来
 羽犬塚 準・・・ずいぶん変わった名前だなあとお思いでしょう。

 まずは名前から。
 「準」という字は訓読みで「みずもり」と読みます。水平を測る器具という意味です。「水準器」という言葉があるとおり、一種の秤のことを指します。
 準は天秤座生まれなので、秤にちなんだ名前を付けたのですが、もう一つ重要な理由があります。
 いろんな人間がいますが、なかには自分より強い人間にはこびへつらい、弱い人間は徹底的にいじめたりするひとがいます。そんな人間の方が世渡り上手で成功したりするので始末におえないのですが、人間としてみれば最低レベルです。また、明らかに偏っているにもかかわらず、自説をひとに押し付けようとする人もいます。こんな人間も、お近づきにはなりたくありません。
 準にはそんな人間にだけはなって欲しくないので、この名前には偏らない、公平なものの見方のできる秤のようなひとになって欲しいという親(?)の願いが込められているのです。
 それと、私のプロフィールにも書きましたが、佐藤さとる先生の児童文学、『ジュンと秘密の友だち』という作品がだいすきで、その主人公から名前を拝借したというのもあります(あちらのジュンくんは「潤」という字でしたが)。実は幽霊であるダイちゃんという男の子と、ジュンくんの交遊をえがいたすばらしい物語です。結局、二人はある事情で二度と逢えなくなってしまうのですが(そのあたりはぜひ読んでみて下さい)、そこから一節だけ引用させてもらいます。
それでもおれはジュンちゃんのことは、忘れないよ、といって、ダイちゃんはにこにこしました。そのときのダイちゃんは、もうジュンのよく知っている、にくめない笑顔のダイちゃんでした。
佐藤さとる『ジュンと秘密の友だち』講談社文庫より
 こんなすてきな作品が自分にも書けたら、私は死んでもいいなあ・・・。

 そして、やっぱり気になるのはその不思議な苗字ですね。
 羽犬塚というのは、福岡県の地名からもらいました。
 鹿児島本線、久留米駅から3駅下ったところに、羽犬塚という駅があります。福岡県は市の名前と代表駅の名前が違うまちが多いです。県都福岡市=博多駅、北九州市=小倉駅、豊前市=宇島(うのしま)駅といったところです。羽犬塚駅も、筑後市の表玄関にあたります。
 筑後市は、なんの変哲もないまちです。およそ観光とは縁のない、普通のまちです(地元の方、ごめんなさい)。しかし、私はこのまちが好きで、何度か訪れています(私は筑後市から日帰り圏内に住んでます)。理由は、このまちに面白い伝説があるからです。
 昔、豊臣秀吉が九州征伐にやってきたとき、どこからともなく「羽の生えた空飛ぶ犬」が現れ、秀吉軍を手こずらせたそうです。とうとう秀吉自身がその犬を射止めたのですが、「敵ながらあっぱれ」ということで墓(塚)をつくってやったそうです。羽犬の墓があるところで、羽犬塚という地名になったと伝えられています。
 この伝説を聞いて、私は羽犬に逢ってみたくなりました。
 私は犬キャラが好きだったりします。誕生日がいっしょの「スヌーピー」や、バルセロナオリンピックのマスコットで、ハビエル・マリスカルというひとの作品「コビー」(おぼえてますか?)、ビクターの犬「ニッパー」などです。
 中でも一番好きなのは、藤子A先生の漫画に出てくる、犬のようで犬ではないキャラ、ビリ犬です。
 『ビリ犬』はアニメ化されましたが、これがのんびりホンワカしたすてきな作品でした。
 ビリ犬は耳を使って空を飛ぶことができます。この伝説を聞いたとき、真っ先に思い浮かんだのがビリ犬のことだったのです。もしかして、ビリ犬のご先祖が空飛ぶ犬に間違われたんじゃないかと、とりとめのないことを想像したのでした。
 さきほど豊臣秀吉に成敗されたと書きましたが、この伝説にはもう一説あって、豊臣秀吉がかわいがっていた羽の生えた「ように」すばしっこい犬がこの地で死んで、秀吉が墓をつくってやったというお話です。こちらを「忠犬説」と呼び、先ほどのを「暴犬説」と言うそうです。
 地元の方は「忠犬説」がお好みのようですが、それでは困るのです。だって、羽の生えた「ような」犬では、普通の話で終わってしまうからです。やはり、羽の生えた空飛ぶ犬がいた伝説を、私は支持したいのです。
 よく考えてみれば、秀吉は九州にとっては「侵略者」です。その侵略者に身を挺して闘ったのだから、地元にとってはりっぱな忠犬ではないでしょうか。それを暴犬だと言われては、羽犬くんは悲しがっているかもしれませんね。
 何回目かの羽犬塚訪問のとき、JR羽犬塚駅前で白い子犬が私の横をすり抜けていきました。ふと気になって振り返ったとき、その犬はもういなかったのは、やっぱり気のせいだったのでしょうか?。

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