●機動戦士ガンダム「特別編」DVDを視聴して
 
 HP閲覧者のKK様のカキコによりますと、劇場版のガンダムをドルビー5.1で収録し直して発売されたガンダム「特別編」の効果音が、どうも勘弁ならないらしい。筆者は、金銭的理由もあり購入を保留していたが、これを機会に入手、視聴してみました。
 
 視聴してみての第一声は、「絵と音って、どちらも作った年代の気分って出るんだな」ということで した。「特別編」を観ていると、なんだか絵だけ別のものを流して、違う音声をスピーカーから出しているような、そんな気分に襲われました。それぐらい、絵 と音が合っていないのです。
 
 さて、肝心の「特別編」の中身ですが、確かに∀ガンダムの音になってましたね。「トゥシュルゥ 〜」って関節の可動音がやけに耳につきました。ザクマシンガンの音など、確かにこっちの方がリアルかな、と一瞬思わせるものもありましたが(ほかに、コア ファイターのハッチの開閉音など、小物の一部には評価できるものもありました)、しかし、やはり大部分は違和感のある音でした。「I」の最初で、ザクがサ イド7に降りるとき、「ブン」って足音がしなくて、ショックでした(爆)。
 
 また、「劇場版」のビームライフルの音は、当時強いビーム兵器の、一種シンボル的意味合いを含ん でいて、「うる星やつら」や「さすがの猿飛び」など、ほかの作品でも、ありとあらゆるところで使われ、「日本一有名なビームの発射音」だったので(爆)、 変えてほしくなかったという想いはありますね。もし、今「F91」のSEが変えられて作り直されたとしても、何も感じないのかもしれませんが、1st.の 音は想い入れがありますからね。あと「特別編」は、何かと音がワンパターンでしたね。
 
 ただ、「I」は確かにひどかったですけど、「哀戦士編」や「めぐりあい宇宙編」では少し雰囲気が変わって、ガンダムを含めてモビルスーツの関節音や、モノアイの点灯音なんかは、それなりにいいと思う音もありました。
 
 ところで、さすがに当時のサウンドトラックの、ミックスダウンする前の録音テープというのは破棄 されちゃってるんでしょうけど、効果音の元のテープも捨てちゃってるんでしょうかねぇ?('96年の「第08MS小隊」では、まだちゃんと昔のままですけ ど) 私には事情は分かりませんが、少なくとも、この「特別編」のSEに関しては、制作費があまりかかってないんじゃないかと思います。ほとんど、「台所 の流し場を包丁の柄の部分で叩いた」であるとか「JRに行って列車の連結するときの連結器の音を録ってきた」であるとか「スクラップの廃車を1台もらって きて、それを数人でハンマーでぶっ叩いた」であるとか、容易に元の音を想像されかねない、急ごしらえなもののような気がしました。限られた予算の中で、ス タッフは善戦されていたのかな、とも想像しています。

 ライナーノーツの中では、アニメ的、記号的音を排除した旨、書かれていますが、ザクマシンガンはと もかく、ビームライフルの音ってのは、まだだれも聞いたことのない音なわけですから、恐竜の外皮の色はだれにも分からない、というのと同じで、「劇場版」 の音がアニメ的で間違いだ、とはだれにも分からないわけです。

 そして、取りも直さず今回思ったのは、SEに限らずBGMもそうですが、「劇場版」のガン ダムは、声優さんたちの声、SE、BGM、さらには絵、これらが渾然一体となって、ある種のリズムを作って、盛り上がりを見せていたのではないかというこ とです。ブライトが、「オレは、それだけの才能があれば、シャアを越えられる奴だと思っていたがな。残念だよ!」と言ったあとのドアを閉める「バーン」っ て音は、音も思いっきり「怒って」いなければいけないわけです(笑)。「マ〜チルダさぁ〜ん」ってアムロが叫んだら、ホワイトベースのエンジンは、さも悲 しそうに身悶えするように「バ〜ン」って吹かされなければいけません。

 BGMもまたしかりです。「特別編」では、サウンドトラック盤に収録されている楽曲の題名 だけを見て、どのシーンで使ったものかを判断し、「だいたいこんな感じかな」と並べただけのような気がします。シーンの切れ目など、何も音がなくて間がお かしいところがあります。しかも、ときどき思い出したようにテレビ版のBGMを使用するので、気勢がそがれます。
 
 「劇場版」の、あの考えつくされているBGMの使い方(入れるべきBGMが先に決まっていて、そ れを前提に作画がなされた箇所も、相当数あるのではないでしょうか)に比べれば、「特別版」のそれは、子どもの遊びの域を脱していません。「頑張ってね 〜」「じゃあ」と言ったあとには、ピアノの音が聞こえてこなければいけません(笑)。まぁ、これも今回のスタッフには時間がなかったんじゃないかな、と想 像できるところもあるので、あまり強くは言えませんが……。

 アフレコにも不満がありました。「I」の最初の永井一郎氏のナレーションの、「戦争はこう ちゃく状態に陥り、8カ月あまりが過ぎた」ってセリフの入る位置が、「劇場版」とズレていた時点で、もうヤになっちゃいました(ここは、バックのBGMと の兼ね合いだろうとは思いますが……)。ほかにも、台本が書き変わっていたところは多数あったようです。今回はDVD化ということで、英語訳が出るように なっています。その翻訳の関係かな、と思わせるところもありました(まず第一に、「こうちゃく状態に陥り…」じゃなくて、「こうちゃく状態に入り…」で しょう 爆)。以下、ざっと観ただけでこんなにありました。

 アムロがデニムのザクを突き刺したときの「劇場版」における「つぁっ!」というセリフ、アドリブだったのでしょうか? 気に入っていたのに、「特別編」ではなくなっています。

 サイド7出航の際、ブライトがオペレーターに、操舵手が素人なので指示を早めに出してほし いと頼んだときのオスカーの返答。「劇場版」の「こうなりゃ、やるしかないもんな」という、珍しくオヤジみたいなオスカーの返答(爆)が大好きだったの に、「特別編」では一般的な富野語に変えられています。

 初めてシャアとアムロが戦ったときのシャアのセリフ。「あのモビルスーツは、戦艦並のビー ムライフルを持っているのか」。ビームライフルという名詞が、このときのシャアにとっては、まだ一般的ではなかったはず。やはりここは「ビーム砲」の方が 自然でしょう(いかにも富野的だよなぁ〜。すぐそう思える私もかなり毒されてきてるな)。英訳の都合か?

 ガンダムに乗ることを渋るアムロに変わって、フラウがガンダムに乗ろうとしたとき、フラウ がアムロにマニュアルの提出を求めるが、そのときの「テクニカルコントロールマニュアル」などという妙ちくりんな英語は、フラウのセリフとして不釣り合い です。「操縦方法の手引書」でたくさん。これも英訳の関係?

 初めてランバ・ラルのグフと戦ったときのリュウのセリフ。「劇場版」での「アムロ! うか つに近づくな、奴の武器は……」は、まるでヒートロッドという初めて見る武器について、何か知ってるかのような口ぶりに聞こえる、ということで、これはよ ろしくないと考えたのだろうか? ここは、直した理由が分かるような気がしました。「奴の武器は……」の部分が削除されています。

 パワーアップメカを積んで飛行中のミディアにドップの攻撃があったときの、マチルダのセリフ。「こんな小部隊にまで目をつけるのか」。「お目こぼし」という慣用句の、適当な英訳がなかったのだろうか?

 ジャブローで戦闘が始まってからの、ウッディー大尉のセリフ。「ジオンの進入を許したのか。メカマンも防戦にあたらせろ!」。なぜ「作業員」という日本語ではいけなかったのか? 職業蔑視か?(爆)

 サイド6にて出撃命令について相談しているとき、やってきたカムラン検察官を迎えての、マーカーのセリフ。「艦長、カムラン検察官がいらっしゃいました」。確か「劇場版」では語尾が、「お見えになりました」だったと思う。なぜこんな細かい部分を変えたのだろう?

 コンペトウでのレビル将軍。超能者についてのセリフがカットされている。この語句に関しては、思うところあって削除したのかもしれないが、ついでに「当番兵」というなんの変哲もないセリフまで削られている。なぜだ?

 ララァのエルメスと戦っているときのアムロのセリフ。「だから、だからって、なんだっていうんだよ」。「どうだっていうんだよ」というのは、上手く英訳できないのか?

 ア・バオア・クー司令室にて、キシリアが「新しい艦隊だと? 連邦軍のか?? それは確かなのか???」と訊いているのに、「Nフィールド戦場です。計測します」というセリフを、だれも答えぬ部下たちって……(爆)。

 などなど、まだまだ不満はあるかもしれない。とにかく、オレ様に断りもなく、これだけ台本をいじるとは何事ぞ!(大いに勘違い 笑)

 演技についても少し言ってしまおう。まずワッケイン指令。見せ場である、最後のルナツーの 一室で、部下の士官相手に会話するシーン。ここで彼は、ジャブローの冷淡さを嘆いているわけであって、今回、彼の役を演じた稲田徹氏は、意味が分かって演 じていたのか? テレビ版、劇場版と曽我部和行氏が務めたのに、なぜ今回は彼を起用しなかったのだろう?

 それから、カムラン・ブルーム。この人は、地位は高いが気は弱い、という設定なので、初め て「劇場版」で、ホワイトベースに乗り込んできたときの村山明氏のカムランの演技を観たときには憤慨したもんです。違う、これはカムランじゃない! っ て。テレビ版の塩沢兼人氏の演技があまりにも上手かったので、なおさらでした。でも村山氏の演技も、後半はなかなか良かったし、何よりも「逆襲のシャア」 でも氏がカムランを演じたので、ようやくカムラン=村山氏という図式が固まってきた。
 
 そこへ持ってきて、今度の「特別編」である。磯部弘氏のカムランは、別に尊大ということではない のだが、なんかよけいカムランから遠ざかったような気がする。カムランは難しい。役作りを相当真剣にやらないと、おかしなことになってしまう。今では、村 山氏のカムランが懐かしい(笑)。
 
 そのほかにも、「Zガンダム」あたりから気になっていたのだが、北舷を「きたげん」と読んだり、「下舷」を「したげん」と読んだり、「右舷」を「みぎげん」と読んだりするのは、間違いを防ぐ意味での、軍隊特有の読み方なのだろうか?

 しかし、ベルファストの連邦軍司令部。「エリア」という単語のあとに続く数字の読み方。「22」を「にじゅうに」(テレビ版方式)と読むか「にーにー」(劇場版方式)と読むかは、どちらかに統一しておいておくれ。聞き苦しい。

 それから、ソーラシステムの発射カウントを行った人よ。どこの世界に奥の手の新型兵器の発 射のときに、「3.2(さんてんに)、照準入ります」ってカウントする人がおりますかいな。これは、だれがどう考えたって「3、2(さん、に)、照準入り ます」です。台本の下読みをしておいてください。

 さらに、「めぐりあい宇宙編」のドレン隊やコンスコン隊との戦い、それにソロモン攻略戦な んかで特に言えることですが、ゲストキャストの方あまりにもやる気なさすぎ(爆)。お茶の間でこたつに入ってみかん食べながら戦争してるんじゃないんだか ら、「劇場版」と聞き比べてごらんなさいよ。これは一部には、アフレコ現場の雰囲気作りの問題だと思う。

 あと、「劇場版」にはなかった、こまごまとした音をつけるのにはご執心なのに、演出上非常に重要な音、例えば、ランバ・ラルが、握っている拳銃を隠しているアムロのマントをめくるときの音がないのはどういうことか? お陰で、あそこまったく意味不明だぞ(笑)。

 しかし、唯一パオロ艦長の演技は、「特別編」の方が良かったかもしれない(笑)。「劇場 版」のときは、ついさっきまで胸に負った傷に苦しんでたのに、敵がシャアだと分かると急に声が平常心になっちゃって、ルウム戦役について語り出しちゃうし (爆)、スーパーナパームの使い方を適切に述べたアムロに、「まぁ、任せなさい」って急に馴れなれしくなっちゃうし(やっぱあそこの台本は、苦しみながら の「ま、任せなさい……」だったのね。「特別編」観て、初めて合点がいきました)。

 また、序盤のシャアのムサイから攻撃を受けているときの、サイド7側のミサイルランチャの オペレーターの「民間人でもいいから、すぐに男手を回してくれ」というセリフや、ルナツーを出てからすぐのモビルスーツの整備のシーンにおけるメカニック マンの「この予備のコアファイターの27コンピュータ、どうしたの」というセリフなど、「劇場版」よりセリフが明瞭になっているところも散見された。ただ これは、明瞭でない方がより戦場の緊迫感を高めるという、富野氏の狙いだったのではないか。聞こえなくてもいいセリフは、聞こえづらくてもいいのである。

 総じて、ここまで手間暇をかけてやり直したのは、ひとえにドルビー5.1に対応するため だったと思いますが、その割には、さして音が回っているとも思えません(爆)。まぁ、低音はそれなりによく出ているし、効果の上がっている箇所もありまし たが、「逆襲のシャア」や「F91」に比べて、絶大にいいかどうかは疑問です。
 
 結局、箱書きに「ドルビー5.1」と書きたかっただけなら、「劇場版」の音源の手直しで十分だっ たと思います。ドップやガウなど、ことさら移動感の欲しい音で、ほかの音源の被りのない音は、ミキサーのパンポットで動かすなりし、爆発音など、アンビエ ンス感が欲しいところは疑似ステレオで……(音楽がステレオにできないのは辛いですが)。その方がのちのちまで、このDVDがファンの愛聴盤になったので はないでしょうか。

 どうしてもやり直したかったのなら、せめて前といっしょのSEでやって欲しかったですね。 ホントにSEのテープを破棄しちゃったんなら、私に一言相談してくれれば、本編のどの部分を使えば、比較的楽にサンプラーに音を取り込んで新しく起こせる か、お教えできたのに……(冗談)。

 あと一つ心配なのは、KK様も述べていることですが、これからのCS放送などで「劇場版」 のガンダムを放送するとき、このステレオ時代に、音源がモノラルなことに負い目を感じて、今回の「特別編」が常用されるようなことにだけはならないよう、 お願いしたいですね。「特別編」は、新しくガンダムを観る者に誤解を与えかねないと、私も思います。
 
 KK様のカキコによると、今回のこの「特別編」のDVD、巷での評判は芳しくないとのことですが、氏の忠告も聞かずに、私も無理して新品で購入してしまいました。今、私もちょっと売却したい気分になってます(爆)。

 最後になりましたが、今回20年ぶりにもう一度お集まりいただき、通算3回目のガンダムの アフレコ(なんだかもう舞台芸能みたい 爆)をしていただいた声優の皆さんですが、想像していた以上に皆さんお声が変わってなくて、私、一安心しました。 この分なら、また20年後もできますね(って、そんときは私も50歳ですけど 爆)。

 フラウ役の鵜飼るみ子さんなんか、故郷に戻られてるんですか? 「開運!なんでも鑑定団」 の中のコーナーの「出張!なんでも鑑定団」のアニメ関係のお宝の回に、ガンダムのセル画持って出ないでくださいよ(爆)。でも、お声は変わってなくて嬉し かったです。ガルマ役の森功至氏は、ちょっとお歳を召されたんでしょうか? 若いガルマの声に苦戦されてるところもありました。あと、ブライト役の鈴置洋 孝氏も、シーンによっては辛かったでしょうか? あと、ミハル役の間嶋里美さんは、20年前に比べるとババ臭い声になってたかも……(ヲイヲイ、上で 「皆、お変わりなかった」って言ってんのに、この言い草はないよな〜 笑)。リュウ役の飯塚昭三氏は、「劇場版」をちゃんとご覧になって、アフレコに臨ま れたのでしょうか? 一番、各セリフの「劇場版」とのイントネーションの違いが、少なかったような気がしました。ハヤト役の鈴木清信氏は、20年の間に、 声質が多少変わられたのか、ちょっとテイストの違うハヤトになりました。

 その昔、テレビドラマが生放送ばかりだったころ、初めて、フィルムで記録するという方法が 誕生し、それで、「再放送」という概念が生まれたそうです。そして、初の再放送を行うにあたって、テレビ局はなんの疑問もなく、出演者たちにもう1度出演 料を払ったそうです。そのときはこんにちのように、かくもドラマの再放送が一般化するということが、予想できなかったのでしょう。前に出演したドラマの局 から、何年も経ってから、またお金が入金されたことを知って、出演者たちは大変慌てたそうです。そして(プライドとか、様々な理由なんでしょうが)、彼ら はその入金を拒んだそうです。彼らが入金されたお金を拒まなければ、今の俳優さんたちは、現在の何倍もお金持ちだったかもしれません。(注1)

 1回アフレコした作品が、20年経ってもまったく魅力を失わず、ガンプラを通して、年間何 億円という利益を生み出しているのは、素晴らしいことです。きっと今回の「特別編」の制作は、声優さんたちへのねぎらいやご褒美の意味合いもあったのでは ないかと思えました(仕事していただければ、お給金が払えますしね)。

 しかし、それを差し引いても、今回の「特別編」は、いろいろな意味で納得のいかないもので あると言わざるを得ません。もし富野氏が本当にこの「特別編」を、ご自身の目で観て確認した上でGoサインを出したのだとしたら、オレも一言言ってやらね ばなるまい。もしお会いできたら、第一声になんと言ってやろう。おぉ、そうだ、決めた。こう言ってやろう。

「ずっとファンでした。もしできましたら、サインをお願いできませんでしょうか?」

 ん?? なんか違う……。
 

注1):現在では、再放送の際には(というか、CSでの2次利用等含めて)、いくらかのギャラが支払われているそうです。

 
 
 
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